#51 海水浴に青の大蛇の大群が乱入した件
手紙を片手に町を歩くこと、約1時間。俺たちは棒のように硬くパンパンになった足を、痛みに耐えながら無理矢理にでも動かし、館の前まで来た。
「何やつ!?」
すると、そこの門番が竹刀でXを描き、そう怒鳴ってきた。
「ひっ!」
ルチアが一歩引く。俺は
「プロスペレよりリヴィエラ領主様へ手紙を届けに参りました。」
としっかりと相手の顔を見、丁寧な言葉遣いを以って手紙を差し出した。すると、門番2人の顔はすぐ穏やかになり、
「失礼した。我々が渡しておこう。ここまでご苦労だったな。」
と手紙を受け取ってくれた。
これにて、クエスト自体は終了。だが、帰るまでが遠足、登山の後には下山が待っている。プロスペレに無事帰り、報酬を貰ってからこそこのクエストは終わりを迎える。とは言え、アリシアの「テレポート」で一発なのだが。俺はそんなことを思いながら、約束通りビーチで海水浴のために水着屋へと足を踏み入れた。
ん?水着選びって何とも思わない人と行く所だっけ!?俺は少し困惑しながらも、レディースとは反対のメンズコーナーでごくごく普通の海パンを手に取った。そこで、水着を持つアリシアとルチアにあった。アリシアのは膨らみのある黒いフリルに白のライン、ルチアのは海柄の淡青色に白色のビキニ。相変わらず、アリシアのは似合わないなぁ。相変わらず、ルチアのは似合いそうだなぁ。俺はその水着を横目にそんなことを思いながら、購入を済ませた。と、そこで1人いないことに気付く。
「て、ルナは?」
俺が同じく購入を済ませたアリシアとルチアに聞く。アリシアは答えなかったが、ルチアは扉の方を指差して答えた。
「なんかさっき、『私は裸で行くから水着は買わなくていいよぉ』って言ってました。店の横で待っていると思います。」
その言葉を聞いて、俺は急いで店を出た。すると、そこには何やら夢見心地のルナがいた。
「おい、ルナ...。」
「裸でビーチに行ったら捕まるのかなぁ。」
「ルナ。」
「やっぱ、捕まるよねぇ。」
怒りで全身が震える。俺は大きな声で
「ルナっ!」
と叫んだ。すると、やっと我に返ったようで、
「えっ、何ぃ!?悠人、もう水着は決めたのぉ?」
俺は買った水着を見せながら、
「あぁ、買ったよ。それよりな...お前、本当に裸で海水浴行くつもりじゃないだろうな。」
と聞いてみると、
「海水浴ごときになんで水着が必要なのかなぁ?お風呂と同じでしょぉ?お風呂で水着なんて着ないでしょぉ?」
とルナ。ダメだこの子、海と風呂の区別が付いてない!
「まぁまぁそう言うのは良いから、水着は着ようね!」
と言って無理矢理水着屋へ押し込んだ。その様子が必死だったから、ルナはため息をつきながら、メンズコーナーへと...って、えっ?俺は店の扉を明け、メンズの水着を取ろうとしてるルナの服の襟を掴んで引き摺り、レディースコーナーへと放った。
「隠すのは下だけで良いでしょぉ?」
本当にダメだこの子、自分の性別まで区別出来てない。俺は本気で哀れになりながらも店を出た。
そして、ルナが買ってきた水着は純白の水着。今流行りの全然似合わないスタイルである。
「こんな露出の少ない水着なんて着ても男なんて釣れっこないよぉ。悠人は本当にケチだねぇ。」
それぐらいの露出が普通なのだが、この空間ではその普通が通用しないらしい。そんな俺たちは店の横に隣接された男女別の更衣室で着替えた後、アリシアの「テレポート」でギルドの近くにあるビーチへと瞬間移動した。
俺が海パンで海へ突っ込み、後ろの3人も同時に突っ込む。俺は浜から浅瀬の海を泳ぎ、他の女子3人衆は浜辺で微笑ましい水の掛け合いっをする。その後ろを、俺はクロールでシャトルスイム。時々、
「天才である私に水をかけるなんて言語道断よ!」
バシャバシャッ!
「良くもやりましたね!」
バシャバシャッ!
「私にぶっかけて良いのは白いのだけだかれらね!」
バシャバシャッ!
水が飛沫く合間に時折、雑音が聞こえるが、微笑ましさに障ることはなかった。クロールのし過ぎで疲れ果てた俺はシャトルスイムをやめ、浜辺まで最後の力を振り絞ってクロール。彼女たちを横切り、足が浜に着くようになると俺は立ち上がり、近くにあった木陰で休憩を取った。
それから、しばらくのこと。水の掛け合いに参加していたはずのアリシアが急に手を止め、海を見つめ始めた。ルナやルチアが水を掛けてもかなり反応が薄い。俺は何事かと思って木陰から日向へと出、浜へと急いだ。
「『スプリットテレポート』っ!」
すると、アリシアが唱え、小さな白い魔方陣を3人それぞれの下に出現させた。その魔方陣は同時に白く光ったかと思うと、すぐに消え、浜へと彼女たちは瞬間移動していた。
「な、何ぃ?」
「どうなってるんですか?」
困惑する女2人に、
「何かいるわ!」
海を見つめる女1人、
「何かって何が?」
便乗して海を見つめる男1人。
「...!?」
そこで俺は確かに何かを見た。うねり蠢く太く大きく長い黒影。それが、俺がついさっきまで泳いでいた場所に数十も見える。これは、定番の触手系モンスターですか?などと、思ったのも束の間。
「触手系モンスターだぁ。じっくり見てみたいなぁ。」
顔を火照らせ、スキップをしながらこちらへ来るルナの姿。俺は手を横に広げた。あら危ない♪頭を下げればぶつかりません♪俺は心の内でボケつつも、ルナが来れば、小さな声で
「『スマッシュ』。」
と唱え、そのまま、手を後ろへ。すると、ルナは
「あぁぁぁれぇぇぇ?」
と言いつつ、鼻血を巻いて後ろへと倒れた。一応、手加減はしておいた。
「危ない、危ない。もう少しであっちへ行く所だった。まあ、今手加減しなかった、別の意味であっちへ行ってたかもしれないけど...。」
俺はそう呟いた。
ザバババババーン!ザッパーン!その時。幾つもの飛沫があちこちを跳ね上がり、あちこちで空を舞い、あちこちに落ちて波紋を作った。見ると、あの黒影の正体がこちらを見つめている。それは、触手系モンスターでは無く、青い鎧て覆われた大蛇たちの大群であった。




