後でカイル様が回収に来ました。
閲覧、ブクマありがとうございます。
殿下の見送りのついでに門番さん達に状況の説明してほしいと頼むのを忘れたと家に着いてから気付く。彼等にも生活があるし、仕事が無くなるわけだから早めに対処しなければ。別の仕事を斡旋してもいいが、新しく覚えたりするのも面倒だろう。希望者には紹介してもいいが、せっかくなので休暇を満喫してもらってもいいかも。
戻って来たレイル君にその話をしたら、ほぼ同じ事を既に話してくれたらしい。本当に皆さん優秀でお姉さんは嬉しいよ。
「さて、僕を呼んだのは、城壁の強化とかかな?」
「その通りでございます…。」
結界は張ってあるがそれだけでは勿論住民を完璧に守り抜くことなど出来ない。ヤシュカに協力を仰げなくなってしまった今、城壁や街の強化が必要なのだ。
「具体的にはどうするつもり?」
「とりあえず今ある結界の内側にもう一枚強力な結界がほしいかな。私が作るから、それにレイル君の魔力を上乗せして強度を上げたい。」
現在の結界は私の魔力だけで作られているが、そこに彼のそれが加われば格段に強度があがるのではないかと思ったのだ。ベースを彼が作ればより良いのではとも考えたのだけど、新規の物を生み出すのは私にしか出来ないらしい。なので音声認識で私が作って、既にあるミニチュアをレイル君に動かしてもらっている。
結界作成の間、彼は城壁をいじるようだ。もう一段高さを上げるようで、テーブルの隅に積まれた小さなブロックをチマチマ重ねている。
「気になったんだけど、どうしてこの街は住民を中央に寄せているの?」
「守る為だよ。畑が全滅しても備蓄は沢山あるし、皆優秀だからきっとすぐに元通りに出来ると思うの。でも、命に代わりはきかないから。誰一人として欠けてほしくないの。広範囲に魔法を使うのは苦手だから一か所に纏まっていてくれると助かるなっていう私の我儘。」
せっかくここで生活して仲良くなった人達だ。どんな状況でも快適に過ごしてもらいたいし、一応ここの城主としての責任もあるから。広範囲が苦手なのは本当だし。
話が終わったタイミングでもう一枚の結界が完成する。ちゃんと機能するかはやっぱりぶっつけ本番になってしまうから確認できないのだけれど。
城壁の作業を交代してレイル君に魔力を注いでもらう。少しだけ元々あったそれより膜の色が濃い気がするから成功したのだろう。
「こんなもんかな?」
「うん、ありがとう。城壁ももう少しいじっておきたいけど、何か案あったりする?」
「うーん…そうだねぇ…。」
結局作業を終えたのは日もとっぷり沈んだ頃で。
泊まると言い始めたレイル君を窓から捨てることになったのである。
危険?いやいや、彼の方が危険だからね。




