#98 ルーンの有用性を垣間見られた件
何度も足を切ってみるのだがその都度再生され、その都度攻撃され、その都度ルナが捌くの繰り返し。
「『マルチファイア』っ!」
相変わらず炎は弾かれるし、試しに
「『マルチロック』っっっ!」
とたくさん岩を落としてみるも全て棍棒で砕かれる。
「くそっ!どうやったら切れんだよ、あの腕っ!」
俺が歯噛みしていると、ルナが
「さっきの人は多分軽々と切っていたんだよねぇ。」
そう、彼女はいとも簡単に棍棒を持っていない方を切り落としていたのだろう。その証拠に地面に落ちていたその腕の付け根は綺麗な断面をしていた。何度も同じ所を狙ったのであればあれほどまで綺麗な断面にはならない。
「グゴォァァァッッッ!」
と、こちらへ棍棒。ルナはすぐさま振り返り、
「『ディスポーズ』っ!」
と叫んで、攻撃を弾く。一方の俺はあの剣に秘密があるかもしれないと、
「すまん、ちょっとだけ2人でやっててくれ!」
とルナ、ルチアに言うと、ルナは
「私、女の子とえっちする趣味なんてないんだけどぉっ!?」
それは、"やる"と聞いて真っ先にそっちを浮かべるお前が悪い。
「私とルーナさんが...!」
ルチアはルチアで変に想像してしまっとるし。
俺は心の中ではツッコむものの、表では華麗に無視し、灰色の髪の彼女が置かれている家の中へと入る。
「うっ...。」
と、そこでその人は起き上がる。俺が
「大丈夫、ですか...?」
と聞けば、彼女は
「あなたは...私を助けてくれた...。」
と言うので、俺が
「は、はい...。」
と返すと、
「ありがとう...。」
と彼女は超小声で言う。
それがあまりにも小さくて、俺の耳にはブツブツとしか聞こえなかった。俺が、
「ど、どうしました?」
と聞くと、彼女は顔を赤くして
「別に感謝なんてしてないんだからねっ!油断さえしなけりゃ、あんな奴余裕で倒せるんだからっ!」
といきなり吐き捨ててくる。お、おぉ、ツンデレだぁ(泣)。やっと真面なキャラのヒロインに会えたぞぉ...。
「何、ちょっと涙目になってるのよ。大丈夫?」
ちょっと待って、マジでツンデレだぞこの人。俺はさらに涙目になる。
「ほ、本当に大丈夫?」
さらに聞かれてさらに涙目、何て言うコント展開は無く俺は本題に入った。
「えっとー...。あなたはー...。」
「私はセレスティナ・フォン・アーバスノット、この街を統べている貴族の娘よ。皆からはセレスって呼ばれてる。て言うかあんた、私に先に名乗らせるなんてどういう神経してんのかしら?」
「す、すみません。俺は新嶋悠人と言います。」
「ニージマ、ユート?変わった名前ねぇ...。まあ、良いわ。して、ここに来たのは私に何か用があったってことでいいのかしら?」
「は、はい。その、セレス様の剣...。」
「はぁ...。セレスで良いわよ。どうして皆、公の場以外でも私を様付けをしたり、敬語を使ったりするのかしら?私、そういうの、嫌いなのよね。」
「す、すみません。」
さっきから謝りっぱなしで情けないが、相手が貴族の娘だと言うのだから仕方もない。
「さっきあの巨人の腕を軽々と切り落としてたけど、セレスの剣って何か秘密があったり?」
俺が聞くと、セレスは
「秘密と言える秘密なんてないわよ。そんな言い方するってことはあんたたちには出来なかったってことよね。」
と返してくるので、
「は、はい。」
と俺。対する彼女は
「何であの程度切り落とせないのかは甚だ疑問だけど、そう言えば刃の付け根に古代文字が刻まれているのよね。何て書いてるのかしら?」
と言って、そこを指差す。確かにそこには解読不能な古代文字が刻まれていた。数文字しかないことからして剣を打った者の名前とは考えにくい。と、するならば。これが俺の探し求めた秘密である可能性は十分、刃の鋼がどうのこうのの可能性もあるが、物は試し。俺はその文字を目に焼き付け、それを刃に浮かばすイメージで、
「『マジッククリエイション』っ!デュアルソード!」
と2本の剣を生成する。
俺はそれを手に取ると、回転を孕ませ奴の両腕へそれぞれ投げる。シュルシュルシュル...ザグンッ!すると、何といとも簡単に腕が落ちるではないか。
「うっ...。」
と、一瞬の立ちくらみ。魔力がかなり減ってきたようだが、まあまだ大丈夫。俺は彼女に
「ありがとう。」
と言って、
「えぇ。」
と言う相槌の声を背に元へ戻る。
「『マジッククリエイション』っ!デュアルソード!」
そして、またその古代文字を刻んだ2本の件。多少歪だが特徴は掴めているはず。俺はそれを奴の脛に放つのだが歪だったせいでイマイチ切れ味がない。だが、後は奴の巨体が背中を押してくれた。
「グォォォッッッ!」
奴は後ろへ倒れる。そこへ俺は「テレポート」し顔面へ向けて、
「『ハードスマッシュ』っっっ!」
強めの拳をぶっ放す。すると、奴はさらに
「ガァァァッッッ!」
と声を上げた。
見ると腕は既に完全再生し、足も再生し始めている。俺は「テレポート」でルナの元に戻り再び古代文字を刻んだ剣を生む。それを見て、彼女が
「その文字はルーン...かなぁ?」
と言い始める。ル、ルーン?量産型魔剣とやらに刻まれるというあのルーンか?そう言えば、エミールとの決闘でグラムの面見た時もこんなのがあった気がする。
て言うか、剣に刻むだけで魔剣擬き作れたり、魔剣ですら第一撃で切れないものを第一撃で切れるとかルーンの有用性半端ねぇ。
「ルーン...か。お前、何でも知ってるよな。実はアリシアなんかよりずっと天才なんじゃ?」
思いつつ、俺はルナに言う。彼女は
「それほどでもないよぉ。下ネタの予備知識として伝承とかの勉強もしてただけだからねぇ。ただ、胸はアリシアをずっと上回わってるよねぇ。」
下ネタの予備知識なんだ、それ!?あと、頼むからそれアリシアの前で言うなよ。仲間割れで仲間と死別なんて嫌だかんな。なんて、思いつつ目の前の敵に目を戻す。
「グゴォォォッッッ!」
さて、まもなくその体は全て完全再生。奴はそう叫びつつその手の棍棒を振り下ろし、ルナは飛び出しその手で棍棒を受け止めた。




