#57 5体の巨狼が一斉に襲い掛かってきた件
結局、その日の夜は宴モード。俺は酒臭い荒くれ者たちの隣りで、「あわぐも」を飲みまくり、それに乗ってアリシアも「あわぐも」の入ったジョッキに手を伸ばしていた。それを見てルナは、それを取り上げて一気に飲み干した。
「ああ、私の酒がぁ...。」
「子供はお酒飲んじゃだめだよぉ、アリシアぁ。」
「私は子供じゃないわよ。天才である私に助けてやったんだからいい加減報いたらどうなの?」
「助けてくれたのはルチアだけどぉ?」
「だから、それはぁ!」
全体的にルナが正しいが、この2人こんなことでいつも喧嘩するんだよな。持てると持たざるが共存することは不可能なんですか?俺はそう思いながらも、喧嘩を止めにかかる。
「全く男はなんでこんな贅肉の塊が好きなのかしら。」
「あらあらぁ、嫉妬してるぅ?」
「うるっさいわね。これ、天才である私に頂戴なさい!」
アリシアがフォークを伸ばし、ルナの白身魚を一部ホロリと落とし、口の中へと入れる。その瞬間、ルナが暗い顔になる。ん?首を傾げると、彼女は世にも恐ろしい声でこう言ったのだ。
「ねぇ、アリシアぁ。食べ物の恨みがどれだけ怖いか...知ってるぅ?」
さらに、怖過ぎる作り笑い。そう言うのはよく聞くけど、そこまで怒ることか?そんなことを思っていると、
「一応言っておくけどねぇ、私にとって食べ物は命と同じくらい大切な物なんだからねぇ。」
お、俺の心を読んだ!?
それから、ルナはアリシアはギルドの裏へ。俺は酒を最後の一滴まで飲み干し、ギルドの壁に隠れて彼女たちを覗いた。すると、なんと言うことでしょう。アリシアを棒に縛り付け、ルナが説教をしているではありませんか。なんじゃこりゃ?ルナは窃盗罪やら裁判沙汰やら何やら言ってるが、これは明らかに刑が執行される直前、つまり、裁判の後の様子である。俺は空気を読むのを放棄し、その刑執行直前へと乱入。
「お前ら、あんまり夜遅くまで遊んで、明日起きられなかったりすんなよ。」
俺ははたまた空気を読めない言葉を残し、向かいにある予約済みの宿へと入っていた。
「遊んでるわけじゃないよぉ、悠人ぉ。」
その際、ルナの声が聞こえたが聞こえない振りをした。
そして、次の日。鳥の囀ずりで目を覚ました俺は隣のベッドを見た。そこには、アリシアと向き合って寝るルナと、そのふくよかな胸に踞って寝るアリシア。
「これが、『喧嘩するほど仲が良い』とか『雨降って地固まる』って奴?」
俺は思わずそう呟いた。
やがて、その2人が起き、ルチアも起きると、俺たちは支度を済ませ、チェックアウトをして、宿を出た。何やら、さっきからルチアがアリシアに羨ましげな視線を向けいている。おそらく、アリシアがルナと一緒に寝ていたのが妬ましいのだろうが、俺はルナ、アリシア共に華麗に無視。
「アリシア!『テレポート』を頼む。」
俺が言うと、アリシアは頷き、詠唱する。
「『テレポート』っ!」
その言葉と共に足下に白い魔法陣。続いて、俺たちを白光が包み込み、それが消えれば、もうプロスペレの門の前。これで、クエストの報酬だって貰えるし、しかも、リヴィエラとプロスペレ間を簡単に行き来できるようになった。俺たちはその喜びに見舞われつつ、門を潜り、ギルドの中へ。
と、見えてくるのは歓迎ムードの冒険者たち。荒くれ者は酒を飲み交わし、他の者は拍手喝采。その中央にはカウンターの人。俺たちはそこへ行くと、彼女は
「お帰りなさいませ、一行樣。そして、魔王軍幹部討伐おめでとうございます。リヴィエラにて既に報酬を受け取り、その半分をまた復興のために寄付なさったと聞いております。」
その言葉の後、盛大な拍手。俺は照れ臭くて、
「あ、はい。」
とぎこちない返事を返し、クエストの報酬10000コルドを受け取り、さらに新たなクエストに挑戦。それはミドルウルフ10匹を倒すと言う物。報酬は8000コルド。
手続きを済ませた後、俺たちはそのミドルウルフがいると言う場所へ。すると、すぐに奴等の群れに出会し、戦闘が勃発する。俺は
「『スマッシュ』っ!」
と唱え、1体殴り飛ばし、突進にはルナが「ディスポーズ」で押し返し、アリシアは
「『マルチファイア』っ!」
と唱え、焼き払う。さらに、ルチアはメイスを振り回して、奴等を吹っ飛ばしていく。そんな中、群れの内1体が
「アオォォォッッッ!」
遠吠えをした。
それでも、俺たちは戦闘を続行し、ミドルウルフたちにダメージを与えまくった。やがて、ドシーン!ドシーン!ドシーン!と地が大きく揺れ始める。俺たちはそこで初めて手を止め、その音の正体を知れば、戦闘続行を深く後悔した。
その正体とはなんと巨大な狼。それが、5体もおり、その目力と巨体、銀に輝く鬣が圧巻の威圧と威厳を醸し出している。俺にアリシアにルチアには武器に手をかけつつも、思わず硬直。ルナもこれに同じく。それを見て、奴等は
「グオォォォッッッ!」
「グオォォォッッッ!」
「グオォォォッッッ!」
「グオォォォッッッ!」
「グオォォォッッッ!」
と一斉に彷徨。その凄まじい音は強大な音エネルギーを産み出し、強風を吹き荒らさせる。俺たちは何とか踏ん張るが、大怪我を負うのが、最悪死ぬのが遅れただけなのかもしれない。
なんと、奴等はその巨体にも関わらず、高く飛び上がり、上から一斉にのしかかろうとしてきたのだ。魔王軍幹部をあっさり倒した俺たちにも流石にこれは絶体絶命の危機であった。




