#39 盗まれたスマホを取り戻そうとした件
ゴーン!ゴーン!ギィィィィィ...!暁鐘と共に目前の大きな門が独りでに開いた。どういった唐栗なのかは分からないが、おそらく高度で豊富な魔法技術を組み合わせているのだろう。
中に入るとまず見えてきたのは、三角帽子を被り、マントを羽織り、杖を携える人の数々。これ程までの「魔導都市」っぷりに、細部にまで美しさを感じる建築物の峰。そして、不思議な店の並び。空からは分からなかった"ソレ"が俺の目に一気に飛び込んできた。俺の目がキラキラと輝く。しかし、それはルナの発した言葉により、台無しとなる。
「ここって魔法技術の最前線なんだよねぇ。理論上、魔法は自在に作れるらしいから、将来またお世話になるかもねぇ。私、生きている内に、幻の脱衣魔法『ヌード』を完成させるのが夢なんだぁ。」
「俺は死んでもお前を黙らせるのが夢だよ。」
「それは、命を奪うって黙らせるって意味かなぁ?それとも、唇を奪って黙らせるって意味かなぁ?」
「前者に決まってんだろ。」
「えぇ!?うそぉ!?悠人のことだからてっきり、『後者に決まってんだろ』とか『ちなみに奪う唇は下の方だぜ』とか言うのかと思ってた。」
「ホント黙れ。」
そんな微笑ましさ皆無の会話をしながらも、俺たちは2人人混みを掻き分け、掻き分け、噴水のある拓けた場所まで来た。そこで俺はルナの取り出したテレパスストーンのレーダーを起動し、座標を表示した。
どれが俺のスマホなのかは直ぐに分かった。青い点と青い点の間をぬって動く赤い点。一際目立つその点はやがて止まり1箇所に止まった。地図と照らし合わせて見れば、そこは町の外れ。しかも、今日のルナの目利きはとても精度が高く、かなり場所が絞られている。
俺たちはその町の外れまで、舟と徒歩で行く。範囲内は比較的、建物も少ない。俺たちは路地裏など外れの隅から隅までを探し、その末、「ツリーサイド」と言う喫茶店でついに俺のスマホを見つけた。
敵は2人。どうやら既にスマホの使い方は学習しているらしく、ぎこちなくではあるが液晶の上で手を滑らせている。2人とも頬を紅潮させて興奮している所から見て、ろくなことをしてないのだろう。だが、今はそんなことなどどうでも良い。問題はスマホをどう取り戻すかである。
「私も手伝うよぉ?」
頭を抱える俺に向かってルナが言った。俺は考えるのを中断し、
「何か作戦でもあるのか?」
と聞いてみると、耳元で囁かれた。それを聞いて俺は思う。なるほど。要するに色仕掛けと言うことか。俺はともかくああいう連中にはそれが一番効果的なんだろうな。俺はその作戦を承諾し、店に入ってコーヒーを頼んだ。
そして、作戦結構。まず、ルナがテレパスストーンを片手に立ち上がり、続いて、俺も立ち上がった。それから、ルナは服の上部分のみを少しはだけ、いわゆる見えそうで見えないと言う状態で敵の前まで行った。
カタンッ!そこで、わざとらしくテレパスストーンを落とす。ルナは、
「あっ...。」
と言って、はだけた方を見せつけつつ、テレパスストーンに手を伸ばす。すると、作戦通り、敵は2人とも自然とそこに釘付けになら。
俺はその内に彼らの後ろへ忍び寄り、サッとスマホをポケットに入れて、スマホ奪還に成功する。それと共にテレパスストーンを拾い上げ、去っていった。
それから、しばし後。
「あの珍しいテレパスストーンがないぞ!」
「クソッ!もっと、早めに見て、売っておけば良かった!」
そんな嘆きを横耳に、俺たちはコーヒーを啜る。うん、美味い。
やがて、そのコーヒーも空になる。俺たちは代金の合計390コルドを割り勘で払った後、「ツリーサイド」を出た。そこで、俺は手伝ってくれたルナにお礼を言うことにした。
「お前のお陰で俺のスマホ取り返せたよ。ありがとな。」
すると、ルナは照れながら返してくる。
「そんなぁ...。私が体に抱えている爆弾がたまたま炸裂しただけだよ。」
謙遜するのかと思ったら、上手いこと言いやがったぞ、この子。山田くん、座布団2枚ルナに上げて。俺はスマイルポイントの司会のように心の中でそう言った。それって、つまりお前のダイナマイトボディーが威力を発揮したってことっしょ?ねぇ、ルナさん?




