また出掛けないとなの?
「…お初にお目にかかります。そこに居る愚姉トゥコーテンの弟、キルトです。無礼をお許しください。」
「愚姉?なんか面倒そうな香りがするからそこは聞かなかったことにするけど。なんでアルテナに?」
「先日姉の結婚の知らせがこちらに届きまして。長老が姉夫婦にお会いしたいと。」
先程の雪景色は姉弟喧嘩だったのかしら。トゥコーテンさん達はアレを消すつもりなかったみたいだから、下手したらあの寒い中で話をしないといけなかったわけで。レイル君居てくれてよかった。
弟さん、キルトさんの続く言葉に疑問を持ったらしいレイル君が口を開く。
「先生、手紙出してたんですか?」
「まさか。エルフの習性よ。」
「あぁ、本で読んだことがある。一族の魔力を共有できるってやつだろう?婚姻時のあの儀式がそうだと思っているが。」
なるほど、エルフにはそんなことが出来るのか。帰宅したらメモしておかないと。
つまり、キルトさん達家族がトゥコーテンさんが結婚したのを感じ取って長老さんに報告したら、カイル様と共に会いに来てほしいみたいな?
「まぁ最近は治癒士も増えたから私が此処を離れた所で問題はないと思うけど、今はカイルが動けないから無理ね。」
「そうですね。父が今アルテナから離れているから、その分の業務をカイル様が肩代わりしてくれていますし。」
現在父は王太子妃に会う為に外出中だ。戻ってくるのは早くて3日、それまで彼にはアルテナに滞在してもらわないとだが大丈夫だろうか。
「キルト様は長老様とご連絡がとれますか?」
「様とかいらないです。あと敬語も。連絡はとれますが。」
「あ、はい。じゃぁ、キルト君で。現在カイル様の上司が不在で、彼が居ないと仕事が滞ってしまうから…。出来れば上司が戻ってきてから其方に向かいたいのだけど。」
そう伝えると問題はないようで快諾される。では早速とカイル様がキルト君を案内してくれるみたいなのでお願いし、私達は部屋の片付けの為に戻ろうと席をたつ。
レイル君の質問への返答以外ひたすらトゥコーテンさんが黙っているのが気になるが、何か思うことがあるのだろう。本人が何も口にしないのだからわざわざ追及するのもアレだろう。姉弟仲も悪いようだし、面倒なことにしかならなそう。
「あ、魔術師殿。言い忘れていたのですが、魔術師殿にもお会いしたいと長老が…。」
後ろからの言葉は聞かなかったことにしたい。
この前やっと帰ってきたばかりなのに、また出掛けるとか嫌だもん。




