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#62 冤罪で捕まえられた件

 ある日。隣町から1人の女が訪れた。その名はアリア・ルビー・アンジェルネ。その町のギルドじゃ信頼も厚く、それはプロスペレにも及ぶ。しかも、美人で随分と豊満な胸をお持ちでしかも、色香が半端では無い。

 流石の俺も興奮までは行かずとも、見ていると口角は緩んでしまう。そんな彼女がこちらを見て笑いかけた。無論、目と目が合う瞬間に何ちゃらかんちゃら、である。俺の頬が紅潮するのがよく分かった。ここに来て初めての正統派なヒロイン登場と言う感じである。ライトノベルの定番と言うか暗黙のルールと言うか、もし本当に俺のような主人公位置がヒロインと結ばれることになるのであれば。

 願わくば、この残念少女らなどではなくああいったマトモなヒロインと結ばれたい物である。あるいは、雅でも良い。大変恐れ多いのはあるがやはりルナとアリシア、ルチアとは違った雰囲気がある。

 そして、その願いが叶うのではと言う状況下に俺は置かれる。何と、彼女がこちらへ笑みながら歩いてくるのだ。俺は体中が熱くなる。汗だって溢れ出てくる。

「どうしたのぉ、悠人ぉ。」

ルナに聞かれて、俺は

「いや、アンジェルネさんが近付いてくるから。」

「あぁ、アンジェルネさんね。彼女も結構やるものね。ま、当然私には及ばないけど、それでも迫ってくる勢いなのよ、あの子。天才である私が言うんだから説得力は抜群だよね、悠人?」

うん、ナルシストであるお前が言うんだから説得力は皆無だよね、アリシア?通常時ならそんなキレの良い突っ込みを覚える所だが、何せ状況が状況である。

 俺はそれさえ放棄し、アンジェルネさんに釘付けになってしまっていた。迫るアンジェルネさんはやがて俺の隣に腰を掛けた。まさかの展開。これが、待ちに待った主人公補正なのではと思ったが、やはりその通りだったようだ。

 「貴方が魔王軍幹部を2体も倒したって噂の新嶋悠人君?勿論、仲間のお陰っていうのもあるけど、どっちにしろそんな人材を味方に付けられるなんてやっぱ凄いよね。」

上目遣いでこちらを見つめるアンジェルネさん、いや女神様と言った方が近い。いつも冷静な方の俺はつい有頂天になり、

「そ、それ程でもありますよ。」

丸っきり天狗になってるのが自分でも分かる。

「ねぇ、私も貴方の仲間に入れてくれないかしら。」

 「勿論です。」

他の仲間に考える暇など与えなかった。即答だった。ギルドカードが見えしまったのだが、この人は本当に凄いらしい。ならば、入れ損は無い。皆も何とか納得してくれ、俺たちは早速カウンターへ。そこで手続きを済ませ、正式に彼女は俺たちの仲間となった。こうなると、うちの残念少女たちは彼女を際立たせるための変わり種。これで、気に障ることは無くなる。

 ここに来て初めて至福の極み。不幸な俺にだってそんな物があるんだなと感じていた。だが、それも長くは続かなかった。いや、元からそんな物が幻想だったと思い知る。

 例えるなら、バブルのように。あの大インフレは度を超してしまっていた。需要が高まり過ぎて、物価は高騰。元々存在しない価値までどんどん追加されていった。人々の気分も高ぶるばかりで、だがある時それは暴落。すなわち、バブル崩壊。直前の大インフレが巨大だった分、それが一気にデフレへ傾いた時の影響も巨大である。しかも、経済に文教、あるいは人の精神までその対象は様々だ。

 束の間に起こったそれはまさにそれと似ていた。先の至福が今大の不幸として返ってきた。数学風に言うなら現状はバブル崩壊に相似する、現状∽バブル崩壊である。自分でもこればかりは何言ってるのか分からなくなってしまうが。


 その日、俺は訳も分からないまま、プロスペレの騎士団に逮捕された。逮捕に必要な書類はしっかりとある。裁判所が出すと言う礼状、それよりは軽いものの公正な手続きが孕んでいるのは見た感じで分かる。何せこの町は完全な君主制では無い。どちらかと言えば立憲君主制に近い。日本とかの曖昧な物では無く、真の立憲君主制だ。

 確かに主権は長。立法、司法、行政のその全権を彼が担う。だが、そんな彼でも先代が作り上げた掟、その名の鉄壁の壁の前にはどうしようもない。この町において長は掟のみに縛られる。それは長に有利な物から不利な物までピンからキリ。

 次に告訴状を見せつけられた俺は2つ驚いた。1つ、性犯罪と言う俺には掛け離れているはずの罪状。確かに、あの日の風呂突入は性犯罪者っぽかったかもしれない。だが、訴えたのはあの残念少女たちでは無かった。つまり、これが冤罪であることは火を見るより明らかだ。

 ここでもう1つ。告訴状の一番下にあるプロスペレ領主『ゾーナ・アルベド・プロスペレ』の署名。その上には何処か優しい、でも何処か単調な筆跡で署名があった。そこは告訴者の署名欄。見覚えのあるその字自体が俺に残酷な事実を訴えかけているようだった。

 そこにはただその名前だけがあった。1人の女の、それも知り合いの名が。


『アリア・ルビー・アンジェルネ』


と。

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