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【完結】魔女の箱庭  作者: うかびぃ
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【???side】離れの研究員は今日も暴発させる


隣国シュゼールから魔術師様がやってくるという話を聞いたのは前日のことだった。

研究棟とは逆に位置するこの離れで、気ままに実験を繰り返す私達には縁の無い話だと思っていたけど。



「え?アルテナに、ですか?」



何故かほぼ毎日訪れるサラ様はだいたいメロさんと二人で私達の実験を興味深そうに見学して、少しだけお喋りをして帰っていく。

だが今日はそうではなかったようだ。

聞いていただけで会ったことは無かった護衛を連れてきたと思えば、魔術師様であろう男の子が防音魔法を詠唱無しで発動させる。それだけでも十分ビックリなのに、更に魔族であろう男性が口にしたのは彼等の住むアルテナへの勧誘だ。

隣のカミュさんはまるで顎が外れたのかと思うくらい口をあんぐり開けている。私も似たようなことになっているけど。



「私達そろそろ帰らないといけなくてですね。でもカミュさん達の研究はとても興味深くて、是非うちにと思いまして。」



レイル君も気になるのかこうして描いては試しているんですよ、と先程の魔術師様、レイル様が描いたらしい魔法陣の紙を渡される。

その出来は見た目は完璧だった。元の陣は恐らく転移だと思う。ここまで削ることが出来るなら、私達でも大量生産が可能になるほどだ。



「ここまで出来てしまうのであれば、その…レイル様?がアルテナで研究をなさればよろしいのでは…?」



私も思ったことをカミュさんが代弁してくれる。その顔には少しの嫉妬も見られた。

私達の研究は爆発も起こすから危険だと特別にこの離れを与えられたが、実際は他の研究員が追い出したかっただけだ。『詠唱無しでの魔法の発動すらほとんど進んでないのに、魔法陣の研究優先なんて非協力的ね』と言ったのは、確かカミュさんの婚約者の妹さんだった気がする。

子爵家次男の彼には、同じ子爵家の長女である婚約者がいて将来的には婿入りする予定だった。だが研究ばかりで婚約者と必要最低限しか接触が無かったことに腹を立てた偶然にも同じ研究棟にいた妹さんが喧嘩を吹っかけ、険悪な空間を作り出してしまったことによって彼が追い出されたのだ。

当時から同じ研究をしていた私は勿論彼と共に離れに移り、こうして日々爆発しているわけだが。



カミュさんは悔しいのだろう。

いとも容易くこなしてしまう目の前の魔術師様に自分の苦労を否定されたような気がして。

それも誤解だと思うけど。



「僕は研究よりも肉体労働の方が好きでね。何よりサラが君達に研究をお願いしたいって言い出したんだ。」

「私達でいいんですか…?」

「君達が良ければ。こちらに戻って来ることがほとんど出来なくなってしまうけど。」



施設も整えてくれるという。なんと破格な待遇。

うちは平民だし、店に関しては弟もいるので何も問題ない。寧ろチャンスだ。



「カミュさん…。」

「俺は…。……俺はこんなんでも貴族なので、父の許可をとらないと…。」

「そんなに余裕はないですが、まだ時間はありますので大丈夫ですよ。今日はこの話をしに来ただけなのでこれで失礼します。あ、もし良ければその紙は研究に使ってください。」



サラ様の言葉を皮切りにゾロゾロと一行は帰っていった。

手元の用紙に描かれた魔法陣、お言葉に甘えて早速使わせてもらおう。



「…パーシィはどーすんの?」

「私は行きますよ。こんなちっちゃい場所で終わる私ではないのです。って、わわ!」



魔法陣に魔素を流し込んだ途端、ボフンッと黒い煙を上げて紙が燃えた。前髪も燃えたんじゃないコレ?



「っ!あはは!」

「そんな笑わなくてもいいじゃないですか。」

「拗ねるなよ。…そうだよなぁ、こんなお前を放ってはおけないな。」



さっきまでの暗い雰囲気が嘘のように大爆笑したカミュさんは、早速家に手紙を認め始めた。

後日返事を聞きにきた彼女達にそれらを伝え、もらった用紙を見せたらやっぱり笑われて。

別にもらった物も暴発させるのは分かりきったことである。





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