反対側の隣国。
役所に戻った私とレイル君はすぐにいつものメンバーに召集をかけて会議室に向かった。トゥコーテンさんはタイミング悪く実験を始めてしまったようでモニター参加となったが、何とか全員集まってもらえた。あ、ゾンデルさんは前回同様である。
「こうも緊急召集が続くとおちおち昼寝も出来ないわね。」
「母上は寝過ぎなくらいなんですからいいじゃないですか。」
「で、何があったんだ?王太子妃が来ていたんだろう?」
父の疑問にレイル君が先程の話を説明してくれる。その間にメロが戻ってきて私の隣に着席した。
「うーん。城に探知系の祝福持ちが居たのかしら?そんな話聞いたことないけど…。」
「まぁ祝福は言いふらすものでもないからな。もしかしたら宰相あたりが隠していたのかもしれない。」
「毎日城に居る人間が今更気付くってのもおかしいから、もしかしたら王太子妃の祝福かも?」
フィオナ様が知らないってことは確かに最近登城する機会が増えた彼女の可能性は高い気がする。
現段階では解決しないことなので、とりあえず手紙を開封しなければなのだけども。
「帝国ってどんな所なんですか?」
「クルング帝国は大陸にある2番目に大きい軍事大国だな。過去シュゼールと何度も国境で小競り合いを起こしてる。今の皇帝陛下は穏健派だった元第一王子だから落ち着いているけど、いつまた戦争が起きてもおかしくない。」
「友好国とかではないんですね。」
「そうだな。各国からそっぽ向かれてる状態だ、その隙に仕掛けられないように王太子がお願いしに行ったんじゃないか?」
不憫な義弟だな、と少し同情する様子をカイル様が見せる横で、レイル君はどうでもよさそうに大福をつまんでいる。あれ?今日は報告会で出す分しか作ってないのに何故彼はまだ食べてるんだ?減りが早いと思ったのは、まさか独り占めしようとくすねていた?
「お願いしに行ったのはいいけど、なんで帝国が王太子経由でアルテナに手紙なんか寄越すのよ?」
「分かりません。」
「というか、王太子が向こうに行ってることを陛下達が知らないことが問題じゃない?」
トゥコーテンさんの言う通りである。まぁ手紙を読めば分かることもあるだろうしいい加減開封しよう。
シュゼールとクルングでは言語が違うようなので、読み上げに関してはカイル様にお願いする。ちなみにメドニエはシュゼールと同じなので問題はなかったよ。
端を綺麗に切って取り出したのは封筒と同じく質の良い便箋一枚のみ。それを手に取って開いた彼の目が見開かれるのを確認して、良くないことなのかと一同が不安になったが。
「゛此度、シュゼール国との開戦が決定しました。其方達は自国の防衛に努めていただくようお願いしたい。゛」
え、開戦?
 




