#50 彼女たちが遠征の目的を忘れかけていた件
あれから約5日。俺たちはリヴィエラの町に到着した。その途中、4回火を焚き、テントを張って野宿をした。エミールは俺たちを守ってくれ、道中に危険は無く、俺たちが戦闘に携わる必要もほとんどなく楽に野を越え、山を越え、森を抜けることが出来たのである。
そそり立つ壁にある大きな門。そこを磯の香りを乗せた風が吹き抜け、髪を揺らす。俺たちはその心地よい風を生身に感じながら、門を潜った。すると、見えて来たのはタイルで敷き詰められた建物の峰々に潮風に吹かれて回る風車、そして漁師たち。あちこちに魚の直売店や屋台、レストランが見られ、遠くの方には石で作られた灯台がそびえ立っている。
俺たちはそんな町中を道に沿って進み、案内マップを頼りに町の中央から少し外れたところにあるギルドまで行った。
「らっしゃい!仕事はカウンター、食事は席でお願いしまっせ。」
魚屋の店主みたいな口調で1人の巨漢がそう言った。だが、特に受けるクエストは無く、お腹も空いている。そこで、俺たちは席に座りメニューを見た。押し寿司に海鮮丼、ペスカトーレと魚介料理が多く流石港町と言う感じであった。それに、そのほとんどがあっちの世界でも見たことのある料理でとても親しみを持ちやすかった。
そして、俺はその中から魚の塩焼きを選び、ご飯と一緒に「あわぐも」を頼んだ。アリシア、ルチア、エミールも俺と同じぐらいの量であった。
尋常では無かったのはルナだけで、なんと、彼女はシーフードカレーにペスカトーレ、さらにフィッシュウィンナー盛り合わせまで買ったのだ。それにはエミールまでが驚いていた。しかも、それをペロッと平らげでしまうのである。そんなに食べても太らず胸だけが大きいってさ、栄養が胸にしか行かない病気なんじゃないか?俺はそんな不謹慎なことを思いながら、魚の塩焼きを口の中へ放っていった。
「この町、ビーチがあるらしいよぉ。」
食事の後、そう言い出したのはルナである。それに反応して、ルチアが興奮気味に
「本当ですか!?」
と食い付く。全くあんたは思春期真っ盛りの男の子ですか。俺は自分のことなど棚に上げて、胸の内でそうツッコミを入れた。続いて、アリシア。
「じゃぁ、今から水着買いにいこうよ。」
だが、俺はそれに反対であった。いや、別に水着を買うなと言う訳ではない。もちろん、下着で遊べと言う訳でも、裸で遊べと言う訳でもない。
「おい、お前ら。ここに来た目的忘れんじゃないぞ。領主に手紙を渡すっていうクエストをクリアするだめだ。ビーチで遊ぶのはその後だ。」
まさに、それである。別に俺たちは遊ぶために来たのでは無い。ルナにアリシア、ルチアまでもが怪訝そんな顔をしてみせるが、そんな顔をしても無駄である。
「ほら、行くぞ。」
俺は3人に告げた。その言葉に彼女たちはやはり怪訝そうな顔を見せるが、着いてきてはくれた。この際、
「では、俺はクレーター島に向かう。ルーナたちを頼んだぞ。」
「おうよ。」
そんな短いやり取りの後、エミールは去っていった。
こうして、俺は3人を連れ、街道を進み、遠くに見渡すあの館を領主の館を目指した。その片手にはプロスペレから運んできた手紙がしっかりと、それでいて優しく握られていた。




