【???side】付き添い、顔が引き攣る②
窓はないし最奥なので、ここまで風が届くことはないのに鉄格子がガチャガチャと嫌な音をたてる。
これは、完全にレイル殿がキレて魔力暴走を起こしている。そのまま枯渇したらトゥ先生のお世話になるのだが、そんなこと言える状況じゃないのは分かっているので黙っておく。
触らぬ神に祟りなし。
「どうしてサラに呪いをかけたんだい?」
にーっこり笑い優しく問うてる隣の男が怖すぎる。サラ様に向けるキラキラ王子様スマイルやロシュロール殿下達を挑発するようなムカつく笑みでもない。
それを向けられてる本人は一瞬頬を赤らめたが、すぐに元の歪んだ顔に戻った。顔は良いですもんね、顔は。
「…あの子がロシュロール殿下と仲が良いからよ。」
「は?」
「殿下と結ばれるのは私なのよ!その為に馬鹿な王女に擦り寄って地位を得たのに!なのにっ!あの女が余計な事をするから、以前からあったヤシュカとの定例会は殿下が参加していらしたのに代理が来るようになるし!そのせいで会うことすら出来なくなった!黒髪の分際でふざけんじゃないわよ!」
いや、滅茶苦茶八つ当たりじゃないですか。定例会があったのも知らなければ殿下が参加していたのも初耳である。というか、馬鹿な王女って…。まぁ、こんなことに利用されてる時点でお察しな気もするが。
「そんな…ハンナ…貴女…。」
ほら、王女が物凄く落ち込んじゃってるじゃん。これは完全に彼女が白なので、このまま出して他の場所に軟禁でも良い気がする。
同じ事を考えたのかレイル殿が鍵を渡してくれたので、そのまま彼女を出してやる。
「良いのですか…?」
「王女殿下が呪いに関しては関与していないのは分かっていますので。ただメドニエと決着が付くまでは然るべき場所での軟禁になりますが。」
「大丈夫です。彼女の企みに気付かずにのうのうと生活していた私への罰ですわ。」
ドレスの皺を伸ばしている王女に手を差し伸べてエスコートをする。顎を引いて隣を歩く姿は流石王族、凛としていらっしゃる。後ろでハンナさんが騒いでいるが、メドニエには黒髪の魔術師はいなかったので知らないのだろう。どれだけ彼等が力を持っているのかを。
「ハンナはどうなるのでしょうか…?」
「…。彼は、アルテナに在住している魔術師の中でも飛びぬけています。あれでも元王族ですからね、持っている魔力がそもそも私達一般人とは違うのでしょう。」
「王族?」
「……まぁ、詳細は後で。少々急ぐので。」
身体強化の魔法をかけ王女を横抱きし、ダッシュで入口をくぐる。耳元で悲鳴が上がるがそんなの気にしていられない。
だいぶ離れたのに鳥肌が立つ殺気を感じながら、巻き込まれないように急いで役所へ向かった。




