#72 錬金術師が無限の魔力を行使できた件
「さあ、掛かってこい若輩者っ!いかなる攻撃を受けても我が返り討ちにしてくれよう。」
金ぴか改め、アントニウスが挑発的な言葉を発する。
「若輩者...あんた、今私のことを若輩者って言ったわね?」
耳に入るアリシアは暗い顔をしてそう言った。
「その通りだ。実際事実であろう?貴様からは確かに膨大な魔力を感じるが、それは宝の持ち腐れである。最良の使い方など今の人間が知ってるはずも無い。故に、貴様も含めて皆若輩者なのだ。」
「よく言ったわ、錬金術師。そっちがその気ってんなら、私も言わせてもらうけどね。私は天才と謡われる大魔法使い、アリシア・ローズ・グリモワールよ。ねぇ、最強と天才、つまりは力と叡智。一帯どっちが強いと思う?」
アリシアとアントニウスのキャラが若干被っていきているな。しかし、あんな恐ろしげな輩のハッタリにハッタリで返せるというのは、アリシアのナルシストの恩恵なのかもしれなかった。
「もちろん、答えは最強だ。叡智など力で捩じ伏せられる。」
「残念、正解は天才よ。あんたは確かに最強かもしれないけど、天才である私には敵わないわ。」
アリシアは告げ、一瞬ほくそ笑み。
「『エクスプローシブサンダー』っ!」
すぐさま、橙の雷は放たれた。ドゴーン!と。轟音と共に雷は爆破を生む。が、奴は掠り傷1つで済んでいたようである。
「ほう貴様、軽いものとは言えど我に傷を負わすとは少しは骨があるようだな。だが五十歩百歩、この程度の傷など何ということはない。」
「嘘でしょ!?」
もちろん、アリシアも驚きを隠せない。
「それでは、今度はこちらから行かせて貰うぞ。現界せよ、『ミョルニル』っ!!!」
次いで、アントニウスは錬金術を発動。詠唱とともに無から紫電を帯びた小鎚が産出された。ミョルニルとは雷神トールが行使する北欧神話製の武具。確か、元の世界で厨二の友達がそう言っていたはずだ。
そんなミョルニルをアントニウスは投げ飛ばしアリシアの鳩尾に命中させる。
「うくっ...!」
「フン、所詮天才とはそんなものか。豊富な知恵を持ったとして圧倒的な力の前には無意味なのだ。」
彼のその言葉に、そもそもアリシアが天才であること自体が怪しい件について、と思う俺。他所にミョルニルは主の手に戻り、アリシアは気を失っている。
「フハハハ...この程度の攻撃で失神などするとはやはり所詮は若輩者。トドメだ、若輩の天才っ!」
最後のは若干矛盾があったがそれを見るアントニウスは、再び鎚を投げる。俺が
「ルナ!防げるか?」
と言えば、
「当たり前だよぉ。」
と答えが返る。
「『ディスポーズ』っっっ!」
彼女は倒れるアリシアの前に塞がり、両手を突き出し唱える。すると、ミョルニルの動きはそこで止まる。その刹那に敵は驚きを見せるが、すぐに余裕の表情へと戻る。
「なるほど、その魔術。あらゆる物理を跳ね返すと見たぞ。」
「その通りだよぉ。」
「なるほどな...。だが...流石にあの銃癖のような魔術は使えまい。『杖』よ、我が手にっ!」
そう言って今度は変哲も無い杖が生まれる。が、奴には杖の材質などには拘らなかった。それに、今"銃癖"と言ったか。察するに銃好き的な意味だろうが、あの言い分ではそいつの魔術はよっぽど珍しいのだろう。
そう考えに更ける内に。
「『ラピッドダークネス』っっっ!」
アントニウスは彼女に手を翳してそう唱える。すると、手の杖の先から深紅を纏った黒い球の出現、さらにその連続射出。それを見て、雅が動きその全てを跳ね返す。
「怪我はございませんか、ルーナちゃん?」
「うん、お陰さまでぇ。ありがとうねぇ。」
「いいえ、これぐらい当然のことですわ。それより皆様、あの錬金術師、おかしな点が1つございますわ。」
2人が言葉を交わしたその後。雅はあることを告げ始める。
「錬金術というのは既に失われた魔術の系統なんですの。その失われた原因というのが多くの魔力を要するというものですわ。それなのにあの鎧の方からは魔力の欠如が感じられませんの。」
なぬっ!?って言うことは無尽蔵の魔力を持つということか。まるで将棋だな。以前あの作品のアンチらに不満を投げつけた癖に結局は俺もその煽り文句を使ってしまう。
と、そんな心理を読んだのか。アントニウスは言う。
「その通りだ、若輩者よ。道化の分際でよくぞ察した!そう、この我には常に固有魔術『アンリミテッド』が働いている。無限の魔力の意を有するのではあるが、その本質は空気中より魔力を抽出、さらに増幅、仕上げに我が物とするといった具合である。」
なるほど、つまり形の上では本当に無限の魔力を有しているのであろう。何故なら、ダンジョンと呼ばれる遺跡は膨大な魔力が集う場所、故に魔物も次々と湧き、繁殖も行えるのだ。さらには、その大量の魔力を自らに取り込む際に増幅もすると来た。長期戦をするにしても周りの魔力が失せるより先に、こちらの魔力が尽きることであろう。
もう一度言うが、俺たちは本当に飛んでもない奴を相手にしてしまったのかもしれなかった。




