#56 ミノタウロスの肉が美味すぎた件
どうやら、封印が解除したばかりでミノタウロスは真の力を取り戻していなかったようだ。そのお陰で、昔は勇者が必死をこいてやっと封印した奴も、こうもあっさりと倒すことが出来たのであった。
「『テレポーテーションゲート』っ!」
奴の死体を見つめる俺の横でアリシアがそう唱える。すると、その杖先にゲートが現れたかと思うと、白く輝き、それが止むとそのゲートの向こうにギルドが見える。その中へ、アリシアが入っていき、ギルドの役員をたくさん連れてきた。ゾロゾロゾロゾロゾロ...。ゲートのあちらからどんどん屈強そうな人達が横切っていく。その目はギンギラと光り、その片手には青く照り輝く短剣。
「さ、殺伐とした雰囲気だ。」
俺はその様子に少し恐怖を感じた。
そして、彼らはその短剣を使い、ミノタウロスの死体の皮を剥ぎ、さらに、肉へと短剣を進め、薄く裂いていく。そこから血がダラダラ垂れてていて正直気持ち悪かったが、ひたすら肉を引き裂く返り血まみれの男たち。彼らへの恐怖の方が勝った。
「こ、これが肉狩りの現場か...。」
俺は後ろに引きつつ、体を大きく震わせる。ホント怖い!
そんなこんなで、ミノタウロスの肉は全て裂かれ、草原の上に溢れんばかりの牛肉が積み重なる。よく見てみると、その肉には白い網目が指している。
「し、霜降?霜降がこんなに?マジヤバくね?」
全く何がヤバいのだろうか。我ながら疑問である。よく若者が使う「マジヤバくね」。こんな語彙力の欠片もない言葉が万能だなんて、本当に不思議である。俺はその内に入る自分のことなど棚に上げて物申した。
と、そんなことをしている内に、たくさんの肉がゲートを通ってギルドへ運ばれていく。ゾロゾロゾロゾロゾロ...。再び目に見えるギルド役員の長蛇。その手の上にはたくさんの霜降牛が乗っている。霜降牛の山に注目すれば下からどんどん肉が無くなっていき、あっと言う間にそこに肉の山など無くなってしまった。て言うか、ギルド役員ってあんなにいるもんなんだな。俺はそんな考え方をしつつも、他の冒険者たちとともに、ゲートを通って、ギルドへと戻った。
さて、今回の襲撃。それはリヴィエラの町に大きな被害をもたらした。死者は数千、負傷者も数千、内重傷が過半数。倒壊した棟は数万にも及ぶ。
「では、これが魔王軍討伐の報酬の500万コルドだ。」
そんな中、俺たちパーティーに500万コルドもの報酬が明け渡されていた。だが、俺のやることは変わらない。ルナもいくらビッチとは言えどお金大好きではない。アリシア、ルチアに関しては申し分無い。俺は、
「では、その半分をください。あとの250万は慰霊費や町の復興に使います。」
カウンターの人は、
「いや、遠慮しなくて、全部貰っていい。」
「いえいえ、冒険者はコツコツ貯めて大金を稼ぐものですから、良いんです。それに、俺たちはお金のために倒したんじゃありません。」
俺はそう言う。それを聞いて、
「す、素晴らしいぃぃぃっっっ!」
とカウンターの人。と、次の瞬間。周囲から溢れる賞賛と盛大な拍手。その中、俺たちは半分の250万コルドを頂き、早速山分けに掛かる。とは言え、それぞれ62万5000コルドずつと言う1:1:1:1の超平等山分けなのだが。対立と合意は完全クリア、効率と公正も完全クリア。
俺たちはその一部を使って、真っ先に霜降牛のせご飯をみんなで頼む。霜降牛は高級らしいがあんなに大量にあっては安くなってしまう。一部は死に行いた人たちへのお供え物に、さらに一部は負傷者のお見舞い用に。それでも、かなりの量が余ってしまったのである。そんな消費を助けるというのもあるが、もちろん一番の目的は霜降を食べたいから。普通に、焼いた物や牛鍋的な物もあった。だから、俺たちは牛のせご飯、おそらく、牛丼を頼んだのであった。
そして、それが運ばれてきた。やはり、牛丼と似た物のようだ。俺は箸で牛ごとご飯を口に入れる。すると、口の中に牛肉自体の旨味と霜降の油の旨味が広がる。その奥にご飯の甘味が眠り、それらが絶妙なハーモニーを奏でた。見ると、ルナもアリシアもルチアも美味しそうに食べている。その様子に吊られたのか、他の客もそれを頼み始め、全員がガツガツと口に入れ始めた。
「お代わり!」
ルナがお椀を掲げ、そう大声を挙げる。その分、嵩は増すが彼女には関係などないようだ。牛丼が運ばれてくると、彼女はすぐさま食らいつき、はたまた、
「お代わり!」
そんなことを幾度が繰り返し、結局彼女は6杯もの牛丼をペロッと平らげてしまった。胃の中ブラックホールかよ!俺が彼女に思うのはそれだけであった。




