#80 皮肉な方法で愚者を倒した件
「なるほど。変だとは思ったが貴様、失なわれたはずの錬金術をしえきできるか...。」
ゲオルギウスは言うが、それとは形式上同一であり、実質は全く別のもの。いわば、錬金術は魔力を以て物質を生み出す術であり、この「マジッククリエイション」は恐らく魔力を以て物質とする方の術である。
「俺がそんな大層な男に見えるか?俺がやっているのは恐らく魔力を固めて武器にするということだ。それに、使う時に結構魔力を削がれるみたいでな。生憎と制約が多いんだ。」
俺が言うと、敵は笑ってみせた。
「要するは多大な魔力、生み出すは刃。まさしく錬金術だがそれとの相違 は理解した。」
ホントかよ!俺は突っ込みたくなったが心の内に秘めておく。そう聞いてみるとなお形式上は同一なのだと感じたが。
「ならば、私の真髄を貴様に見せてやろう。全く、たかが駆け出しにこれを使うのも少々気が引けるのだがな...。貴様は本気を出さねば勝てぬと理解した!」
「さて、その本気が通じるかな?」
ゲオルギウスの言に俺はハッタリで返す。奴にマジで本気を出されると結構ヤバいのだが、気持ちだけは余裕な感じにしておいた方が楽に感じる。
「戯れ言を。貴様のような者にほざかれるなど屈辱だわ。まあ良い、では行こう。竜殺しの愚槍よ、今ひと度竜の息吹を纏え。」
敵はそこで詠唱を中断し、俺に言う。
「貴様も貴様の仲間もここで終わりとなる。」
させるか!!!俺は心の中で反駁し、「マジッククリエイション」により双剣を生む。
「天災竜鎧っ!」
次いで敵は良い、その瞬間にアスカロンとやらの闇を知る。言葉と共に槍に走っていた禍々しい線が広がってゆきその全てを漆黒で包んだのである。よく見ると、所々に脈動する赤い線がある。その風貌はその槍の恐ろしさを物語っていた。
しかも、敵のパラメータが総じて激増したことがまだまだ素人の俺にさえ感じられる。俺は今まで以上にその槍を警戒し、身構えた。
と、その瞬間。ギュンッ!そこから奴の姿はふっと消えた。かと思えば奴は後ろに回っている。俺は寝そべり緊急回避し、次の槍を転がってかわす。
「フッ...。」
と笑う敵。実はその槍の一突きは第一の刃。地面の崩落こそが第二の刃であった。流石の俺もこれには成す術はない。
「うわぁぁぁっっっ!」
俺は叫び、瓦礫と共に偶々地下に位置したダンジョンへと落ちていく。
「ぐはっ...!?」
とは言え、高度は高かかったために直撃した背中はかなり傷んだことであろう。証拠に痛みのせいでうまく力が入らない。俺のその様子を嘲笑ってか奴はニヤリとし、非情にも次の攻撃に移る。
彼が口に出したのは
「毒の雨よ!」
との言葉。終わると上空には突如黄緑の液体が現れ、それが雨のように降り注ぐ。
「マズ...い!」
ゲオルギウスは"毒の雨"と言ったのだから、あの液体は毒なのであろう。俺は判断に従い背中の痛みを我慢しつつ、瓦礫の山を転がり下に辿り着く。その際、多少の毒を食らったがこの程度なら最近買った解毒薬でなんとかなる。
「ぐっ!?」
おまけに背中へ畳み掛けも食らったが、こっちの方も回復薬で傷は治まる。痛みも少しはマシになるであろう。
そう思って俺は購入済みの解毒薬と回復薬を口に含む。さっきの落下で結構な量が割れていたが辛うじて2、3本ずつ残っている。毒は次第に消え、傷は癒え、痛みもマシになる。
「これなら、立てる...。」
俺は剣を立てて立ち上がりヨロヨロ歩く。
その中途で「アシッドボム」と「ソードビーム」を習得しても残ったポイントの内、25を使った透視スキル「ペルスペクト」を唱え上を見る。ちなみに、もう1つ習得したスキルはあった。
見ると、どうやらあの毒の雨やら背中の痛みやらでろくに動けないのだと思ったらしく、奴は館にの方へ向かっていた。
魔力の残りはかなり少ない。この魔力では何を使っても奴に致命傷は与えられないし、「マジッククリエイション」で強力な武器を創造するというのも不可能である。
「と、なればアスカロンとやらを使ってやるしかないな...。」
俺は呟き透視で見る先の奴に手を翳す。アスカロンを使うにはその手からそれを引き離してやる必要があるのだ。となれば、予想外の所から攻撃をし、出来るだけの大ダメージを与えるしかない。後で使うことも考えると今使える魔力は残りの3分の1程が限界である。
と、なれば簡単な形にして大きめの針などが良いだろう。強固なイメージは描けないが尖端が鋭く、ある程度固く、幅が大きくを意識すれば多少歪でも構わない。俺は
「『マジッククリエイション』、ラージニードル!」
と唱えて、巨大な針を生み出し奴の腕を突き刺す。同時にアスカロンは空へ放られた、
「何っ!?」
そこで奴も初めて気付いたようだ。俺が生きている、と。だが、もう遅い。俺は、「テレポート」を以てアスカロンの前へ瞬間移動、それを持った後はまだ
「『テレポート』っ!」
と唱えて、奴の後ろへ。
「私の槍は!私の槍は何処だ!!!」
同時にゲオルギウスは自らの槍が無くなっていることに気付く。俺は言う。
「お前の槍ってのはこれのことだよな。」
「貴様、その槍を返せ。その槍は貴様には扱えん!」
結果、そんな言葉が返ってくるがまさにその通りで既に俺から反発しようとしてる上、多大なる邪気が持つ右手を蝕み痛みを走らせている。
「っ...。確かにそのようだが、皮肉なものだな、ゲオルギウス。」
俺は苦痛を堪えながら奴に言う。
「何だと?」
返されたので、こちらもそれに答える。
「俺を倒すために取り寄せた武器が自らを滅ぼす武器と成り果てるなんてな。」
今度は俺がニヤリとし、
「『マジッククリエイション』、アーチ!」
と某弓兵の持つ弓を想像して唱える。すると、手元には大きめの弓が生まれてくる。矢を出さなかったのは、この槍を射るつもりだったからだ。
「行くぞ、ゲオルギウス。精々死に抗うが良い。」
そんな俺は粋がった言を投げ、弓を構える。槍は片手で持つとかなり重いがもう少しの辛抱だ。俺は堪えつつ唱える。
「『シュート』っ!」
これが1週間の内に覚えた最後のスキルである。共に弦は弾かれ案の定、親指と人差し指の間やら腕の腹やらに痛みが走ったがそれもやがて失せる。
そして、槍の持つ反発もあってか槍の撃ち出される速度は増し、「シュート」は手振れなどを補正し、しかも槍を失った奴の運動能力は下がっていたために見事命中した。その威力は絶大でその体に風穴を開けた後もしばらく地面を進み、やがて止まった。
こうして、ドラゴンスレイヤータイマン伝説はあちらから見ればラスボス、アグ○ージャの勝利で幕を閉じたわけだ。
東の空を見ればもう日が登り始めている。俺はそれを確認すると、すぐに魔力切れで倒れてしまった。魔力回復の薬については全て割れて使い物になるかとは無かったのであった。




