魔法って便利ね。
魔方陣から飛び出した先は人が沢山でしたてへぺろ。
「誰だ貴様!…っ!?隣にいるのはっ!」
「これは…。」
現場のサラです。
私は今ドルベルド領に教会裏に来ておりますが、見てください、裕福そうな方々が幼い子供達を拘束して何処かへ連行しようとしています。共に現場へ急行したトゥコーテンさんを見て驚いているのをみるに、森の外で彼女が出てくるのを監視したままにしたのでしょう。私達にとって、そして子供達にとってもそれは救いでした。
トゥコーテンさんは目の前の光景に絶句して、子供達、あ、孤児院の従業員さんもいらっしゃいますね。彼等はトゥコーテンさんを見て希望を見出だしたのか騒ぎ始めました。
現場はなかなかに混沌としています。
以上、現場のサラでした。
って、アホな実況を頭の中で繰り広げてしまった。
「どうやってこの場に来たかは分からんが、そんな異端を連れてきたとこ『黙れ』っ!?」
「穏便に済ませたいんだ。『動くな』よ。その子達はトゥコーテンさんに頼まれた私が預かる。」
恐らくこの場で一番偉い人間の喚きを早々に黙らせ、残りの人間と共に拘束する。トゥコーテンさんは私が魔法を使ったのが分かったと同時に走り出し、子供達の拘束を解いていく。
それを見て私はポケットから先程持ってきた遺品を放り投げる。小さかったソレは着地と共に前世でいう路線バスへとなった。
「トゥコーテンさん、皆さんをそれに乗せてください。」
「また訳の分からない乗り物を…。まぁいいわ。皆こっち。」
状況にしっかりと付いていけてないせいか、助かるのに必死なだけか、トゥコーテンさんの言葉に彼等は順応に動いてくれる。ひとまず安心だ。
それを傍目に、片方の魔法を解除。恐怖に染まった顔でこちらを凝視する男にニッコリと微笑む。
「初めまして。城塞都市アルテナの魔女です。トゥコーテンさんから事情は聞いてますが…。これは…奴隷として売り捌きたかった故の取り壊しかしら?」
「はて…、何のことかな?」
「まぁ別に貴方達の思惑などどうでもいいので、とぼけようが知りません。んー、スプラッタとかは精神衛生上よろしくないので、『埋まれ』。」
ゴボゴボと、まるで沼のように変化した地面へゆっくりと沈んでいくお偉いさん達。抵抗しようにも動きはまだ封じているからね。
頭だけが地上に残った彼等の目の前まで来てしゃがみこむ。
「ドルベルド領主の私にこんな無礼をしてただで済むと思うなよ!」
「いや、そんな状態で言われても怖くも何ともないならね?私、貴方達をこのままにして帰るから、せいぜい誰かに見つけてもらえるように叫び続けなよ。あ、やっぱり、『黙れ』。」
これで気付いてもらえないね。頑張ってね。
なんて付け加えれば、ようやく自分達のおかれている状況が分かったらしい。声は出ないのに必死に助けを請うように口が動いている。
「サラ、全員乗せたわよ…って…。貴女、悪趣味ね…。」
「え?自分の手が血に染まるのは勘弁だからさ。」
バスの窓からこちらを窺っている沢山の目に苦笑い。子供の教育上なかなかによろしくないな。
「さて、帰ろうか。私達の街に。」




