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#43 持たざる者が知恵で対抗した件

 ギィィィィィン!!金属と金属が激突する凄まじい音がした。俺の剣はエミールの一閃で勢いよく後ろへ弾かれた。その剣はは回転しながらしばらく飛び、少し後ろの地面を深く抉った。

 「へ?」

俺は地面に突き刺さった自らの剣を横目に、目を大きく見開く。さっきの一閃はいたって普通の一閃であった。手応えもあまり感じなかった。なのに、あの威力である。ヤバイ、本当にヤバイ。俺、飛んでも無い奴を敵に回しちまったよ!そんな俺が相当情けない顔になっていることなど、自覚しないはずもなかった。さらに、エミールはその俺を

「フハハハハハ...!才能の差を思い知ったか、悠人よ!ヒーロー気取りなどする分際で、俺のルーナを寝取ろうとするからこうなるのだ!悔い改めろぉ!!」

と嘲笑してくる。

 しかし、それは誤りである。確かに、俺とエミールには才能の格差が激しい。あえて分かりにくく例えるとEU加盟国間の経済格差ぐらいの激しさである。だが、それが敗北に繋がるとは思えない。だって、人間は考えることが出来る。弱い者ほど自らの力に依存せず考えることで強くなる。一方、ああいう才能があるからと言って、ルナを自分の女と決め付け、しかも、俺を悪者扱いするような類い稀なる害悪ナルシストは自らの力に依存している傾向にある。

 持たざる物の知恵って物を思い知らせてやるか。俺の結論はもちろん"ソレ"である。

「ハハハハハ...!」

エミールの奴、まだ嘲笑ってやがるな。取り合えず、あいつをこちらに帰還させよう。俺は、彼に手を翳し

「『マルチファイア』っ!」

と覚え立てのスキルを発動。すると、火の玉が5つほどエミールに向かって飛んでいった。

 ドゴドゴドッゴッーン!その玉はエミールの少し手前で爆発した。その際、日光に反射したいくつもの剣筋が目に見えた。それを見ながら、俺は後ろに突き刺さる剣を抜き、鞘に収める。そして、エミールは何と無傷である。不意打ちだったのに防がれた!?てか、火の玉剣で斬ってたくね!?俺の目が大きく見開く。結果また笑われる。

 それでも、攻撃はやめるわけにはいかない。

「『マルチアイス』っ!」

手を翳して唱えてみれば、飛んでいくは氷の礫。それを、エミールが剣で粉砕。

「『マルチロック』っ!」

続いて、唱えてみれば、落ちるは大岩。それを、エミールが剣一振りで全て粉砕。

 その時、俺は何が起こったのがわからなかった。エミールの一閃が大岩に当たる様子は見えなかった。だが、岩はボロボロである。厨二風に言うと不可視斬撃ブラインド・スラッシャーみたいな?見えない斬撃って奴?少し小首を傾げていると、今度は地面を"何か"が進んで来た。俺はその"何か"から紙一重で何とか逃れることが出来た。

 後ろを見ると、一直線上に地面が抉れ、細かくなった草が散らばっている。今気付いたが、足には浅くはあるが沢山の切り傷が出来ている。今のも見えない斬撃!?威力が半端無さそうだぞ!?これが才能の差と言う物か。まあ、知恵で勝負すればそんなことなど関係ないが、一応注意はした方が良さそうだな。そう思いながら、俺は剣を抜き、エミールに突っ込んだ。

 「無駄な足掻きを!おりゃぁぁぁっっっ!」

エミールが剣を横凪ぎに。すると、草を斬り裂きながら、見えない斬撃が飛んで来た。俺はそれをジャンプでかわす。足に少し深めの切り傷が出来ただけで突進の妨げになることは無い。続いて、縦振り。それに伴い生まれた見えない斬撃を俺は横へ行ってかわす。

 そんな風にかわし続けながら、突進。その最中、俺は

「『マルチアイス』っ!」

と唱え、氷の礫を飛ばす。すると、思った通り、エミールはそれを砕きに行った。そこで僅かなラグか生まれる。そりゃそうだ。いくら強者でも、同時に2つのことをすることは出来ない。

 バリィィィッッッン!パラパラパラ...。氷が砕け落ちた瞬間、俺は剣を振る。エミールはそれを剣で防御。だが、推進力の加わった俺の力に耐えきれず少し後ろへ下がる。

「おりゃぁぁぁっっっ!」

防御の構えからの一閃。二の舞を踏まずと俺は後退。片手にはしっかりと剣が握られている。

「『イビルシュート』っ!」

エミールの次の詠唱により、高速で黒い何かが撃ち出された。それは俺の首筋を掠り、広い範囲に擦過傷が生じた。もちろん、かわす余裕は無く、今は運が良かっただけ。あそこで俺の不幸が発動していれば死んでいたであろう。

 それでも、俺のやることは変わらないがな!俺はまた剣を片手に前へ進む、進む。飛んでくる見えない斬撃は的確にかわし、さらに前へ。

「クソがっ!」

剣筋がX字型となる。おそらく、見えない斬撃が来るだろう。だが、安全地帯が見え見えである。俺はXの下を潜るようにスライディング。切り傷が全身に出来たがまだ浅い。

 「『プロテイン』っ!」

俺はそう唱えて、スライディングの状態から、首跳ね起き。体育は好きだったので、形は完璧。地面を押す力は『プロテイン』で増強。結果、見事成功。見ると、エミールが目を見開いている。立場の逆転来たこれ!ざまぁ!

 俺は心でエミールを嘲笑うも、有頂天になり過ぎず、彼の前まで行き、突きを繰り出そうとする。彼はそれを防ごうとする。だが、それはダミーである。俺はそのまま剣を離す。彼の集中は作戦通りそちらへ向く。その隙を逃さず、俺は右に拳を作り出し、

「『スマッシュ』っっっ!」

違う方向からの「スマッシュ」。それも剣により防がれてしまうが、それは第1の刃である。俺は他と一緒に増強された左手に拳を作り、剣の持ち手の根を殴る。この左手拳が第2の刃。その瞬間、グギッ!と痛々しい音がした。

 「ぐっ...!?」

その声とともにエミールの剣を握る力が弱まった。俺はもう一度「スマッシュ」を唱え、拳を使って剣を上へ。

「なっ...!?」

再び、驚愕の表情。俺はあからさまにほくそ笑みながら、

「『フロントキック』っっっ!」

と肋の辺りへ一蹴りを入れる。すると、彼はかなり後ろへ飛ばされる。

 「よっと。」

それから俺は上から落ちて来た魔剣グラムを手に取り、肋をやられ苦痛に耐え兼ねずにいるエミールの目の前へ。

「お、おい、やめろ!やめてくれ!」

彼は懇願してくるが、今更命乞いなど遅すぎる。

「サヨウナラ!」

若干の悪意混じりの言葉。それとともにグラムの側面を彼の頭に叩きつける。

 すると、エミールは凄い勢いで地面に激突し、即気絶。それを確認した俺はグラムを放り捨て、地面に投げた自らの剣を鞘へ。こうして、見事持たざる者は持てる者に知恵を以ちて勝利を得たのであった。

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