#37 ルナのビッチが加速し始めた件
「で、どこにいるかわかるのか?」
俺はルナに言う。すると、彼女はコクリと頷きガッツポーズ。
「だから、私に任せてって言ったでしょぉ!?」
おー、頼もしいねぇ。
「何か宛でもあるのか?」
とさらに聞くと、彼女は口笛を吹き、目を泳がせ、
「あるに決まってる...でしょぉ?」
おいおい、一気に頼もしさが無くなったぞ。
「お前な...。」
俺は目を細める。
「見損なうのはまだ早いよぉ!」
いや、既にお前のこと見損なってますから。
「あっ!そう言えば、あの人、グリモワの服を着ていたよぉ!」
「それじゃ、証拠にならないよ。」
「グリモワ製の杖も持っていたよぉ!」
「それじゃ、証拠にならないよ。」
「それにそれに、グリモワ生まれの顔をしてたよぉ!」
「だから、それじゃ、証拠にならないよ。」
お互いの目と目を合わせ、しばし沈黙。「男女は数秒見つめ合うと恋に落ちる」とあっちでは良く言われていたが、あれはガセだったのだろう。だって、俺たちはその見つめ合う状況にあるのに、お互いに照れもしないのだから。
「ちょっと、今のは照れる所でしょぉっ!?」
ルナにそう言われるが、それはこっちの台詞だ。
「お前だって同じだろ!」
俺は言ってやる。
「はっ!」
「はっ!」
2つの声が重なる。この時、2人は不本意にも察してしまった。自分達はお互いに異性として見られないのだと。こいつとは絶対に結ばれるまい。
それから、俺は照れ隠しなどでは無く、話を切るために咳払いをし、
「で、もっと確たる証拠は無いのかよ。」
と聞く。すると、ルナは
「それが人に物を頼む態度かぁ!『無いのかよ』じゃなくて、『無いんですか』でしょぉ?」
このビッチ、面倒くせぇ...。
「確たる証拠は無いんですか?」
俺は引きつった表情で言う。
「わかったわよぉ。こうなったら、最終手段を使うわよぉ。」
そう言ってルナが取り出したのはテレパスストーン。
「それ使って何するの?」
俺はそのスマホ擬きを指差しながら、彼女に聞く。
「テレパスストーンにはレーダー機能があってねぇ。テレパスストーンから漏れる微量の魔力を点で表示してくれるんだぁ。それを手持ちの地図に照らし合わせれば良いんだよぉ!」
なるほどぉ...。こいつにしては知的なやり方だが、あれって魔力で動くものなのか?
そう思いつつも俺は、ルナにテレパスストーンを見せてもらう。液晶のような四角い光の中に、座標表示があり、青い点が散らばっている。その中に、赤い点が1つポツリとあった。それを、彼女がタッチすると、こんな文字が表示された。
e/r-r
番■*不×
魔▲□phu明
●録;@u
*標・○_4.*b1
「なんだろう、これぇ?エラーだってことは何となく分かるけどこんなの見たこと無いわぁ。」
ルナが小首を傾げる。これは、文字化けだな。こっちの世界ではスマホって得体の知れないテレパスストーンの一種ってことなのか。
「良く分からないけど、それが俺のじゃない?」
そう言うと、彼女は頷き、
「そっかぁ。座標は厳密には分からないし、だいたいで地図と照らし合わせらかぁ。」
と地図を出し、テレパスストーンとそれを交互に見る。
そして、地図を開き、グリモワの中央辺りにルナが指で円を描いた。そこか...。
「じゃぁ、行くよぉ!ほらぁ。」
俺が頷いたのを確認すると、地図とテレパスストーンを直し、そう言ってくる。俺は僅かでは無く確かな頼もしさを彼女に感じた。こりゃ、確実に病気にかかってしまったな。と、思いいつつ、俺は彼女と共に門を出た。
そこで、1つ思ったことがあったので、ルナに聞いてみる。
「なぁ、お前。今日、エミールとか何とか言う奴とここで待ち合わせしてなかったけ?」
「あっ、そう言えばそうだったねぇ。今思い出したわぁ。」
こ、この女...。やっぱりビッチだ!
「多分、グリモワまで半日ぐらいかかるぞ?グリモワまでなら1人で行けるし、戻っても良いぞ?そのエミール?が困るだろ。」
出来るだけ本音を相手に読まれないように言葉を選んで言った。その本音とは、「荷物を0にしたい」だ。どこぞのクズ主人公も驚きのクズっぷりである。
「良いよぉ、別にエミールなんてぇ。まぁ、いないよりはマシかなぁ?『枯れ木も山の賑わい』って知ってるぅ?」
もっとクズがここに!良く平気でそんな失礼な言い回しを出来るな、お前!人様に向かって「枯れ木も山の賑わい」って!
「お前やっぱビッチだな!」
と言ってやると、
「違うわよぉ!さっきのは確かに失礼だったけどさぁ。『女は待たせるな』とは良く言うけど、『男は待たせるな』とはあまり言わないでしょぉ!?」
「あっ、そうですねぇ...。」
俺は適当に返す。基準がおかしい!とんだクソビッチだな、お前は!
この日、ルナのビッチが加速を開始した。おそらく、ブレーキがかかることは一生無いだろう。




