種明かしの決意。
それからだが。
あの後すぐに作業に取り掛かってくれたトゥコーテンさん達が戻って来たのは、翌日の昼を過ぎた頃だった。
パーシルさん達に散々謝られ、スタッフさんに号泣され、父に絞殺する勢いで抱きしめられ。次々に訪れる見舞客と仕事の話に対応していればあっという間で、久しぶりに喋ったこともあって疲れたのか夜はぐっすりだった。
「それ…、やばい色してるんですけど…。飲んだら死んだりしません?逆に違う呪いにかかりません?」
「これでも一番マシなやつ持ってきたんだよ…。」
私の体を起こしてくれたレイル君が右手に持っているソレは、私が魔力枯渇になった時に飲んだやつよりカオスな色をしている。無臭なのがかえって不気味だ。文句を言っていられないのは分かっているが、不安を彼にぶつければ溜息交じりに返答される。
因みにトゥコーテンさん達は薬を渡してさっさと部屋の外に出て行った。一応私が恥ずかしいのを分かっていて気を遣ったみたいだが、だからなんでトゥコーテンさんが介護してくれないんだ。解せぬ。
「毒見してないの?」
「出来ると思う?」
「ですよね…。」
そんなものしてくれていないと分かっているが一応聞いてみたら、真顔で返された。うん、ごめん。
「あ、そうだ。あのねレイル君、これを飲んで無事に動けるようになったらさ、伝えたいことがあるんだ。」
「なんかこれ、図書館で読んだ小説の流れみたい。」
フラグって言いたいんだろうか。大丈夫、とんでもなくヤバそうなものでも効果抜群な薬が作れるのがトゥコーテンさんだし。死にはしないよ。
飲んだ後どのくらいで動けるようになるかな。先日のレイル君の独白から諸々考えたけど、やっぱり万が一自分に何かあった場合に箱庭が動かせる人はいた方が良いと判断して、彼に頼みたいと思っているんだけど。
父も候補に入れたが、アレのアップデートにかなり魔力使ったからレイル君の方が適任である。家に入れるのはすごく嫌だけど、あの部屋以外は施錠すれば問題ないだろうし。
「覚悟出来てる?」
「出来て無くても飲むしかないんだから、もう諦めたよ…。」
口元に寄せられたコップ(これもビーカーみたいな形してるなぁ)に恐怖しかない。ちょっと今ゴポッてしなかった?なんでこんな酷い見た目(味も酷い)のに無臭なの?本当に不思議なんですけど。
「サラのことだから飲んですぐに動き出そうとするだろうけど、効果が出るのは早くて30分後だから少し待機してね。先生に様子も見てもらわないとだし。」
そう言ってコップを傾けだしたレイル君をちらりと見て恐る恐る口を開ける。30分も待たないとなのか。即効性はないのね残念。
飲んだ直後に気絶して結局動き出したのは2時間後になるのだけど。




