#33 あのビッチと再び出会ってしまった件
俺は熊谷和人と別れを告げた。彼は鞘に収めた剣を杖代わりにヨロヨロ歩いていく。かなり危なっかしいが、俺には俺の目的がある。
ドワーフゾンビをちょうど5体を倒していた俺はプロスペレの森を出、プロスペレの町の門を潜り、町の中央へ。そこにある、ギルドの中に入り込んだ。
そらから、俺は今日も酒臭い荒くれ者と、今日も静かな中学生ぐらいの子供なの間をぬい、カウンターまで行って、ドワーフゾンビ討伐を証明するために剥いだゾンビ獣皮5枚を手渡した。討伐を証明する戦利品を見せればクエストは終了である。
「ゾンビ獣皮5枚確認しました。お疲れ様です。」
「あっ、はい。ありがとうごさいます。」
俺はお礼を言って、ギルドカードに書かれた項目に一通り目を通した。
新嶋悠人-Lv.2(残り25経験値)
RANK ≪E≫
≪ステータス≫
体力/160
生命力/160
魔力/110
筋力/130
知力/160
素早さ/120
器用さ/115
幸運/1
状態異常/なし
≪スキル≫
スキルポイント/17P
スマッシュ:魔力により瞬間的に筋力を増加させ、強烈な拳を繰り出す。
おお、Eランク!これで、茶色の判のクエストを受けられるぞ!さらに、スキルポイントが17も!これで、かなり余裕が出来て、そして、幸運は...相変わらずの1...か...。
「先にステータスを見ていれば良かった。」
俺は酷く後悔し、酷く落ち込んだ。カウンターの人が
「大丈夫ですよ!そもそも冒険者に幸運なんて必要ありませんから。」
と慰めてくれたのは有り難いが、フォローになっていない。俺が落ち込んでいるのは、幸運指数が1のままという事自体なのだから。それをフォローするなら、「他にも幸運指数1の人はいる」の方がマシである。
俺は上げてから下げられるという最悪な気分である。謂わば、逆ゲインロス効果により一層下がった気分。この時、ゲインロスは逆になれば相当辛いものなのだと確信した。
そして、そんな気落ちした状態のまま、俺はスキルの欄を見た。そこには、カウンターの人から教えてもらった「フロントキック」の他に「ファミリア」と言うスキルがいつのまにか登録されていた。俺は不思議に思って、カウンターの人に聞いてみた。
「これって、何ですか?」
そこを指差しながら、俺は聞く。すると、
「ああ、それは恐らくあなたの固有スキルですね。ランクE以上で特定の条件が揃ったら自動で登録されるんです。」
そう言って、奥から分厚い本を持ってきて、
「えっと...『ファミリア』、『ファミリア』...っと。」
と辞書を開く要領で、その「ファミリア」についてのページを開いた。
それによると、どうやらこの「ファミリア」は、今までに体験してきた全ての状態異常に、想像だけでなれるようになるスキルらしい。かなり珍しいらしく、過去100年間に1人しか同じ固有スキルを持つ者はいなかったらしい。
だが、いくら珍しくても今の俺には全く持って誰得である。なぜなら、俺が体験してきた状態異常はゴキブリ化、ピラニア化、アカガエル化、カナトカゲ化、カラス化のみ。一部の異常者(特にあいつとかあいつとかあいつとか)を除けばゴキブリは完全な嫌われ者。ピラニアやアカガエルは水が無いと生きていけない。さらに、トカゲは暑くても寒くても何も出来ない。それでも、カラスの使い道はありそうなので、とりあえずスキルを所得することにした。
すると、またあの不思議な感覚に襲われた。それと共に所得に作った15Pが17Pから引かれ、2Pに減った。だが、固有スキルを手にしても俺のテンションは少しも上がらなかった。俺は気落ちした気分のまま、ギルドを出た。
と、何やら騒がしい。あの巨乳な美少女に出会ったあの路地裏。聞こえてきたのは、聞き覚えの無い男声5つと聞き覚えの有る女声1つ。嫌な予感がして、冷や汗をかきながらもその路地裏へと入っていた。
すると、案の定、あの巨乳美少女その人が不良に絡まれていた。そして、ちょうど彼女が
「喜んで!」
と言って男と共にを路地裏を出る所であった。ヤベェよ、こいつ!モノホンのビッチだよぉ!少々どころか、かなり引きながらも俺は彼女を助けることにした。
俺はあの不良たちに危機感を抱いていた。連れはどうって事は無い。俺が言えることなのかは分からないが、強さはイマイチそうである。あんな奴らは「スマッシュ」でどうにかなる。だが、彼らのリーダー格のような男が見るからにヤバい。
凄みの有る吊り上がった目。立派な筋肉をテカらせる胴と四肢。意地悪そうな笑みと牙のように鋭い歯の並び。その奥に眠っていそうなゲスい心。そして、超○イヤ人のように逆立った金髪。要するに、筋肉変態野郎。明らかに強そうで、明らかにゲスそうである。
「『ファミリア』っ!」
まさかこんな早く使うことになるとは思っていなかった。俺はは自らの固有スキルを唱え、カラスへと変化した。そして、俺は風に乗りつつ、あのビッチを空から見守りながら、一行を追った。
これは女に頼まれた事では無い。自分が好きでやっている事である。この一件が終わって彼女から「小さな親切、大きなお世話」と言われるかもしれない。だが、それでも。だが、それでもお人好しと言われる俺には無視をすることなど出来なかったのである。




