【???side】付き添い、顔が引き攣る①
コツコツと響く足音の他に何か聞こえるなと思ったら、前を歩く男の舌打ちだった。
何故か病院の地下に作られている牢は一般的にイメージする暗くジメジメしているものと違って何処までも白い。床も天井も壁も、填められている鉄格子ですら白い。
一種の隔離病棟みたいな雰囲気の中を奥へ奥へと進んでいく。現在収容されているのは二人だけなので手前のを使用すればいいのではとも思ったが、それを許さず最奥へと入れたのは目の前の魔術師である。
「…口を割るでしょうか…。」
「割るじゃない。割らせるんだよ。」
どんなことをしてもね、と続けたレイル殿が再び舌打ちをする。普段より少し低めの声で紡がれる言葉こそ呪いのようだと手が震えるのを止められない。
あの場にいた私達全員理解していると思っているが、今回の騒動、ミリア殿下は巻き添えだろう。あの驚き方が演技なら相当なやり手である。
「液体を媒体とする呪いなんて初めて聞きましたね…。」
「それだけ優秀だったんでしょう。ったく、厄介なもんに地位与えやがって。」
怒髪天を衝く彼の怒りは口調を統一する余裕すら無くさせたらしい。勿論私も怒ってはいるが。
最奥の端と端。そこに入れられたミリア殿下とハンナさん両者に声が届く位置まで来て停止する。私達の存在に気付いた二人の反応は真逆だった。
「サラさんは生きてますか!?」
「実験の時の効果を考えればもう死んでるわよ。」
「…。残念ながら、サラ様はまだ生きております。現在治療中でございます。」
「そちらに優秀な浄化魔法使いがいたからね。彼女達がこちらに付くことを考えていなかったのは誤算だったようだ。」
誰のことだか分かっていない彼女に離れのと一言告げればパーシルさん達を思い出したらしい。もしかしたら彼女達の魔法すら把握していない可能性もあるが。
パーシルさんが浄化魔法を使えたのは本当にラッキーとしか言いようがない。
火や水、風などの魔法はどんな人間でも使用可能だ。それとは別に特定の魔法が使えるのはその中でも数は多くなく、現に私は一般的なもの以外は使えない。
「確認はしますが、今回の件ミリア殿下は関与していないということでよろしいでしょうか?」
「勿論です!」
「嘘です!私は殿下に指示されて仕方なく呪いの籠った液体の作成をしてサラ様に…。」
私の質問に即答するミリア殿下に更に被せるようハンナさんが叫ぶけども。
「うるさいなぁ。」
あぁ、隣の魔術師が怖い。戻ってもいいかしら。
長くなりそうなので、分割します。




