#55 やはり科学の力は偉大だった件
ドシィィィッッッン!ドシィィィッッッン!ドシンッ!と、足音が聞こえた。それから間もなく、大きく赤い足。
「へ?」
俺は小首を傾げる。
と、その次の瞬間、バリィィィッッッン!ギルドのガラス戸が勢いよく蹴り上げられた。
「ギャァァァァァッッッッッ!」
俺は大きな声で叫ぶ。ギルドの皆さん、すみません!俺の幸運指数が低いせいですぅっ!俺は心の内でそう謝りつつ、ルナ、アリシア、ルチアを連れ、真っ先に戦闘体勢に入る。それに次いで、ギルドのみんなも戦闘体勢に入る。
バゴォォォッッッン!その瞬間、壁に亀裂が走り、それが崩れてゆく。すると、見えてくるのは大斧を振り回す、赤肌のミノタウロス。
「ブモォォォォォッッッッッ!」
と咆哮し、走ってこちらに向かってきた。
「『ラージテレポート』っ!」
と、そこでアリシアが前に出て、そう唱える。すると、床に巨大な白い魔法陣。それがまばゆく光った後、ミノタウロスを含め全てが町の外へと転移した。そこは、潮風に草の揺れる草原。と、
「ブモォォォォォッッッッッ!」
再び、ミノタウロスの咆哮。その後、奴は辺りをキョロキョロと見回す。あいつ、ここがどこか把握出来てないのか!?
ドゴゴゴゴゴ...!そのしばし後。どうやらここが何処か把握できたらしく、奴はこちらへ一直線。
「『マルチシャインシュート』っっっ!」
そこへ、アリシアの詠唱。それと共に、杖先から無数の輝く球体が現れ、奴に目掛けて打ち出された。それらは全て奴に命中。突進は阻止され、しかも奴は大きく怯んだ。
「『コズミックオーブ』っ!」
「『ファイアアロー』っ!」
「『ライトニングサンダー』っ!」
後ろからの詠唱とともに、空をエネルギー球や火の矢、電撃、その他諸々が飛び交う。さらに、その中、猪突猛進する戦士。その手には剣や斧が握られている。だが、怯むミノタウロスもかなり適格にその大きな斧を振り回し、その腹や腕、脚に打ち付ける。それを受けた戦士たちの傷口からは大量の血が吹き出し、次々と倒れていった。やはり、魔王軍の幹部は侮れないようである。
アリシアは魔法を放ち続け、俺とルナは立ち止まる。ルチアはこちらへ退避してきた負傷者を他の神官と共に治癒魔法を掛けている。
「私も参戦しなきゃ駄目だよねぇ。」
と、ルナが奴に向かって走り出す。
「おい、待てっ!いくらお前の『ディスポーズ』でも、1人で突っ込むのは!」
俺は彼女を止めようとするが、彼女は前へ前へと進むばかり。仕方がないな。俺はそう思いて、自らも突進をけしかけようとした。
だが、その前にカウンターの人が走り出し、ルナと横に並んだ。そして、奴の前。奴が斧を振り下ろすとルナが、
「『ディスポーズ』っ!」
と唱え、斧を一瞬止める。だが、
「きゃぁ!」
とルナが弾かれる。
「ルナ!」
俺が叫ぶと、アリシアも気付いたようで、攻撃の手を止めて、「『スプリットテレポート』っっっ!」
と唱えて、彼女をこちらへ転移させる。そこへ、神官たちが詰め寄り、治癒魔法を掛ける。その腹は服ごと縦に引き裂かれ、その傷口から血がドクドク流れる。どうやら、かなり危なかったらしい。半分アリシアのファインプレーのお陰で彼女は助かったのである。アリシア、ナイス!
そのしばし前。ルナが弾かれたちょうどその頃。
「おりゃぁぁぁっっっ!」
共に突進したカウンターの人が奴の足を巨大な太刀で斬り裂いた。すると、奴は膝をつく。それでも、奴はすぐに立ち上がり、彼を倒そうと斧を振る。だが、そこには既にその姿は無く、見ると、こちらに転移していた。
そこで、俺はあることを思い付く。
「おい、アリシア!大量の強酸をぶっかける魔法とかないか?」
とアリシアに聞く。すると、
「『スーパーアシッド』とか『スーパーアシッドボム』とかっていうのがあるけど。」
と返ってきた。俺は、
「その『スーパーアシッドボム』っていのをあの斧に頼む!」
「わかったわ。『スーパーアシッドボム』っ!」
俺の声の後、アリシアはそれを詠唱する。すると、酸の固まりが高速で斧にぶつかる。すると、その酸が大爆発を起こし、それを受けた斧は急速に溶け始め、その赤い肌が爛れる。それを見て、俺は
「科学の偉大さを思い知れ!『マルチファィア』っ!」
と詠唱。現れた炎弾は高速で斧の上へと行き、そこで爆発が起こった。先の酸の爆発ではない。斧が酸に溶かされたことにより生まれた水素。燃える気体の爆発である。
アリシアの放った強酸。どうやらその強さが故、大量の水素が発生していたようでその爆発はかなり強大な物であった。それを受けてミノタウロスは再び大きく怯む。やっぱり、科学って偉大だな。科学と魔術が合わさったらもう最強だと思うんだが。そんなことを考えつつ、俺はアリシアに
「奴の足元に転移させてくれ!」
と叫ぶ。すると、彼女は
「『テレポート』っ!」
その瞬間、俺は奴の足下に転移。そんな俺は
「『フリップキック』っ!」
と足に向かって回転蹴り。すると、その足がすくわれ、奥へと勢いやく倒れた。だが、奴はすぐに起きようとするだろう。俺は
「『スマッシュ』っっっ!」
その股に目掛けて一発。すると、奴の動きが止まった。おそらく、痛みに耐え兼ねないのだろう。俺はそれを見て、
「今だ、アリシア!俺はそっちへ転移させて、『バーニングブラスト』をっ!」
俺はその場で大きな声で叫ぶ。すると、すぐに俺はアリシアの元へと転移。どうやら、「スプリットテレポート」を唱えたようである。ナイス!
そして、アリシアは奴に杖を向け、詠唱を開始。
「現に住まいし、全ての炎精よ...。今こそ1つに集いて、爆焔となりてここに顕現し、魔を討ち滅ぼしたまえ!」
聞き覚えのある言葉に、一部の改変。俺はミノタウロスの真上を見覚えのある炎の球体が現れた。
「『バーニングブラスト』っっっっっ!」
草原中に響く声。それと共に空中の球体は倒れるミノタウロスへ激突。ドゴォォォォォッッッッッン!木々をも揺らす轟音と光輝く爆炎がミノタウロスの体は弾け飛んだ。




