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#84 やけにしつこい悪魔から逃げた件

 「逃げるぞ、みんな!」

俺が言うと、皆がうなずく。

「逃亡など...全く、他に方法は無かったんですかね。」

悪魔が言えば、アリシアは杖をそちらへ向けて、詠唱を続ける。

「『マルチエクスプローシブサンダー』っ!」

爆裂の雷は放たれ、それを奴は防ぐ。ドゴドゴドゴォォォッッッン!轟音が連なり、煙が裂けるように後ろへ流れる。

 「残念だったわね、そこの悪魔。逃げながらあんたを倒してやるって言ってんのよ。天才アリシア様にかかれば朝飯前だわ。」

そう言いつつ、また攻撃魔法を放つ。

「チッ...。本当に気に障る方々ですね。『ガンド』フェイの豪雨っっっ!」

悪魔が唱えれば、数多もの黒い球が降り注ぎ、アリシアの放つ魔法を全て弾く。次いで、また同じ攻撃が上から降る。それを雅は、

「『エンゼルレイン』っ!」

と光の雨を降らして全て弾く。

「そちらの魔剣の方は中々やるようですね...。横の導師の方は...あなたは天才だと自負していましたが私はそうは思いませんよ。」

悪魔はそう言って今度は通常の魔法攻撃を仕掛けてくる。襲い掛かったのは超高温の炎。

 「『マルチロック』っ!」

対する俺は幾多の岩を落とし、炎にぶつける。が、すぐにそれは燃え尽きてしまう。

「っ!?」

「そのような岩でよく私の炎を止めようと思ったものです。」

岩のお陰で少しは威力やら速度やらが弱まったようだが失せてるわけではない。それを見て、アリシアは言う。

「あぁっ!もう仕方ないわね!久しぶりに極大なの行くわよっ!」

もしかすると、自分を天才だといつも思い上がるアリシアが本気を出すのは初めて見るのかもしれない。

「おお、珍しくアリシアが本気になったぞ。」

「ええ、天才アリシア様の本気、しかと目に焼き付けなさいっ!」

「やっぱりそこはブレないんだな。」

俺は思わず呟いた。彼女には聞こえなかったようで、すぐさま叫んだ。守護の極大魔術、そのスキルの名を。


 「『フリージングクリスタルプロテクト』っっっ!」

その詠唱とともに幾多もの巨大な氷の柱が地に突き刺さり、炎を柱が半分溶けたところで受け止める。

「真打ちの六分の力とは言え、私の炎を流すとは。さっきの言葉は撤回させていただきっ、ますっ!」

そう言って、今度ははたまたガンドの射出。

 俺は「マルチロック」を唱えて、それを弾きつつ、俺の「テレポート」で皆を返していく。もっと早く思い至れば良かったのだ。今考えれば、何も難しいことのない簡単なことのはずだった。

 逃げるならば皆同時に瞬間移動すれば何も問題はなかった。「テレポート」は単数にしか使えないが、イメージさえしっかりすれば他に使わすことは出来る。アリシアの「ラージテレポート」はさっきの魔術で必要な魔力を使ってしまったためもう不可能。そうもっと早く思い至れば皆で逃げ切れていたかもしれないのだ。

 「『テレポート』っ!『テレポート』っ!『テレポート』っ!『テレポート』っ!」

と俺は必死に瞬間移動スキルを連呼し、必死にイメージを固め、何度か失敗しながらも最後に俺1人なる。と、そこで後ろの柱が砕け散り、こちらへガンドの雨が降り注いだ。おそらく、さっきから使っている「フェイの砲撃」とやらだろう。俺はその黒い球を背に、大きく影叫んだ。

 「『テレポート』っっっっっ!」

共に俺を白い光が包み、黒い球の2つや3つが俺の頭や胸を貫くギリギリで瞬間移動は起こった。

 その先はいつものプロスペレ。そこには安堵の表情を浮かべる4人がいた。

「はぁ、はぁ...。」

俺は息を切らし、その後は多分彼女らよりも安堵した感じのため息をついた。

 そして、悪魔がそれ以上俺たちを追うことはなかった。少なくともひとまずは嵐が去ったのである。

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