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#40 領主の娘が仲間になってしまった件

 「さぁて、悠人のスマホも取り戻せたことだし、この町のギルドにでも行くかぁ。」

そんなルナの提案に、俺は

「そうだな。行くか。」

と言う。グリモワは魔法使いの町。大魔法使いと言われる魔法使いの中で最も上級の職業があるらしいが、そんなものはこの町においては珍しくとも何とも無い。故に、ギルドに行けば尚更、大魔法使いを見つけやすいのである。

 俺たちは馬車に乗って、そのギルドの前まで。そして、敷地へと入り込み、扉を開けた。すると、まず見えてきたのは優雅にコーヒーやカクテルを口に入れる上品な方々。プロスペレのギルドのような荒くれた様子は微塵も無く、とても落ち着いている。さらに、カウンターの人以外に店の人は見当たらず、飲食物は抜群の安定感で、俺たちの頭上でレールの上を交っている。まるで、唐栗屋敷のような風貌である。

 「すごいな、これ。」

「これ、全部魔道具だねぇ、多分。さすが、グリモワぁ。」

2人して関心しながら、前へ前へと歩く。と、ゴンッ!俺は壁に激突。右にいたルナは

「大丈夫ぅ?」

相変わらずの不運。これ、持たざる者たち以上のコンプレックスなんじゃないか?そんな気持ちで俺は壁を避け、カウンターまで行った。

 「依頼書を書きたいんですが。」

俺はカウンターの人に言う。すると、その人は

「りょ~。これに依頼主の名前と依頼内容、印刷内容とかを書いといて~。とりま終わったら教えてね~。」

とダルそうに返してくる。何なのだろう。この場違いな喋り方はこの上品な空間には合わないんじゃ?そうは思いながらも、俺は必要事項を渡された紙に書く。ちなみに、依頼は求人募集である。

 そして、書き終わる。俺が

「終わりました。」

と言うと、

「りょ~。じゃぁ、手数料150コルド頂きま~す。」

と返される。続いて、俺はその150コルドを出す。すると、

「あざっ~す。ちょいま~。」

またダルそうに返された。

 それから、しばし後、印刷した羊皮紙を持ってきて、

「これでおk?」

と聞かれたので、俺は

「は...はい。」

と答える。すると、その人は掲示板にその羊皮紙を貼って戻ってきた。

「ご利用あざした~。」

結局、最後までブレないカウンターの人であった。

 俺もルナも希望者なんてそんなにすぐには来ないだろうと思っていた。何故なら、この町で魔法使いのいないパーティーは見捨てられる運命だと2人して思っていたからだ。だが、それは無造作にも杞憂に終わってしまった。

 「求人募集の貼り紙見させて貰ったわ。私が仲間になって上げるわ。」

そんな声が聞こえ、俺はその方を見る。そこにいたのは胸を張る魔法使い姿の少女。髪は黒く、瞳は紅い。また、長髪で、とてもサラサラとしているように見える。だが、胸に至ってはかなり寂しい。

 「誰?」

と俺が聞くと、少女は名乗った。

「私はアリシア・ローズ・グリモワール。世界一美しいこの町の領主の娘よ。」

「おっぱいも世界一小さいぃ。」

おい、止めたれよ!このクソビッチ!

「それは関係ないわよ!黙りなさいよ、この贅肉の固まり!」

良いぞ、もっと言ってやれ。

「羨ましいんだねぇ、わかるよぉ?」

ルナも引く気は無いようだ。

 これは収拾がつかなさそうだな。そう思った俺は、

「まあまあ。」

と2人を宥め、次にアリシアに聞いた。

「ところで、仲間になってくれるって?」

と言うと、彼女は

「ええ。私がいれば、百人力、いや、千人力?それとも、万人力かな?いや、それも違うわな。えっーと...?」

俺は目を細めながら考えに更ける彼女を見つめる。こいつ、もしかしてナルシストって奴か?さっきも思ったけどさ。見た感じ、歳は14とか15とかそこら辺なんだが...。

 「そう!兆人力よ!」

はい、ナルシ確定。大体兆人力って何だよ。それ、今作ったの?

「最強の大魔法使いのである私がいれば、兆人力よ!」

少し黙ってろ、ナルシスト。これで、横のビッチと同じ扱いである。

「ねぇ。胸張って言ってるつもりだろうけど、張るには自己主張が足りなさ過ぎるよぉ?その慎ましいおっぱいぃ。」

ルナがアリシアの胸を指差しながら、嘲笑って見せる。

「何をっー!?」

良いぞ、ルナ。もっと言ってやれ。その瞬間、完全に立場が逆転した。

 アリシアその人は超絶ナルシスト。とは言え、領主の娘であることと、大魔法使いであることは本当らしい。大魔法使いを仲間に入れることがあの依頼の真の目的であったので、俺たちはカウンターまで行き、パーティー登録を済ませてしまった。もちろん、その時、またカウンターの人のダラダラ言葉に付き合わされている。

 こうして、領主の娘にして大魔法使いのアリシアが新たに仲間に加わった。ビッチの次はナルシスト。まともな奴なんて1人もいない。強いて言えば、唯一自分がまともな奴なのだろうが、これは明らかに不幸である。

「不幸だ...。」

久しぶりのこの口癖。

「何がぁ?」

「何がよ?」

すると、2人が迫って来た。とっさに俺は

「何でも無いよ。ただの口癖だ。」

と嘘で誤魔化した。

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