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#64 あの2人が裁判に介入してくれた件

 「では、検察官よ。前に出て主張をせよ。」

裁判長が大きく声を上げる。それを聞いて、検察側のいかにも聡明、いかにも玄人な方が、

「はい!」

という返事の後、前へ出てきた。

 「裁判長、それと領主様。被告人の犯した罪、つまり性犯罪と言うのは男女の権利を均等としているこのプロスペレにおいては決して許されざるべき行為です。」

その人は領主に向かってそう言う。それを聞いて領主はコクコクと頷いた。え!?そんなに性犯罪で重罪なの!?ま、まぁ、確かに許されないことではあるけども。こりゃ、命の覚悟もしないとなぁ。

 と、そんなことを思っているとアリシアが立ち上がって、

「異議あり!今からこの天才アリシア様が異議を唱えるわよ!悠人は私が唯一認めた大切な仲間よ!そんな男がそこのアンジェルネさんに襲い掛かったって言うんならその証拠を見せなさいよ!」

天才だとか何だとか色々と気になる箇所はあるが、異議を唱えてくれたのならありがたい。こんな冤罪に証拠など不十分、第一動機となるような物が俺には無いのである。これで、とりあえず一度あの聡明な方は引き下がるだろう。

 俺はそう思うが、そうはいかなかった。主張に証人を伴わさせない程、馬鹿な検察官などはいない。

「証拠...か。良いだろう、我々は3人程証人を用意しているからな。裁判長、我々が用意した証言を証拠として提出をしたい。」

検察が言うと、裁判長は

「了解した。その証拠の提出を認めよう。」

と返す。

 まず、やって来たのはルナを助けたあの日の男。それすなわち、超○イヤ人擬き及び筋肉変態野郎。

「では、証人。あなたの出身と名前を今一度確かめさせて頂きます。」

検察がそう言えば、擬きは答える。

「俺はジーク・ブルゴス・ケニーって言う。出身はこのプロスペレだ。」

その目は悪意に満ち、こちらへの敵意ある視線は後ろの傍聴席のを余裕で上回る。

 彼の証言はこうであった。

「以前、そこの男がこの俺に殴りに掛かってきたことがある。あの金髪の弁護人に俺が襲おうとしただとか言い掛かりを言ってな!きっと、そんなのを口実にあの女を自分が襲いかかろうとしたかったんだよ。」

その言葉を聞き、手錠を掛けたままの俺は

「おい、何言ってるんだ!それこそ言い掛かりじゃねぇかっ!」

「被告人、今は証人尋問中だ!静粛にせよっ!」

そこへ裁判長の制止が入り、その凄みに負けて俺は押し黙る。

 と、その次。擬きの証言を裏付ける2人目の証人。

「グリモア出身、プロスペレ在住のローラ・アルメリア・フォールと申します。先程の証言私が証明いたします。私、確かに聞いたんです。あの金髪の女の子、つまりルナさんが、あの男にケダモノをぶち込まれたって!」

その言葉を聞いて、俺はルナの方に細めた目を向ける。

「おい。」

「ご、ごめんねぇ。」

「まぁ、良いさ。もう終わったことだしな。へっ、あと証人は1人もいるわけか。そのまま、人生も終わりそうだな。」

口では笑ったものの、目はまだ暗い。明るくしようが無いのだ。

そして、これが最後。3人目の証人、名はクレア・キャロール・アンジェルネ。彼女もまたこのプロスペレでは皆からの信頼が厚い。しかも、あっちのアンジェルネさんとは姉妹関係と来た。俺が予想するに彼女の証言の威力は半端ないほど絶対であろう。それはもう、前まであっちのアンジェルネさんに感じたあの色香と同程度に。

 姉妹が似るとはこのことか...。お互い半端ないものを持ってやがるな、色々な意味で。俺はクレアさんのふくよかな胸の辺りを見つつ、そう感ずる。さらには案の定の超絶大威力証言。

「私もその男がそこの金髪の女にケダモノをぶち込んだって聞いたわ。それにね、アリアは私に純血を穢されたと言って私に泣き付いてきたのよ。ほら、これがこの証拠!」

そう言って彼女が出したのは小さく横長の紙切れ一枚。そこには、ただ画質が悪いだけの写真があった。カメラ的な魔道具で撮られた物らしい。

「金髪の女がケダモノをぶち込まれたのが偽りでも、この涙は偽りじゃない。つまり、そこの男は私の妹を襲いかかったってのは非常に信憑性がある、むしろ、ほぼ確実なのよ!」

 そこで、強風が吹き荒れ、弁護側が吹っ飛ぶ、なんて言う冤罪多発と言うか冤罪偏重の某アニメのようなことは起こりはしない。言ってしまえば、この状況は例のソレと全く同じなのだが。

 こうして俺の冤罪は冤罪らしからぬ方向へと傾いていく。見ると、状況の余りの酷さに驚きを隠せないままの弁護人方4人も黙りこんでいる。

「ぐうの音も出ないとはこのことだな。」

それを見る俺の口からはそんな呑気な言葉が漏れる。

 「シッカシスゴイナー、シャシンヲトレルマドウグガアルナンテェ。」

「ダ、ダメよ悠人!そっちへ行っちゃダメ!」

棒読みの後、何やらアリシアの声が聞こえるがこれはもう後に引けない状況だ。それに俺は何処へも行かない。ただ、社会的昇天をするのみである。俺自体が昇天するわけではない。あー、心なしか天使がいるような気がするー。そろそろ、お迎えなのかー。死神じゃなくてよかったなー。

 そんな中、裁判長は裁判の結果を決する。もちろん、有罪である。

「では判決を下す。被告人新嶋悠人はゆ...。」

彼がそれを容赦無く告げるその瞬間のことであった。

 「その判決、少し待つのじゃ!」

「俺もその男がそんなことをするとは思えんな。証拠も不十分だろう。」

裁判場に2人の男の声が響く。その2つには聞き覚えがある。それが聞こえると共に心なしか見えていた天使はどこかへと消え失せ、昇天も感じなくなった。それをその声2つの主は頼もしい方々であった。

 傍聴席を含め、この場の皆がそちらを向く。

「ゆ、勇者様っ!?」

「熊谷さんっ!?」

「エ、エミールぅっ!?」

「熊谷さんにそれにエミールも!?」

そう、そこにいたのは魔剣持ちのあの2人。グラムを扱う美男エミールに、レーヴァテインを扱う勇者熊谷和人。そんなゴールデンコンビのいかにも頼もしい介入に、俺は心から感謝するのであった。

 「かーみーさーまー!」

そして、俺は大空に向かって目が三つ、肌が緑のアイツ(オモチャだけど)のようなことを叫ぶ。全くその神様の1人に喧嘩を売っている俺が神様に感謝をするなんて虫が良いにも程があるよな、と心では思いながらも。

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