#49 美男のアイツが遠征に着いてきた件
出発から少し進んだ先の森の中。ガサガサと言う音と共に何者かの気配を後ろに感じ、俺はそっちへ振り向いた。だが、そのひ誰もおず、ただ顔に涼しい森の風が吹きつけるだけであった。
「どうしたのぉ?悠人ぉ?」
ルナが聞いてきたので、俺は
「いや、今何かの気配を感じてな。気のせいかも知れないが。」
と答える。すると、アリシアが顔を青くして、ブルブル震え始めた。
「や、やめてよ、悠人。こんな昼間から。」
ん?それは、人に怯えているのか?それとも、お化けか?いや、多分お化けだな。俺は
「大丈夫だ。こんな昼間からお化け何ているわけない。」
と落ち着かせようと思ったのだが、効果は微塵もなかった。
「この世界に絶対なんて言葉はないわ!そんな先入観に囚われているから下民は私のような天才になれないのよ!」
おお!これが傲慢のスペシャリスト、アリシア様の有り難い御言葉か!いやぁ、本当に有り難いなぁ。俺は心の中でそんなボケというかツッコミというかをしつつ、正直、そんな言葉などとうでも良いので、俺は無視し、
「ルナ。今はどこら辺にいるんだ?」
と聞いた。
「無視しないでよ!ねぇ、悠人!ルーナもちょっと待ってよ!」
アリシアが何やら騒いでいる。俺もルナも彼女を華麗に無視し、現在地の確認を行った。
「『イビルシュート』っ!」
と、後ろからの詠唱。聞き覚えのある声と身に覚えのあるスキルであった。俺は腰を捻って後ろを向き、
「『マルチロック』っ!」
と大岩を落とし、それで攻撃を防いだ。その岩は一瞬にして塵と化すが黒い物は消えていた。巻き上がる砂塵。それを突き破り、魔剣を持つ黒影がこちらへ突っ込んで来た。俺は後ろへと飛び、
「ルナ!」
と叫ぶ。それを聞いたルナは俺の前へと現われ、左掌を前へ。
「『ディスポーズ』!」
その後の詠唱とともに魔剣は弾かれた。黒影は剣の柄をしっかりと握り、回転しながら少し先の地面へと着地した。やがて、砂塵が止むと、その影が正体を現した。そいつは思っていた通り、エミールであった。
「また、お前か...。今度は何のようだ?また、ルナを懸けて勝負するか?」
俺は皆の前へと立ち、彼に聞く。だが、その口から出た言葉は意外なものであった。
「リヴィエラの町へ徒歩で行くそうだな。だが、中途の道には危険な怪物が出るかもしれん。そこで、俺が護衛役を務めようと思ったが、構わんか?」
まさか、エミールの口から断りを入れる言葉が出てくるとは思わなかった。この前のように害悪ナルシストではないようだ。
「そうだな。正直、レベル10の俺とこのメンツじゃめっちゃ心細いと思ってたからな。才能のあるお前が入ってくれれば、少しはそれが和らぐ。プロスペレへ戻るまで護衛を頼めるか?」
と俺は手を差し伸べた。それに、エミールは答え、その手を握った。これにて、契約成立。俺たちの遠征に着いてくることとなった。
「で、どうしてまた急に?」
ルナたちと共に歩きながら俺はエミールに聞く。すると、
「俺もリヴィエラの町に用があってな。まぁ、用があるのは町の近くのクレーター島に用があるのだがな。」
とエミール。なるほど、目的地が同じだったのか。俺は納得した後、今度は
「で、ルナのことは本当にもう良いのか。あと1回だけチャンスを上げてもいいが。俺、あの時、あんなかっこつけてたけど、要は自分だけが土下座するのが嫌だっただけなんだ。正直、ルナはいれば戦いが楽になるからって欲しかっただけなんだ。」
とエミールに言う。だが、エミールはこう返したのである。
「いや、遠慮しておこう。男に二言は無いものだ。」
「おぉ、かぁっくいぃ!」
その返事に、俺はそう茶化したやった。これは、あの時、怪我を負わされた腹いせではあるが、内心、俺はエミールを見直しつつあった。




