#58 3人目の魔剣持ちが現れた件
俺たちは反射的に目を瞑る。だが、奴等は俺たちに指一本も触れることがなかった。その際、シャキィィィッッッン!シャキィィィン!シャキィィィッッッン!そんな音が聞こえ、恐る恐るめを開けるとそこには驚きの光景があった。
なんと、5体の狼、その全てが地面に倒れ伏していたのである。よく見ると、死体の至る所に深い傷が出来ており、そこから血がドクドク流れ出していた。俺は吐き気を催しながらも、周囲を見渡した。一体誰がこんなにも一瞬にして奴等を倒したのか。
その答えはすぐに分かった。右手の先、そこに白く輝く剣を奮う、黒の女騎士。その目は黒く、ルナ、アリシア、ルチアのような外国人系の瞳では無い。勇者熊谷和人のような日本人系の瞳であった。そして、髪は長く肩まで伸びた栗毛である。
「あの人誰だろうぅ?」
「悔しいけど、あの人凄く美人ね。ま、私の方が上だけど。」
「年下だったら良いですね。」
確かに、美人である。しかし、こっちの3人も同じぐらいの美貌がお持ちのはずである。なのに、何で性格がこんなんなのだろうか。ったく、3人の残念美少女に囲まれるのって俺お得意の不幸と言う物なのか?それとも、逆に幸か?俺はそこが疑問のまま、彼女に話し掛けた。
「助けてくれてありがとうございます。」
俺が丁重に礼を言う。すると、彼女は最後の狼を斬り、
「私は当然のことをいたしただけですわ。」
と答えた。騎士に似合わぬ、御嬢様言葉!そして、模範的!俺は胸の内でそんな言葉を投げなげつつ、
「つかぬことをお聞きしますが、そ、その剣は?」
御嬢様言葉を使っているから、高貴な方に思えたのだろうか。少しぎこちなくなってしまった。それに、彼女は答えた。
「こちらの剣はダーインスレイブと言いますの。世界に5つあると言わる魔剣の1つでございますわ。」
と。それを聞いて、2つのことに驚く。まず、彼女が魔剣持ちであることに。そして、この世界に魔剣が5つあるということに。そんな様子を見て、ルナは
「その5つの魔剣ってのはねぇ、レーヴァテイン、グラム、ダーインスレイブ、フルンティング、カラドボルグのことなんだよぉ。」
どうやらと言うか、何故かと言うか、こういったことにはルナがかなり詳しいらしい。自惚れかもしれないが、ここで今までの不幸が幸となって還ってきたのかもしれない。だって、これで俺の知る魔剣持ちはエミール、熊谷和人、彼女の3人。何か困ったことがあればその内の誰かに頼めばいい。
そこで、俺は早速、彼女と親しくなることにする。まず、誰何から。
「お名前はなんと言うんですか?」
と聞くと、彼女は
「雅百合華と申しますわ。」
名前まで日本人系、そして、御嬢様系であった。俺は自分も名乗り、ルナたちも名乗りを挙げた後、こう聞いた。
「ひょっとして転生者だったりしますか?」
と。すると、雅さんが頷いたではないか。
「はい。私は日本という国より来ましたの。もしかして、悠人くんも?」
いきなり下の名前に君付けすかっ!まぁ、良いけど。
「はい。」
雅さんのその質問に少し間を空け俺は頷く。それを見て、彼女は手を差し伸べて来た。
「これから宜しくお願いいたしますわ、皆様。」
そう言われて、俺は少し戸惑いながらも、その手を握り握手を交わす。そんなのが、ルナに、アリシアに、ルチアにと繰り返された。そして、俺たちはアリシアの「テレポート」でギルドに戻り、クエストの報酬をGET。それから、彼女をパーティーに入れる手続きを済ませた。
こうして、俺たちのパーティーに新たな魔剣持ちの仲間が加わった。物理攻撃に対するはルナ、魔法攻撃はアリシア、回復はルチア、斬撃は雅、打撃は主に俺。このパーティーも中々賑わい、バランスも安定してきたようだ。




