外堀埋められた。
「父さん、説明してほしいんだけど?」
すぐにやってきたカイル様に陛下を任せた後私達親子は執務室で先程の問題発言について協議していた。目の前には正座をした父。その顔は真っ青である。
「先日レイル殿がここにやってきてな…。娘さんが傷物になったのは僕のせいだから責任とって嫁にもらうって捲し立ててきて…。フィオナ殿達とも話し合って…。」
「いや、傷物になってないからピンピンしてるからね?なんで皆そうやってレイル君とくっつけようとするのよ?」
カイル様にも妹呼ばわりされていたし、何故本人が知らない所で勝手に決めてんだ。
室内の魔素が濃くなったのか、父が息苦しそうにしているが知ったこっちゃない。そのままぶっ倒れてトゥコーテンさんの薬の餌食になればいいのに。
「サラはレイル殿のことが嫌いなのか?」
「…別に嫌いじゃないけど…。そういう目で見たことないし。」
前世でもしたことない父親との恋バナが物凄く恥ずかしくてつい顔をそむけてしまう。
「本来ならお前くらいの年齢なら既に婚約者がいてもおかしくないんだ。私のせいでまともな生活を送れなかった分、これから先はしっかり幸せになってもらいたいんだ。それを可能にするのが彼だと私は思っているよ。まぁ…、彼に頼まれたのもあるけどね…。」
苦笑いのまま立ち上がった父は私の頭を数度撫でて椅子に座りなおした。そのまま仕事を始めるのか隅に置かれた紙の山を手にとっている。私も手伝おうと手を伸ばすとそっと制止された。
「最後に決めるのは勿論サラだ。今までのお前からは特に嫌悪とかを感じなかったから放置していたが、もし嫌ならちゃんと断るから言っておくれ。」
「父さん…。」
それきり彼は仕事に没頭してしまったので退室する。今日は陛下との話し合いだけで他にやることは無いので自由だ。
家でゴロゴロしようかとも思ったがどうにも落ち着かないので、気分転換にと電車に乗って耕作地帯に向かう。一応私の畑もあるのだ。役所の人が交代で世話をしてくれているので滅多に来ることはない。到着した其処は一面花畑で綺麗だった。
「私は納める必要ないもんね…。はぁ…。どーっすかねぇ…。」
足を踏み入れて潰してしまうのも嫌なので目の前でしゃがんで色とりどりのソレをボーっと眺める。残念ながら今の私を癒してくれることはなさそうだけど。
外堀を完全に埋められている現状をひっくり返せる術は持ち合わせていないのでこのまま彼と結婚することになるのが確定してしまっている。別に嫌いではないのでそれはそれで諦めるしかないんだけども。
「ちゃんと好きとか言われてない状態で勝手に動かれるのはちょっと…。」
今までスルーしてきたのが悪かったか。彼と一度話し合うしかないか。
うーん、気が重い。




