#89 狂戦士が牢屋のシルヴィアを消した件
その後、人と町と塵外な被害をもたらしたとしてシルヴィアは牢屋に送られた。以前、俺が冤罪で閉じ込められた牢屋と同じ場所である。
「誤算だったわ...。まさか、あいつにあんなことが出来るなんて...。」
牢屋の中でシルヴィアは言う。実際、俺も何であそこまで感覚が研ぎ澄まされたのか分かっていない。
「それより、狂戦士の奴はまだ来ないのかしら...。」
加え、彼女は空に上る月を見ながら言う。弓は没収され、処刑も確定。どうせは死ぬのだから、早い目に魔王軍の1人である狂戦士にが都合が良かったのである。
と、その頃。シルヴィアが待ち望んでいた者は牢屋の前にいた。
「貴様、何者だっ...!?」
「何者だっ...!?」
番2人は剣を抜き、ベルセルクに切り掛かろうとする。が、その間を抜けられる。
「っ...。」
「...。」
しかも、次の言葉を発する頃には彼らの首は同時に断たれていた。
そして、ベルセルクはシルヴィアの牢の前に出る。
「ちょっと遅いわよ、ベルセルク。」
「悪いな、ダークエルフ。」
「私の弓は恐らく奥の倉庫。無かったなら御免だけど自分で探してくれるかしら?」
シルヴィアは彼とやり取りしつつ、奥の方を指差す。
「そうか、話が早くて助かる。」
彼は応えて、大悪魔ベリアルの肌製の手袋をつけた右手を翳す。
「貴方の固有スキルって本当に便利よね。『テールム・インペリウム』だっけ?あれ、死者の武器なら無条件で我が物出来るんでしょ?」
シルヴィアが聞くと、狂戦士は答える。
「ああ、このスキルのお陰で俺も助かっている。」
と。
「さて、そろそろ私を殺してくれないかしら?」
許しを請うならぬ、殺しを乞うなんて常人なら狂気と感じるだろうがベルセルクの固有スキル「テールム・インペリウム」はその常識を覆す。
「そうだな、悪い。」
「お願いだから一発で絶命させてよね。苦しみながら死ぬのは嫌なの。」
「ああ、任せろ。」
そんなやり取りの末。狂戦士が
「邪王の死棘。」
と言って黒の針を生み、次にそれを操りシルヴィアの首を一太刀にする。
それから、彼はシルヴィアに言われた通り奥の倉庫へ行って彼女の使っていた弓、必殺の大魔弓を漁り見つけ出す。
「『テールム・インペリウム』っ!」
ベルセルクは持ちつつそう唱えて、弓を自らの物とする。
そして、次の日。番が戻らないと不審に思った自警団の1人が牢屋に向かったことで、3人の死体は見つかった。当然のことだが、3つとも首が切られている。
その自警団は慌ててギルドの裏に設置された署に戻ってきて他の団員にそのことを伝えた。
それからすぐに検死が行われたようだが、同一犯であること以外は何も分からなかったらしい。まさか、シルヴィアが仲間に殺してくれと頼んだなど思わなかっただろう。




