#79 錬金術擬きのスキルを習得できた件
「愚者、ゲオルギウス。いざ、参らん!」
そう言いつつ奴は一気に距離を詰める。その俊敏さは馬ををも超え、目測ではほんの数倍にすれば音速に達してしまいそうな感じである。
俺はとっさに防御の体勢へ。お陰で突きは防げたものの、敵が一度戻して打ち出してきた槍柄の勢いは殺すことは出来ない。俺はそのまましばらく吹っ飛ばされ、首跳ね起きで体勢を整え直す。
「貴様、駆け出しの冒険者にしては身体能力は高いようだな。」
「ああ、そうとも。前の世界じゃ体育は得意だったもんでな。」
俺は答え、前へ走る。
ガキィィィッッッン!シュン、シュン、シュンッ!槍の柄は剣の刃と打ち合い、槍による突きは挟まれる。俺は時折首筋に掠り傷を食らいつつも、紙一重でかわし続け、やがて瞬間移動によって距離を取る。
「無駄だっ!」
が、瞬時にしてまた間合いを詰められる。俺は両手で剣を掴みそれを防いで受け流し、その隙に剣を振る。狙うは奴の脳天。剣道を元手に経験則である程度の剣術は身に付いていた。
が、その前にかわされる。俺が切り裂いたのは一瞬映った奴の残像であった。
そして、また柄と刃を打ち合い、槍をかわしのローテーションに入る。たまに剣術の変化球を挟むも全て防がれ、それどころか返り討ちに合いそうなことだってあった。
「驚いたな。たかが、駆け出しがここまで私の攻撃を防ぎ続けるとは。」
「ずっと、学校で剣道をやっていた俺の腕を嘗めんなよ。まあ、剣道の剣術とは多少外れてるがな。」
俺が返すと、敵はほくそ笑む。
「なるほど、そうか...。おい、異邦人。私がどのようにして竜を殺めたか、その伝承は聞いたことがあるか?」
さらに、一言加えて。
流石の俺もそこまでは凌駕していなかった。確かにキリスト教徒の友人にキリスト教については聞いていたが、深入りすると厨二だと思われかねないし、仏教徒である以上異教を過剰に知るのも気が引けていたからだ。だが、竜殺しと言うぐらいだから槍がその鍵だったのだろう。
「正解は槍の投擲、だ。」
考える間に敵が答えを出す。
「槍の投擲、だと!?」
俺が驚きを露にする。槍の投擲と言えば、俺は槍の兄貴ぐらいしか思い付かない。例の人でなしである。
「いざ、竜を殺めし投擲を食らえっ!竜殺しの投槍っ!」
と奴は言う。さすれば槍は超速で空を貫き進み、緑の尾を引きつつこちらに向かう。
その様子に俺は考えにふける。どうする?あの投擲はおそらく食らうと即死ものだ。ここでわざと受けてまた生き返ると言うのもありか?いや、俺が死んだら今度はあいつらが的になる。雅がいれば安心だからこの時間では暗殺されかねない。と、なればここで防ぐしかないようだ。その投擲、絶対に防いでやる!
刹那。その気持ちは目に見える形となった。スキル習得時のあの感覚と共に現れたのは盾。無論、防ぎきれることはなかったが隙はわすがに生まれる。それを見て、俺は
「『テレポート』っ!」
を唱えてさらにギルドカードからそのスキルの名を盗む。どうやら「マジッククリエイション」と呼ぶらしく準固有スキルと言う記載があった。準固有って何だよとは思ったが今は関係ない。意味は魔法の創造。あの盾のように物を生み出す錬金術的な奴であろう。
が、それとは圧倒的に違っていたことを1つ察する。どれも色は群青で明らかに脆い。前に魔力は青色だと聞いたことがある。いわば、宿命で言うところの投影的な奴である。
「『マジッククリエイション』、デュアルナイフッ!」
想像するのは弓の漢の干将・莫耶。と、思い描いた通り両手にはそれぞれ1本ずつ短剣が生まれた。結構魔力は削がれたが、宿命による強固なイメージのお陰で容易に何でも作り出せてしまう。
俺は重力の力も借りて、2本の短剣による斬撃を繰り出す。と、鈍い音がした。見ると、2本のナイフは敵の腕にめり込んでいた。
「あの投擲をかわした、だと!?それにその短剣、何処に隠した!?」
言いつつ俺を振りほどき、投げた槍を取りに戻る。
俺は続けざまに唱える。
「『マジッククリエイション』、マルチボム!」
次に想像したのは大量の爆弾。爆破は魔力によるが槍に手を掛けた奴には不意だったためにまともに食らう。このことには敵も怒ったようで一気に槍を突き出してきた。次に想像するのは奴の槍そのもの。随分劣化した感じにはなるだろうが、一瞬でも防ぐことは出来るだろう。
「『マジッククリエイション』、アスカロン!」
と唱えれば、俺の手元には敵のそれと見た目だけは同一の武具が現れる。
「贋作がぁぁぁっっっ!」
それを見て叫ぶゲオルギウスは槍先を前に出す。対抗して俺も槍先を突き出す。ギィィィッッッン!2つは激突して音を立て、やがでこちらの槍の方が砕けてくる。このままではダメだ。そう感じた俺はとっさに残った所を押し出して槍を跳ね返し、次には手元の物を基点に再びアスカロンを生む。
「うっ...。」
そこで一瞬フラッと来た。おそらく、魔力不足の影響だがまだ戦える。と、敵は投擲の構えに入った。
「チッ、今度こそ食らえっ!!!竜殺しの投槍っっっ!」
その槍に勝てるとは思わないが、俺もやれるだけはやってみる。槍投げなら形は知っている。一応「ハイプロテイン」を掛けた上でドラゴンスレイド擬きを繰り出す。が、もちろんのこと直ぐ様弾かれた。
「フンッ...!贋作が。」
ニヤリとするゲオルギウス。
だが、お陰でこちらには目が向かなくなる。俺は「テレポート」で奴の下に潜り、さらに1週間の内に「アシッドボム」と共に習得したスキル名を唱える。
「『ソードビーム』っ!」
すると、剣からは魔力による刃が現れ、奴に深く傷を負わせる。同時にその体は吹き飛ばされ、敵から感じていた魔力はまた激増した。
「さっきまでが真の力だと思っていたが...。これからが真打か...。」
俺は呟き、「マジッククリエイション」によって武器を生む。
こうして錬金術擬きのスキルを手にした俺は真に本気を出したゲオルギウスと対峙することとなった。




