#99 魔剣の秘技もアリシアの固有技も超強い件
「『マジッククリエイション』っ!マルチルーンソード!」
俺はさけんでルーンを刻んだ剣を射出するのだが、いよいよ奴も見切られてきたようだ。グズッ...!バリバリバリィィィッッッン!グズズッ...!バリバリバリッ...!時々はその巨体に風穴を開けるもののほとんどはその棍棒で防がれる。
たまに棍棒が振り下ろされたり、踏み潰し、殴る蹴るなどもされる。その都度都度、ルナが
「『ディスポーズ』っ!」
と捌いたり、ルチアが
「『プロテクト』っっっ!」
と障壁で防いだり、また
「『ヒール』っ!」
と塵も積もれば山となる精神で溜まったルナへのダメージを回復したりと結局は繰り返し。
「『マジッククリエイション』っ!マルチルーンソードっ!」
「グガァァァッッッ!」
ルーンの剣で腕を何とか落としても、さらにと思えば光線を放たれ距離を稼がれる。それにてこずる内にその腕が再生し、次なる攻撃が来てしまうのだ。
そこで、俺は少しやり方を変えることにする。
「ガァァァァァッッッッッ!」
次なる攻撃にルナが飛び出し、
「『ディスポーズ』っ!」
と叫ぶ。その瞬間、敵は一瞬硬直するのでそこを狙って
「『テレポート』っ!」
と奴の頭に乗り、今度は
「『マジッククリエイション』っ!ルーンっ!」
と自らの剣にルーンだけを浮かび上がらせ、それで兜の隙間から目に突き刺す。
「グゴォッ!」
すると、棍棒が声目掛けて飛んできた。俺は再び「テレポート」で元に戻り、次の我武者羅な殴りを余裕でかわす。続いての、光線も我武者羅。俺たちは動くこともなく光線をかわすことができた。
「『マジッククリエイション』っ!デュアルルーンソード!」
その隙を狙い、俺は2本のルーン剣で首を狙う。すると、あっさり首が飛ぶ。
「よしっ!」
それを見、俺はガッツポーズをした。
のも、束の間。
「えっ...。」
俺は目の前の光景に言葉を失う。なんと奴は死ぬことなどなく首が再生して、片方の手で落ちた兜を被り直すではないか。
「嘘ぉ。」
「...。」
見ると、2人も同様。
「どうやら苦戦しているようね。」
アリシアは屋根の上から千里眼的遠望スキル「エクステンディド・サイト」で俺たちを眺めながら言う。
「わたくしが戻ります。」
対する雅はそう言って、アリシアの返事を聞く間も無く
「『ブースト』っっっ!」
と飛び出していった。
「さて、そろそろ天才アリシア様の本気を見せてやろうかしら。」
その様を見やると、アリシアは見えないところでナルシ発言をする。
「開け、『ストレージ』っ!出でよ、《黙示録》!」
さらに、頭上へ金色のゲートを現し、そこから飛んでも無く分厚い本を取り出す。そこには、『黙示録』という題がある。
「略式を行じて8章6節より11章19節を暗証開始。」
アリシアがそう言うと、千数ページ飛んで8章6節とやらに来る。そして、「long long ago」の珍訳長い長い顎みたいなノリで長い長い詠唱が始まる。
「一に血塗られし火炎と氷塊降りて、地上を滅し青き草を焼き払う。」
ザンッ!と目の前に円形の構造が現れ、パラパラ...とページが一気に捲れる。
「二に大いなる炎塊現れ、海は気と化しその上全ては砕かれぬ。三に毒は彗星となりて、河川は侵されその多くが命を失う。四に三珠の光は奪われ、闇は血を包みて時は日にも月にも黒を孕む。五に新たなる星は流れて、奈落を繋げぱ王と僕は世に苦をもたらす。六に軍を率いて使徒は放たれ、炎煙硫は過半の命持てる者を持たざる者とす。七に悪魔は敗れて、選ばれぬ全てが消え失せ、世界は終焉す。」
続くのは、六種の詠唱。その全てが『黙示録』とやらの内容に合致。ザンッ、ザンッ、ザンッ!とそれが重なるごとに円形の構造は増え最後には総計7つとなる。ページもパラパラパラパラパラ...と捲られる内に百ページ近くも進んでいる。
「故に、この砲門は笛の音と共にて終焉の理を表し、万物に破滅の力を与えん。『アポカリプスキャノン』っっっ!」
そして、彼女はそう詠唱を締める。
「アポカリプスキャノン」、訳して黙示の砲門。アリシアの固有スキルの名である。
さて、それは雅が魔剣を兜に弾かれ、兜に弾かれ、光線で距離を稼がれ、距離を稼がれしているところであった。
ピュォーン!プォーン!フォーン!ウォーン...遠くの方からラッパののような音の奏でるドシラソファミレが聞こえた。
「何だ?」
と思って見てみると、そこに1人の人と幾つかの円形の構造があることがわかる。しばらく、見ていると「レ」の音より少し低くガァッーン!と聞こえたのでこれは「ド」の音だと判断した。絶対音感、あるいは相対音感持ちなら和音がどうのこうの、G(ゴキブリではない)のどうのこうのとか簡単に言うだろうが常人には音階を答える音当て的なことしか出来ないのである。
「う...。今ので魔力のほとんどを...。」
そこで、アリシアは全身の力が抜けたよう感覚を覚える。これほどの大魔術を起動すると、流石の大魔法使いも魔力をほとんど使い果たしてしまうらしい。
だが、それでも彼女は続ける。
「う...。うぅ...。」
アリシアは手で足を無理矢理伸ばし、ガクガクと震わせながら
「『チャージドレイ』っ!」
と残りの魔力を全て使い切り、杖先に魔力を収束させて金色の光線を放つ。
ギュン、ギュン、ギュン...!ドレミファソラシと連なる音階。光線は回る円形を次々と通過し、どんどんと肥大化するわ、高速化するわ。
「雅、離れろ!何か謎の発光体が来るぞ。」
その様を敵の下で見ていた俺は目に攻撃をしかけんとする雅にそう言う。すると、彼女はそこからすぐ離れる。その間もギュゥゥゥッッッン!と例のとあるのシスターさんが放った顔負けの謎な発光体がこちらに向かっている。
「グゴォォォッッッ!」
奴もそれに気付いたようで俺たちに構わず、その発光体の方へ光線は飛んだ。しかも、今までに見たこと無いほどに太い。ギュゴォォォッッッン!グギュギュギュ...!それらが衝突すれば凄まじい音とともに真下の地面を抉り、真横の外壁を抉り、小競り合いみたいなのを始める。優勢なのは発光体の方。
「グガァァァッッッ!」
奴も対抗して力を込める。が、押しきれず。
ギュィィィッッッン!そんな音ともに発光体は奴の頭を貫き、まるごと蒸発させる。これで、しばらくは光線はこない。のだが...。
「おい、誰かは知ら...いや、アリシアの奴か?まぁ、どちらにせよこいつは他の巨人と違って首を跳ねても死なねぇんだ!おまけに再生能力まで持っていやがるっ!」
俺は彼女に聞こえない所で事実を突きつけた。
「それでしたら、再生を上回る速度であの方を切り刻むだけですわ!」
対する雅はそう言って前のめりでしゃがみこみ、目を瞑る。
「え...ん?」
その殺伐とした言葉に俺は若干困惑。それに構わず雅は鞘を持つ手の親指でダーインスレイブの鍔を弾く。と、わずかに見えた剣の刃が白く輝いた。
「(あの御本にはダーインスレイブの秘技は数多の斬撃を繰り出すとの記がごさいました。あの方にも弱点はあるはず。その弱点を突くにはこうするしかないですわ。)」
そう考え、彼女は目を開く。
その目も刃同様白く輝き、闘志が燃えている。そして、
「裏面制御層、解除。秘技・白虎っ!」
叫んだかと思うと抜刀、その内に奴の足下を通過しまず右足切断。続いて、コンマ1秒とかけずにもう片方を。次のコンマ1秒で
は飛び上がって奴の腰を二連撃で落とし、次は奴の腕、次は奴の臍とどんどん刻んでいきやがては斬撃ですら目で追えないほどになる。
ザグザグザグザグザグッ!シュキシュキシュキシュキシュキィィィィッッッン!見えるのはだんだん細切れになる奴の巨体のみ、聞こえるのは猛烈に連なる鈍い音と鋭い音のみ。
「(リバースとか秘技とか言ってたけど...。もしかして、これがダーインスレイブの秘技って奴?熊谷さんのもぶっ飛んでたけどこっちも負けず劣らずのぶっ飛び具合。これじゃ、俺本当に主人公の友人枠じゃねぇか。俺、その内死ぬかも。生き返るけど。)」
その様を見て、呑気にそんなことを言っていると彼女は奴の胸と思しき箇所を一撃、一撃、また一撃と切り刻んでいた。
それから、数秒経っただろうか。奴はついに肉片の山と化し既に息も絶えていた。
「や、やべぇ...。」
俺は唖然としてそれを見つめる。言っておくが雅が抜刀してから10秒近くしか経っていない。それでこれはマジでヤバい。それと、アリシアが放った可能性大のあの技もマジでヤバい。
「...。」
それを他所に雅は黙って剣を払って、血を飛ばし納刀する。いつの間にか肉片も跡形もなく失せ、残ったのは奴の持っていた棍棒と被っていた兜のみ。その様を起きてきたセレスも見て、
「凄い...。」
と声を漏らす。
一方、アリシアの方も「アポカリプスキャノン」と「チャージドレイ」で全魔力が消し飛び、その場に倒れたようだ。
まだ巨人どもが生き残っている以上、それはかなり危険なことなのだが俺たちには知る由もなかったのである。




