#31 初クエストに超巨大な怪物が乱入した件
それから、手続きを済ませた俺は、驚きの消えないまま、ギルドを後にして、町を出た。向かう先は郊外にあるプロスペレの森。そこを奥へと奥へと進んだ先の町。今や廃棄と成り果てた、ドワーフの村である。
どうやら、前魔王の頃、魔王軍に襲われ、全滅してしまったらしい。この世界のドワーフは鍛治に優れており、武器屋の店主の言うリチャード・トムソン・マクドウェルに負けず劣らずの、良質な剣を作っていたと言う。
「って、ことはゾンビドワーフって、その怨霊みたいな物か?」
俺は少し身震いした。いよいよ、森に差し掛かり、本当に気温が下がったのかもしれない。しかも、有り得ない程に木が覆い茂っており、下の方の草花は太陽の光を浴びられず、枯れてしまっている物も多い。まだ昼間だと言うのに、フクロウの鳴き声がしたりとかなり不気味である。
「始まりの町郊外の森が何でこんな暗くて陰気臭い場所なんだよ。」
今にでも幽霊が出てきそうな、森の様子に俺はぼやいた。自分にあるのはペラペラの防具と短めの剣、接近戦を前提としたスキル。中学では体育の授業で剣道をやっていたので、何となく剣の扱い方は分かる。もちろん、剣道の剣術と真剣の剣術に違いはあるが、ゾンビドワーフは雑魚モンスターらしいし、それぐらいは大丈夫であろう。
「しっかし、本当に寒いなぁ。」
薄々リアルで気温が低いことに気付いていた俺は、鳥肌だらけの腕を擦る。それで、少しはましになったが、寒いことに代わりは無い。
「クッソ...まだなのかー?」
俺はまたぼやいた。
そして、ドワーフ村へとやっとこさ辿り着く。そこは聞いた通りの廃村であった。全壊の家、半壊の家、その中にちょくちょくある原型を止めた家。しかし、それらも壁は日々だらけで、剥げ落ちている部分も多い。そんな村の様子を見ていると、
「ブァ~...。」
後ろから唸り声がした。
俺は後ろを振り返る。と、そこにいたのは背が俺の半分程しかない小さな小さなゾンビであった。
「怖っ!」
だが、可愛さなど微塵も無い。赤く光る目に灰色の肌、ところどころ破けた服。背丈的には可愛くても、絵面的には恐怖なだけなのである。
「グガァー!」
そんなことを思っていると、そいつは飛び掛かってきた。俺は一瞬怯んでしまうが、すかさず立ち直る。剣を抜き、そのままそいつを横凪ぎにした。
「ブァ~...。」
「ブァ~...。」
「ブァ~...。」
「ブァ~...。」
「ブァ~...。」
さらに、5度の呻き声。見ると、気付かぬ内に俺は5体のドワーフゾンビ達に囲まれていた。
「げっ!?こいつら、知能あるんじゃないか!?て言うか、これ初級クエストの域超してるだろ、絶対!」
そんな訴えを述べえていると、5体は一斉に飛び掛かってきた。俺は縦に横に剣を振り、前と横の3体をあっさり倒すが、後ろの2体は対処できなかった。不可抗力である。
ガブガブガブ...!そいつらはいつかの俺のように、背中をかじってきた。これが地味に痛い。
「離れろ!離れろ!」
と言いながら、体は大きく揺らすのだが中々、離してくれそうもない。
めんどくさっ!こいつ、めんどくさっ!俺は心の中で愚痴を言いつつも、孫の手での要領で、剣を使ってドワーフゾンビを探す。そうやって、俺は1体を頭から刺して殺した。だが、残りの1体は背中のド真ん中におり、頭の向きも下らしい。
俺はそれを取り除くのに悪戦苦闘。だが、やがて、今までが嘘だったかのように、ドワーフゾンビは背中から離れ、そそこすと走り去っていた。そんな俺を1つの大きな影が包み込んだ。
「へっ?」
後ろを振り向いたその瞬間であった。超巨大な怪物が、同じく超巨大な棍棒を振り下ろしてきた。俺は慌てて前へ飛び退く。ドゴォォォォォン!と言う轟音とと共に地が揺れ、土煙が上がり、そこにはクレーターが出来る。
その攻撃を俺は紙一重でかわし、そのまま、しばらく地面を滑っていた。おかげで、擦り傷が出来るが、今はそれどころではない。超巨大な怪物は棍棒を振り上げ、次なる攻撃に移ってきた。
俺はすかさず立ち上がり、今来た道を町に向かって走る、走る。それを追う超巨大な怪物も片手の棍棒を振り回しながら、走る、走る。その度に地が揺れ、俺の足は痺れる痺れる。
「何で初級クエストにあんなヤバい奴が乱入してくるの~?」
俺は涙目になりながら、全速力で走る。走りながら、大きな叫び声も上げる。
「不幸だぁぁぁぁぁっっっっっ!」
そんな叫び声と言うより咆哮は、森中に響き渡り、わずかに木々の葉を揺らした。




