勝手にやっててください。
「勘違いしているようだけど、私と殿下の間に貴女が持っているような感情は一切ないよ。」
「嘘よ!殿下の目はアンタばっか捉えていたもの!」
「仮に殿下がそうだとしても、私にはこれっぽっちもそんな気持ちはないので。勝手に勘違いして呪わないでくれます?」
騒ぎ続けるハンナさんにそろそろ疲れてきた。ただの嫉妬で変な呪いまでかけられた私ったらなんて不憫なのかしら。
本当に殿下に対しては良い商売相手だった(現在は好感度マイナスだが)だけで、寧ろそんな感情を抱きそうなのは…って、今誰のことを考えようとした?
「アンタなんかそのまま死ねばよかったのよ…。」
「…それは残念だったね。死ぬのは貴女の方だと思うよ。今回の件は殿下のいるヤシュカも巻き込んでいるわけだし。アルテナとしては色々使い道がありそうだから生かしてもいいんだけど、あちら側はそうじゃないだろうし。」
「ヤシュカに引き渡すの?…それなら殿下がきっと保護してくれるわ!」
「だからいい加減変な勘違いはやめよう?ヤシュカに引き渡した場合、アルテナは貴女の処刑を求めるから。」
こちらで彼女を取り扱っていいならこの牢屋を少し改良してひたすら実験していてもらったりするのだけど、魔族側からしたら禁止されている呪いを使ったわけだし見過ごすなんてしないと思うし。
魔族の事情を話せばハンナさんは流石に顔を真っ青にさせた。やっと現実を見てくれたのかな?
「いや、私は大丈夫よ…。殿下がきっと何とか…。」
「なんでそんなにポジティブなんですか。まぁ、理由も分かったからいいです。ヤシュカとの調整がつくまでは大人しくしていてくださいね。」
駄目だこれは人間じゃない会話のキャッチボールが出来ないしんどい。
回れ右をして地上へ続く階段を目指す。牢屋とは思えない真っ白な隔離病棟のようなここに来ることはもう無いだろう。今回みたいなことが無ければだが。
「待ちなさい!…ミリア殿下はどうなったのよ!?あの女だって責任はあるでしょう!?」
「ん?あぁ、ミリア殿下は要監視なままだけど住民登録してここで生活を始めてるよ。他からの警戒心を向けられて精神的にツラいと思うけど、なんとかなるんじゃないんですかね。今回の件、ミリア殿下は巻き込まれただけの被害者ですので。残念でしたね。」
お姫様がいきなり平民の生活に適応できるわけないのだが、彼女は私と同じ世界から来ているので周りもびっくりなスピードで順応している。既に図書館の館長さんと仲良くお茶してるって報告あがってきてるし。ハンナさんに洗脳されてる可能性も捨てきれないと病院に検査にも行っているからトゥコーテンさんとも結構話して打ち解けているっていうし、早い段階で自由にしてあげられるだろう。
そうしたら一度彼女を家に招待して色々話したい。
今度こそ階段に向かって足を進める。後ろからよく分からない悲鳴が聞こえてきたが、自業自得なんだからしょうがないでしょうよ。
まぁ、誰もいないし迷惑はかからないから、好きなだけ叫んでいればいいさ。




