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#53 ギルドの人の話に引っ掛かりがあった件

 牛様の襲撃の少し前。俺たちが海水浴していた海岸ではリヴァイアサンの光線が空を貫き、重厚な鎧を纏う戦士たちの剣筋が空を裂いていた。その筋の合間に魔法攻撃が放たれる。

 ドゴォォォッッッン!ギィィィッッッン!バババババンッ!と四方から八方へ様々な音が空を交い、少しずつ少しずつリヴァイアサンが倒れていく。前衛班の鎧戦士たちが負傷すれば後ろの回復術師大神官が「パーフェクトヒール」を唱え、その傷を即座に癒す。一方、後衛班の大魔法使いは大神官の力は借りず、不発攻撃で負傷すれば「ヒール」で回復、魔力切れで動きで鈍れば「マジックチャージ」で空気中から魔力を補充。

 「伏せてください!」

と、後衛から前衛への警告。それに合わせて戦士たちが地面に伏せる。それを確認した大魔法使いたちは一斉に唱えた。

「『コズミックオーブ』!」

と。すると、その杖先に青白いエネルギー球が生み、大きな反動を以ってして、その球が奴等の首へと一直線。それが、そこへ着弾すると共にドゴォォォッッッン!そのエネルギー球が驚異的な爆発を起こした。そんな爆発の寸前。後ろの大神官が唱えた「セイクリッドシールド」により聖なる光を帯びた障壁が彼らを囲んだ。そのお陰で戦士側は無傷、リヴァイアサンは大ダメージ。奴等は次々と倒れていった。

 だが、全く減っていないようである。

「クソッ!このままじゃ拉致があかないぞ!」

1人の戦士がそう言いつつ、剣を奮う。

「一体どこから召喚されているのよ、こいつら!?」

1人の大魔法使いもそう言いつつ、「ブレイズ」を唱え杖先から火炎を放つ。これには、より落ち着きより遠くから戦況を把握できた大神官たちの方が上であった。

 白い修道服に胸の辺りまで垂れ下がった長い金髪。エメラルドグリーンの瞳。そんな彼女が遠くの島を指差しこう言ったのだ。

「あそこの島、つまりクレーター島から来ているのではないでしゃうか。召喚には安定した地が必須です。リヴァイアサンは水上へ召喚する必要もありますし、あそこまで完全に操るには範囲が決まっています。その全てを兼ね備えるのはあそこだけです。見たところ、リヴァイアサンはあの島の正反対を向いているようですし。」

「そうか、あの島か...。クレーター島。確かあそこにはミノタウロスが封印されているんだっけか。」

戦士が言う。

 それから、戦士たちは水を走れる蜥蜴ウォーターランをたくさん召喚し、その上に戦士が乗り込む。さらに、大魔法使い、大神官から5人ずつ彼らを選抜し、別のウォーターランへとその10人を乗せる。その中には、先の金髪大神官も含まれていた。

 そして、彼らはリヴァイアサンを倒しつつ、ウォーターランに乗せられて、クレーター島へと前進を始めたのであった。


 と、一方、その頃。街ではあの牛様が暴れるわ暴れるわ。蹴られたのか血を吹きながこっちへ吹っ飛ぶ者に、その場で踏み潰される者、奴の持つ斧に突き刺さって横へ払われる者。たくさんの死者が出る中、人々の長蛇が逆流し、今度は海岸へと流れ始めた。

 そんな中、俺たちも逆に流されるが、何とか人混みを掻き分け掻き分け長蛇から抜け出し、何とかギルドへと戻ってきた。俺はその扉を開け、カウンターの元へと。奥を見ると数十の人々が固まって籠っている。俺は先にルナたちをそこへ行かせ、カウンターの人に告げる。

「赤い肌をした牛が現れたんですが...。」

 その瞬間、カウンターの人の顔色が豹変する。さらに、

「それは本当か!?」

と迫ってくる。俺が頷くと、

「何と言うことだ。つまり、クレーター島の封印が解けたことになるのだな。」

と彼。

「封印?」

相槌を打てば、彼は

「あぁ。」

そう答え、その封印についてご教授いただいた。

 「その牛はミノタウロスと言う。奴は魔王軍の幹部の1人でな。数十年前も奴はこの町を襲ったのだ。だが、何処からともなく魔剣持ちの勇者が現れてな。その勇者が奴との戦いの末、封印を施したのだ。その封印の地があのクレーター島。だが、その封印は相当強固な物だと言う話だ。それを解けるとなれば数は限られる。そう、かの勇者と同一の力を持つ者のみにな。」

あの牛はやはりミノタウロスらしい。だが、そんなことなど忘れられるほど、俺には何やら引っ掛かる物があった。魔剣持ちの勇者、それと同一の力を持つ者、封印の地はクレーター島。言葉の断片と己の記憶。それが、俺の脳内でパズルのピースのように組み合わさっていき、やがて1つの結論はと繋がる。今回の事件の元凶はクレーター島に用があると言ったエミールでは無いか、と。まさかとは思ったが、一応筋は通っているはずである。

 「じゃぁ、エミールみたいなのがまだいるってことぉ!?その子が元凶なのぉ?」

と、いつの間にかルナが横にいた。その言葉を聞いて、俺は自らの考えを見直してみた。いくら筋が通るだけであって、全て憶測である。故に、犯人がエミールだと決め付けることなど出来ない。それは状況証拠にしかならず、そんなものがいくらあっても、裁判所からは令状は出ない。第一、折角改心してくれた彼を容易に疑うなど間違っている。俺だって彼を信じたい。

 結局、俺は自らの憶測を頭の隅へと一応置いておく程度となった。例え筋が通っていても、例えそれが間違いだったとしても俺は最後までエミールを信じることにしたのである。

 もちろん、今の俺たちにこの事件の裏で何が起こっているのかなど知るよしも無かったのだが。

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