本当にロクなことしないのね。
「これに関してまず確認なのですが、あの親子をメドニエに飛ばしてきたのはレイル殿で間違いありませんね?」
「そうですね。国内の何処かに飛ばすよりいっそメドニエに送って厄介事を押し付けようと思って。」
「待ってくれ!その話は聞いてないぞ!?」
殿下とレイル君のやり取りに割って入ったのは父だった。え、聞いてないって、誰も報告しなかったの?
チラリと横を確認すれば誤魔化すかのような笑顔を向けられた。そんなことしても許しませんよ。
殿下が軽く説明をしていくと父の顔がだんだんと険しくなってくる。お腹さすっているあたり胃も痛くなってきたのだろう。
「それで、何故そんなことに?」
「飛んだ先が私達の話し合いの場だったんですよ。聖魔法が使えると判明した途端に聖女だと騒いで王太子が求婚したんです。」
ほんの数日前まで私に擦り寄ってきていたのに手のひら返しがすごいな。まぁ、本の流れでは本当に聖女だって言われて悪役を倒しに来るわけだから間違ってはいないんだけど。
聖女については文献がいくつか残されていて、一番最近の記録だと200年程前に存在している。シュゼールと魔族の戦争の後だ。メドニエとは反対に位置する隣国に現れ民を救ったとされている。詳細は残念ながら自国のことではないので不明だが、どの時代の聖女も救いの象徴だったようだ。
「とても聖女なんて呼べるような感じではなかったけど。」
レイル君の言う通りである。あんなのが聖女とか侮辱だろう。父も首を縦に振っているし。
「まぁその件もどうでもいいんです。こちらに何か危害を加えるようであれば潰せばいいだけですし。」
少し居住まいを正した殿下に、ここからが確認事項なのだと察する。少しの緊張と共に続く言葉を待つ。
「娘が聖女かどうかはさておき。フィオナ殿、貴女が見たレイル殿の未来とやらは祝福でですか?」
「…違うわ。私の祝福は教えられないけど、それとは別に見ていたのよ。レイルを無事送り出してからはまったく見なくなったのだけど。」
「そうですか…。あの娘、…未来が見えると言っていました。スヴェン殿、心当たりは?」
「聞いたことないな。もしそれが祝福なら、もっと早く元妻が騒いで連絡を寄越しただろうし。祝福を複数持つなんて前代未聞だからな。」
彼女はそんなことまで言っていたのか。それに関しては十中八九前世で読んだこの世界の話を覚えているからでしかないのだが、事情を知らない人からすれば確かに祝福だと思われないこともない。フィオナ様のそれが祝福じゃないとすれば余計に。
「その話を聞かされた時に彼女が自信満々に言っていたのですが、サラ殿は我々魔族と結託して人間の国を滅ぼすのですか?」
もう、なんつーこと言ってくれてんだあの女。




