義兄と義弟。
いつもありがとうございます。そろそろ更新が止まりそうですすいません。
゛帝都で一番大きい酒場に義弟がいる゛
元々連れてきた鴉ではないレイル君専用の鴉からのメモにカイル様が渋い顔をした。というか、レイル君自分のも飛ばしていたのね。ありがたいけど。
「やはり探索は義弟か。帝国に俺達が入った瞬間から気付いて動いてるんだろう。」
「対象範囲広くないですか?これ避けようにもカイル様いるから不可能では?」
「…流石に俺だけ別行動するわけにもいかないしな。向こうが探しているなら、会うしかないだろう。」
元々城に滞在しないで帝都でこっそり動いているなら其処を避ければ済む問題だがそれはないだろう。義兄の存在を確認して出てきたに違いない。きっとレイル君は接触しないようにコレを飛ばしてくれたんだろうけど、カイル様が諦めてるくらいだから避けられないようだ。
「放置したら帝国出るまで追いかけてきそうだし。」
「あの…。どういう状況ですか?」
カイル様の溜息とキルト君の疑問。軽く説明すると同じように溜息。
「はぁ、戦争って…。回復薬の増産を進言しておこう…。」
「…頑張ってください。」
それしか言えない。本当に申し訳ない。
そこからどのくらい時間が経過したかは分からないが、そろそろお尻が限界かもとモゾモゾし始めたくらいにやっと帝都に到着した。王太子がいる酒場は少し歩いた所にあるそうだ。馬車を降りたタイミングでレイル君の鴉を飛ばせば大きく旋回して何処かへ向かった。また情報収集してくれるのだろう。感謝である。
キルト君の先導で酒場を目指しているが、道中の誘惑が凄い。見たことのないものが沢山。買いたい食べたいお腹すいた。
「サラ、余所見しない。」
「いやだって気になるじゃないですか。アレとか見たことない植物ですよ?何か新しい薬とかに使えません?」
「確かに…。」
「サラ、トゥを誘惑しないでくれ。」
上手くトゥコーテンさんを誘導すればいけるのではと思ったのにカイル様に止められてしまった。良い感じだったのに残念。まぁ実験始められたら二人の時間が取れなくなるもんね。新婚さんにはキツイか。
いつになったら酒場に着くんだ。お腹すきすぎて正直王太子そっちのけですぐにご飯にしたい。
「わぷっ。」
「ちゃんと前見て歩きなさい。…まぁ、到着したみたいだけど。」
とにかく誘惑を跳ね除けようと下を向いて歩いていたら立ち止まったらしいキルト君の背中にぶつかってしまった。後ろからトゥコーテンさんの呆れた声とカイル様の溜息がしてちょっと傷付いたが、到着の言葉にそれも吹っ飛ぶ。
我先にと扉に手をかけて思いっきり押せば、お肉の焼ける匂いにお腹がぎゅるぎゅる鳴った。流石にちょっと恥ずかしい。
「…さて、件の王太子サマはどこかしら?」
「…あぁ、あそこにいる。」
カイル様が睨む先、酒場の一番奥を陣取っている彼。
義兄のどちらとも違う蜂蜜色の髪の毛を揺らして、王太子は笑っていた。




