結構傷つくなぁ。
魔族と一緒に人間の国を滅ぼす。
なんとも物騒な話である。皆何言ってんだコイツみたいな視線を殿下に送っているし。
はて、元々の話はどんなだったか。確か森を国としてヒロインと戦争をして負けるとは確認したけど、その中身まではなかった気がする。先代達だって魔族との交流についての記述は残していなかったし分からない。
勿論そんなことするわけがない。自らバッドエンドに突き進むことなんてしない。
その為のアルテナだし、こうして色々あったけど沢山の良い人達に囲まれて静かに暮らしたいと思っている。
その中には殿下だって含まれていたんだけど。
「そんなことサラがするわけないだろう。なんだかんだ聖女とやらに絆されたんですか?」
「まさか。ただ、それが本当ならヤシュカの王族として考えなければいけない事があるので。」
刺々しい言い方をしたレイル君に返答した殿下。否定しているが、その瞳にはほんの少しだけ疑いの色が見てとれた。
それはそうだろう。本当なら自国の民を犠牲にするかもしれないのだ。ポッと出の魔術師の為に協力などしたくないに決まっている。当たり前のことだ。
それでもそれなりに良い交流が出来ていたと思っていたから、ちょっとショックである。
「ロシュロール殿下。」
「なんだい。」
「殿下の私への疑いが晴れるまで、ヤシュカとの交易を中断しましょう。」
「…え?」
ふわりと空気が揺れたような気がした。メロや父の顔色が心なしか悪くなった気がする。
「サラ落ち着いて!魔力暴走起こしかけてる!」
「いやだなレイル君、私は落ち着いてますよ。ということで殿下、住民登録している方を除いて皆さんで帰国してください。希望者が居れば住民でも一時帰国を認めますよ。」
「いや、そこまでせずとも…。」
「商売は信用第一。今の状態ではとても続けることは出来ないかと。」
成程これが魔力暴走か。メンタルが不安定になると起こりやすいと聞いていたけど、自分が思っている以上にショックなのか。というより、疑われてムカついているのかも。そこまで信用なかったのかと。
なのでそれらしい理由をつけて彼には退場してもらう。現状それが嘘だという証拠を出せないのも事実だし。
「レイル君、殿下を門までお送りしてください。私は家に戻りますので、見送り次第来てください。他の皆さんは解散してくださって大丈夫です。お時間いただきありがとうございました。」
これ以上この場に居続けるとメロ達の具合が更に悪くなりそうなので先に退室させてもらう。殿下の慌ててた声が聞こえた気がしたけど無視だ。
有事の際にヤシュカの協力があればと下心があったのも否定できないので怒る権利などないのだけども。
「はぁ。後回しでいいやって疎かにしていたツケがここにきてか…。」
これからやらねばならない箱庭の作業の面倒さに、どうしても八つ当たりしてしまいたくなるのである。
 




