やっぱりそうなるのね…。
「スヴェン殿、時間ですよ…って、何ですかこの微妙な空気。」
全員が黙ってしまった部屋に響いたのはカイル様の声だった。どうやら父の休憩は終わりらしい。
「あ、あぁカイル殿か。では私は戻るが、引き続き娘のことをよろしくお願いします。カイル殿、このまま此処で休憩をとってから戻ってきてくれて構わないから。もし何かあったら手紙を寄越してくれ。」
「お気遣いありがとうございます。先程アシュモード陛下から手紙が届いてたので机に置いてあります。」
父の気遣いにお礼を言ったカイル様がこちらに近づいてくる足音がする。恐らくトゥコーテンさんの横まで来たのだろう。その代わりにお礼を言った父の声が遠のいていく。アシュモード陛下は同盟国として抗議文を出しに行ったんだっけ?このままの流れで本当に同盟組まれてしまわないように頑張ってもらいたいところ。
「お疲れトゥ。休憩出来そうかい?」
「大丈夫よ。貴女も休憩してらっしゃい。ついでにパーシルさん達を呼んできてちょうだい。」
いつの間にかとても仲良くなっていらっしゃいますね二人とも。トゥコーテンさんの声に若干諦めの色が含まれているのは気付かないふりをしておきますよ。
一人分、スタッフさんの足音がして次いでドアの開閉音がして、椅子を引きずる音もする。パーシルさん達が来るまでまではお喋りタイムらしい。
「殿下が戻ってくるんだろう?解決策が見つかったのかい?」
「中和剤の作成が出来そうなんだけど…。ちょっとね…。」
「ん?それは良い事じゃないか。なんでそんなに微妙な反応なんだ?材料が手に入らないとか?」
「それはまだ分からなくて…。その、どうやってサラに中和剤を飲ませようかと…。」
先程浮上した問題をとても言いずらそうにカイル殿下に告げるトゥコーテンさん。この世界点滴とか無いみたいだからなぁ…。これを機に作った方がいい気がしてきた。
でないと、
「それはもう王子様よろしくレイルが口移しするのがベストでは?」
「なんでそんなに楽しそうなのよ…。それしか解決策がないんだけどさ…。」
それしか思い浮かびませんよねぇ。
声だけでも楽しそうなのが分かるカイル様にトゥコーテンさんがツッコミを入れてくれたありがたい。しかしなんでレイル君確定なんですか。そこは女性にしてくださいよ。最悪父でも………やっぱり遠慮したい。
自分が意識だけ戻ってきてることにこれだけ怒りたくなったのは初めてである。
 




