#44 俺たちが豪邸を手に入れてしまった件
やがて、エミールは目を覚ました。
「...?」
彼は寝起きだからか目をパチクリさせている。
「おい、エミール。」
俺は話しかける。すると、彼は
「何だ、この三下!俺のルーナを返してもらうぞ!」
どうやら、まだ自分が負けたことが分かってないようだ。
「おい、エミール。お前は負けたんだぞ。良い加減自覚しろよ。」
俺はそう言ってやる。
「あ、有り得ない!この俺がお前のような三下に負けるはずが無い!」
だが、エミールは負けを認めない。仕方無いな。俺はため息1つの後、離れた所に居るルーナたちを連れて来た。
「勝ってたのはエミールじゃなくて、悠人だったよぉ。」
「悠人を三下とは聞き捨てならないわね。悠人は天才である私も認める男よ!そういうセリフを吐くあんたこそ三下じゃないかしら。それに、私は見たのよ!悠人が勝つところを!天才である私が見逃すはずが無いわ!」
「悠人が勝っていました。間違いありません。」
もちろん、3人とも俺の勝利を証言している。エミールは少し驚いた様子を見せたが、
「嘘つけ!そこの3人を錯乱スキルでマリオネットにしたんだろ!」
この負け犬、吠えすぎだろ。俺はそう思いながら、ギルドカードを見せてやった。もちりん、そこには錯乱スキルなどは無い。
「う、嘘だろ...。この俺が!この俺が...!」
エミールは絶望の顔を見せた。そんな彼に俺は教えてやる。
「おい、エミール。お前は自分の才能に酔っているようだが、お前は別に強くなど無いぞ。そんな奴、弱者でも頭を使えば打ち負かせるんだ。真の強者は戦略を立てる者と知るんだな。」
と。だが、そんなことなどうでま良いようである。彼が一番気掛かりだったのは勝負の後の"アレ"である。
「おい、お前。ルーナを諦めるのは良いが土下座もしなければいけないのか?」
その時のエミールの顔はまさに絶望と言う感じであった。おっと、土下座の約束、忘れる所だった。危ない、危ない。俺は、
「ありがとうな、エミール。完全に忘れてた。」
と言う。
「ま、まさか、言わなければルーナを諦めるだけで良かったのか!?」
彼の絶望の顔はまだ消えない。俺は、
「そうだな。じゃぁ、土下座してもらおうか。」
と言う。
「この俺が人族ごときに土下座をするなど...。」
エミールが小声でボヤく。だが、あまりにも小声だったので俺にはボソボソとしか聞こえず、
「どうした、エミール?」
と問う。すると、彼は
「いや、何でもない。」
と首を横に振った。何かを誤魔化しているようにも見えたが、俺はそれを無視し、土下座を強いた。
それはそれは見事な土下座であった。額を地面に擦り付け、両手をハの字にする、奥ゆかしささえ感じる、大変美しい土下座であった。その様子を見ていると、流石に自らの良心が咎め、俺は
「まあ、頭上げろよ。」
と言ってしまった。彼は言われた通り、頭を上げるがこの日から彼は俺を嫌う態度を時折見せるようになった。自分が勝手に勝負を挑み、勝手に負けただけではあったが。
そして、それから数日。ギルドから少し行った所にある魔道具店へとお邪魔した。そこは、ダークエルフ族のシルヴィアさんが店長をしており、在り来たりな物から珍しい物まで様々な魔道具が揃っているのである。俺がこの店を知ったのはルナに紹介されてからってあった。
「おお、何だこれ。」
俺は端の棚に大事に置かれた水晶に目を向けていた。それを聞いて、シルヴィアさんがやって来て、
「おお、お目が高い!それは、出来の良い水晶でして、水晶での町として有名なアドリアで作られた水晶なんですよ!」
と目を輝かせながら言ってきた。
「あの町って水晶でも有名なのか。」
いつの頃か、その町を上から眺めた頃のことを思い出しながら、俺は言う。
「はい!」
シルヴィアさんの勢いは止まらない。
俺は取り合えずシルヴィアさんを落ち着かせてから、他の賞品を見に行った。と、そこで店の扉が開かれ、1人の老爺が入ってきた。彼は、
「シルヴィアさんはいますか!?」
とかなり慌てた様子で声を張る。すると、シルヴィアさんは
「いますが。」
「助けてください、お願いします!私、何もしてないのに憲兵だとか言われる方々に追われているんです!」
その人はそう叫ぶ。シルヴィアさんは、
「疑いたくはありませんが、一応嘘発券機で見ておきますね。」
と言って、レストランの呼び出しベルのような物を持ってきて、老爺にさっきと同じことを言って貰った。たが、ベルは何の反応も示さず。
「どうやら本当のようですの。では、店の奥へ行ってください。」
と言って、彼を店の奥へと行かせた。
「大変申し訳ございませんが、皆さんはお帰りください。」
シルヴィアさんはそう言う。初めは協力するつもりだったのだが、シルヴィアさんは強いと聞いたし、厄介事に巻き込まれるのは御免である。俺は、
「さあ、行くぞ。」
と言って、3人を連れ、外へと出た。
と、そこへその憲兵とやらがちょうどやって来た。
「おい!そこの4人!変なジジィを見なかったか!?」
「ちょっ、おまっ...!」
そんな憲兵らの乱雑な言葉に俺は物申そうとするが、アリシアが片手を横に遮られらた。
「悠人、私に任せて。」
彼女は俺は制しつつ、耳打ちをしてくる。俺は少し嫌な予感がしたものの、言われた通り、彼女に任せることにした。
「そこの憲兵!あんたたちは3つの過ちを犯したわ!」
そして、案の定、この様である。俺は思わず、呆れのため息を付いた。
「は?」
もちろんあっちはこの反応である。だが、彼女はそんなこともお構い無しに、
「1つは無実の者を犯罪者としたこと!2つは乱雑な言葉を使ったこと!そして、3つは天才大魔法使いアリシアに喧嘩を売ったことよ!」
彼女の言ってることに間違いは無い。だが、自分で天才と言ってしまうのが痛い所である。
「何を吐かす!我々憲兵に歯向かうとは!第一、お前の方こそ乱雑な言葉を使っているではないか!」
いや、だからってお前らが言えることでも無いだろ。
「もう良い!撃てぇっ!」
えっ!?驚く暇もほとんど無く辺りに銃声が響いた。アリシアは
「『アイスウォール』っ!」
と唱えた。すると、俺たちの前に大きな氷の壁が現れ、弾を全て弾いた後、砕け散った。その際、ルーナが
「『アスポート』っ!」
唱え、銃を何処かへやってしまった。
「憲兵!これを見なさい!」
武器が無くなり戸惑う憲兵たち。そんな彼らにトドメの一撃、グリモワ領主一族の証であるペンダントを見せたのである。それを見た瞬間、憲兵たちの顔色は変化し、
「数々の御無礼申し訳ございませんでした!」
と急に土下座を始めたのである。結果、俺たちは彼らから慰謝料50000コルドを取り上げてしまった。それはさっきの老爺に渡してやった。
すると、老爺は言った。
「ありがとうございます!御礼にいらなくなった私の別荘を貴殿方に格安で売りましょう!悪霊は住み着いていますが、建物はちゃんとしておりますので。」
と。その言葉に俺は引き付けられた。別に毎日宿泊代を払って宿で住むと言うのもありなのだが、安く家をもらえるのなら良いだろう。俺はそのお言葉に甘え、元値80万コルドで本来値切っても30万だと言う物件を10万まで割引、さらにそこから渡した5万コルドを差し引き払うのは5万コルドに収まった。俺たちは割り勘でそれを払い、老爺から別荘を買うことに成功した。
「えっっっーーーーー!?」
そして、その次の日、俺たちはその別荘の前へ。俺はその豪邸さを見て、お祭り男のような声を上げてしまった。果たしてそこで新嶋が目にしたものとは!?で、ある。




