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#28 ある男に妙なプレッシャーを感じた件

 「いやー、思わずやらかしちゃったよー!よりにもよって、君を助けるなんてねー!」

その言い草にも腹が立つが、それよりも、俺は部屋にある4つの壁やら机やらを見て、呆然としていた。

 「あの...。」

俺はおずおずとペルセウスに話し掛ける。

「なんだいー?」

彼にそう聞かれ、俺は言う。

「なんか、飾り増えてませんか?ポスターやらフィギアやら装飾品やらが以前より多い気がするんですが。」

 「あぁ、下界で買ったんだよー。日本のメイトでねー。いやー、あそこは凄いよー!百合子ちゃんはもちろん、他にもアニメグッズが一杯あってさー。ちなみに、池袋本店だよー。」

いや、場所とかどうでも良いでしょ。そう心の中でツッコミを入れつつ、

「メイトって...。あなたって本当にオタクなんですね。」

俺は呆れのため息をつく。すると、ペルセウスは俺を指差し、

「そんなこと言う奴は普通、死刑だよー、死刑ー。まあ、僕は寛大だから許せるけどー!」

俺はその言葉に、またため息をたいた。

「あの、『能ある鷹は爪を隠す』って知ってますか?本当に寛大な人は自分で寛大なんて言わずに、謙虚でいるものですよ?」

 その瞬間、ペルセウスの目の色が変わった。

「ペーパー0の強酸に顔をぶちこむよー、君ー?」

俺は初めて彼に恐怖を覚えた。声もガチで、これ以上怒らせたら、本当にやってしまいそうな雰囲気がある。「ペーパー」ではなく「ペーハー」だ。それじゃ、phじゃなくてppだ。思わず、そんなツッコミを入れかけたがグッと押さえて、

「結構、恐いことおっしゃいますね...。ペーハー0って」

と言った。

「分かったら、無礼な振舞いをしないことだよー。」

明らかに彼は寛大などでは無い。あるいは、寛大と無慈悲の二重人格だ。そう俺は確信した。


 そらから、転生を終え、ゴギブリを殺してはピラニアとなり、ピラニアを殺してはアカガエルとなり、アカガエルを殺してはトカゲとなり、トカゲを殺してはカラスとなり、カラスの仲間であるスズメを殺して人間になった。

 俺はそんな大量殺戮(大袈裟)の末、再び人間へと上り詰めた。ポケットにはギルドカードが入っており、そらは自分の物で自分の名前とレベルにランク、ステータスなどが記されており、その全てが死ぬ前と同じであった。しかも、「スマッシュ」と言うと拳に魔力が集まった。どうやら、死ぬ前と何ら変わりは無いようだ。

 俺は町の中央まで歩いていき、ギルドの扉を開けた。そこには、ジョッキを片手に酒を飲み交わす男たちがいた。既に酔い潰れた者もいれば、

「ウィスキー持ってこーい!」

「ビールだ!ビール!」

「いやいや、ウォッカだー!」

とガヤガヤ注文する者もいる。本当に騒々しい宴である。

 しかし、そんな宴もその男たちが俺に気付いた途端に、静けさを取り戻した。しばらくの沈黙。その後、それを突き破るような怒号がギルド中に轟いた。

 「変な服の新人が生きていたぞー!」

いかにも荒くれ者という感じのほぼ半裸の男のその言葉を期に、

「うぉぉぉぉぉっっっっっ!」

と言う声が響いたのである。よく見てみると、酔い潰れた者たちまでもが、震えながら右手を宙に掲げ、親指を立てている。

 俺はそのノリに従うしかなかった。あっちでは法律上の問題で20歳まではお酒を飲めなかったが、こっちではそんな法律は存在しない。思う存分、お酒が飲める(一応17歳以下はダメということにはなっている)。だが、俺はまだ甘酒しか飲んだことがない、いわば、お酒の初心者。いきなりウィスキーやらウォッカやらはハードルは高い。俺はメニュー表からアルコール控えめの炭酸酒「リカーソーダ」、通称「あわぐも」を頼んだ。

 そして、その「あわぐも」は本当にアルコール分の少ない酒であった。それに、炭酸で割っているのでとても飲みやすい。俺は1杯、2杯、3杯と飲み干していった。しかし、いくらアルコール分が少ないとは言え、6、7杯辺りになると酔いが現れ始めた。しかも、そんな時に限って呼び出しがあった。

 俺は少しの目眩を感じながらもしっかりとした足取りで呼び出しを下したカウンターの人の後ろをゆっくりついていった。そして、その先で聞いた言葉に俺は思わず声をあげる。

 「えぇぇぇぇぇっっっっっ!?」

「はい。ケンタウロス討伐及び魔王軍幹部打倒の賞金として10万コルドの賞金が出ております。もう少し多くお渡ししたいのですが、何せこんなちっぽけな町のギルドなのでそれが限界なんです。申し訳ありません。」

丁寧に謝ってくれたが、わざわざ謝る必要は無いだろう。俺は、

「いえいえ大丈夫ですよ。」

と言っておいた。それを聞いてた彼女は

「ありがとございます。」

と飛び切りの笑顔を見せる。俺は頬が赤くなるのを感じた。

 「で、配分の方なのですが、貴方に半分の5万コルドを差し上げた後、残りの5万の方は戦闘に携わった者たちへの感謝と、戦闘により亡くなった方々の遺族への弔慰として山分けする方針で宜しいでしょうか?」

そう聞かれて、俺は黙って首を縦に振る他になかった。すると、また女性は飛び切りの笑顔で、

「ありがとうございます!」

と笑顔でお礼を言ってきた。俺の頬がまた赤くなってしまう。

 それから、俺たちは元の場所へ歩いていった。

「それにしても、凄いですね。まさか、神雷を落とすことが出来るなんて。巫術使いという職業があるのですが、そちらの方が向いている気がしますが?」

俺は褒められた気がして、照れながら

「いや、このまま冒険者として生きますよ。」

と言い、5万コルドを受け取るなり、そそくさと元の場所へ走っていった。

 この町で5万コルドを持っていると言うのはちょっとした小金持ちらしい。俺はそれだけで満足していた。強い欲望を持たないというのはとても大事な事である。

 と、まあ。こうして、5万コルドを手に入れた俺は結局、夜まで宴を楽しんでしまった。俺はテンションが上がったまま、ギルドを後にする。宴で飲みまくった「わたぐも」のおかげで賞金の内、約1万が星となり、少し調子に乗り過ぎたな...。

 俺はそう反省をしながらギルドの横にあった宿屋にチェックインした。どうやら、最後の一部屋だったらしく俺は間に合って良かった、と胸を撫で下ろした。それから、取り合えず一日分の宿泊金を鍵を受け取った僕は伝えらた107号室へと向かった。

 その途中、俺はある男と擦れ違った。特に、変わった様子も無い、平凡な感じの男だったのだが、俺は妙なプレッシャーを彼に感じた。俺はその男の後ろ姿を見ながらも、107号室の鍵を開けた。

 その日の夜、俺はあの男が気になって気になって、落ち着いて眠ることが出来なかった。一応言っておくが、変な意味は毛の先程も無い。

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