ほら、言ったじゃんか。
「レイル君、一度病院で魔力回復の薬もらってきてくれないかな。」
先にトゥコーテンさんに手紙を出しておこうと窓際で用紙を広げながら彼にお願いする。
拡張した時に魔力消費が激してくてやらかしたので、もしかしたら登録にも大量の魔力が必要かもしれない。そう考えると先に薬を調達しておいた方がいいだろう。使わずにすむのが一番だが。
「そんなにコレって魔力使うの?」
僕あの薬飲みたくないと顔を真っ青にしているが、箱庭を彼が使用出来るようにする事が本日の目標なので拒否はさせない。手紙が無事届いたのを確認して彼の方を向けば、仕方なさそうに転移していった。ごめんよ。
ものの5分で戻ってきたその手には依然お世話になった破壊力抜群な見た目の薬。改良していないのか。
「これだけあれば大丈夫?」
「私が飲んだ時よりも少ない気はするけど、多分大丈夫かな。」
「え、これ以上の量飲むとか…。サラのことは好きだから頼られるのは嬉しいけど、これはスヴェン殿に任せたほうが良くないか?」
「決定権はないよ。それに、父じゃ魔力量が足りない。」
後ずさりする体の後ろに回り、動こうとしない彼を箱庭の前まで押す。観念したのか自分から手を掲げて先程のメッセージを表示させている。よく考えると、このシステムも訳分からないよね。説明しろって言われて上手く誤魔化せるかしら。
yesの文字にそっと触れたレイル君の体が後ろに倒れてくるのを慌てて支えてパネルを覗き見ればどうやら成功したらしい。
゛登録完了しました。゛
ごっそり魔力を持っていかれて疲労困憊のレイル君に薬を無理やり飲ませればやっぱり気絶され、仕方なく客室へ運んで寝かせることになった。
眉間に皺を寄せた状態で目覚めたレイル君への説明が始まったのはそれから1時間後だった。再び箱庭部屋に戻り、ミニチュアに触れて感動している彼を横目にキッチンから持ってきた緑茶片手に大まかに話していく。
「じゃぁ今までサラ一人でコレを使って瘴気の森をアルテナに変えてきたんだね。」
「そうだね、森そのものの広さは変わらないけど、一定の量魔力を注げば拡張魔法が発動して、土地が拡がるんだよね。」
「明らかに領地が拡大しているのに外の人間が気付かないのはそういうことか。本当によく出来てる…。君の先代は素晴らしい魔術師だったんだろうね。」
私の緑茶を目にした彼は隣に置かれている自分の分に気付き此方へ来たと思えばいっきに飲み干した。薬の味が残っていたのね。もう一杯持ってきてあげようかしら。
「今回の件で思ったのよ。私一人で管理してると危険だって。リーナに壊された城壁も本来なら翌日には直せていたはずだし。」
「そうだね、コレはサラだけに任せるわけにはいかないね。ふふっ、二人だけの秘密の共同作業だ。」
結構真面目に話しているのだけど、なんでそんなにニマニマしてるんだいキミは。
 




