実は意識は戻っているのです。
「ほんっと何なのこの呪い!二人とも交代よ。媒体のストックはまだある?」
「あと2冊分は…。」
「じゃぁ、1冊使いきるまで二人は休憩ね。」
聞こえてきた声に反応したいのに指一本動かせない。
トゥコーテンさんのイライラした声により、アルテナに戻ってきていることが分かりとりあえず一安心。休憩に入る二人の返事を聞くに、パーシルさんとカミュさんだろう。彼等も無事こちらに来れたようでよかった。残りの一人は病院のスタッフだろう。知らない声だ。
「レイル殿はハンナさんからちゃんと聞いてこれますかね…?」
「今の状態だと、キレて殺しかねないけど。そうならない為のストッパーになるためにメロが同行したんだと思うわ。」
ペラペラと本をめくるような音と共に体が少しだけ温かくなる。呪いの進行を妨げる何かを施してくれているのか。先程まではパーシルさんが浄化魔法で同じことをしてくれていたのだろう。だから体の自由はきかずとも、意識だけは戻ったと推測する。
声が出せればなぁとも思うが、それも出来ないのでひたすら皆の会話を聞くだけだ。植物状態と似たような状況か。
「…模様が薄くなるわけではないから症状が悪化してるのか快方に向かってるのかも分からないですね。」
「でも貴女の吸収の魔法のおかげで負担が少なくなってるのは確かよ。パーシルさんだけに任せていたら長期戦は無理だっただろうし。」
スタッフさんは吸収の魔法が使えるのか。そんなの聞いたことないけど、なかなか便利そうだ。動けるようになったら是非話を聞いてみたい。
今レイル君達がハンナさんの所に行ってるというが、ロシュロール殿下は何処に行ったのだろう。解呪の為にヤシュカに戻っているのだろうか。カイル様達にも迷惑かけているんだろうなぁ。結婚式挙げるって言ってたしなぁ。
「トゥコーテンさん、あの、窓際にある箱が光っているのですけど…。」
「ん?こんな時に誰からの手紙よ。申し訳ないけど、開いて読み上げてもらっていい?」
「手紙…?わ、本当だ。すごい。」
カサカサと紙が擦れる音がして、次いでパーシルさんの声が続く。
「聴取の結果、今回の件にミリア殿下の関与は見られずメドニエとの和解が成立するまでは軟禁することが確定。場所が決まるまでは監視にメロさんを付けて生活必需品の調達中。ハンナさんに関しては現在進行形でレイル殿が尋問中とのこと。アシュモード陛下は抗議文を送り終えて、万が一の為に軍の準備も進めているそうです。」
え?メロ、ストッパーはどうしたんだ。
 




