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#25 あの神話上の野蛮人と出会ってしまった件

 それから町に戻ってきた俺は、ギルドの扉を開け、迷わず奥のカウンターへと出向いていった。

 そこで、俺はスキルについて教えて貰った。これは復習だが、スキルを覚えるにはポイントがあることが前提で、必要なポイントとスキルを交換するシステムである。

 俺のような「冒険者」の他に「剣士」や「魔法使い」など、この世界には多くの職業が存在しており、その職業ごとに向き不向きのジャンルが有り、向いているジャンルのスキルに必要なポイントは普通より少なく、向いていないジャンルのスキルに必要なポイントは普通より多い。そのため、隅から隅まで完璧な職業は存在しない。

 俺の職業「冒険者」も同じで、どんなジャンルのスキルも習得出来る万能職だが、全てのスキルを対象に普通より多くのポイントが必要である。

 さらに、「冒険者」はポイント交換の前に、予めスキルをカードに登録しておく必要があるらしい。これは、他の職業が不向きのスキルを覚える時も同じらしい。登録方法には2つあって、人から教わる方法は特定のスキルを登録出来、特定の本を読む方法は一度に多くのスキルを登録出来るらしい。その代わり、そのような本がある場所は限られており、わざわざそこへ出向く必要があるのだ。

 それと、一度に登録出来る数にも限りがあって最大5つである。登録すればそのスキルの欄の左から右へ指をスライドさせることで習得できるらしい。

 「では...」

カウンターの人が次のことを説明しようとしたその時であった。ウーーー!ウーーー!と、低く暗く恐ろしく、それでいて妙な緊迫感のあるサイレンが俺の背筋を震え上がらせる。このような音には聞き覚えがある。空襲警報。Jアラート。そんな単語が自分でも恐ろしいぐらいに、スラスラと脳裏を過る。俺は、この音をあの緊急地震速報様よりも恐れた物だ。

 見ると、カウンターの人はまるで別人のように血相を変えている。彼女は町のスピーカーに繋がるマイクをカウンターの上へ取り出し、

「緊急クエスト、緊急クエスト!魔王軍の進軍を確認!冒険者の方々は任意で速やかに門の前へ!その他の方々はギルドに避難してください!」

と告げた。魔王軍!思っていたより早かったな...。

 さて、俺も協力したい所なのだが、5ポイントがあるだけでスキルはまったく無い。いくらポイントを獲得していても、使わないのであれば、宝の持ち腐れだ。それに、スキル無しで戦うなど、自殺行為に等しい。そのため、俺はギルドの中で、とうしようかどうしようか、と右往左往していた。

 「あの、この緊急時ですし、私が1つスキルをお教えいたします。」

そんな俺にカウンターの人はそう言ってくれた。俺は躊躇うはずもなく、頷いた。彼女はカウンターから出てきて、俺の横に並んだ。

 プニッ。柔らかく弾力のある感触が皮膚から感覚神経へ、感覚神経から脊髄へ、脊髄から脳へ伝わり、そらが彼女の胸であることに気付く。なななななな...何ということでしょう!あんなに不幸だった少年の腕がふくよかで温かみのある胸に包まれてるでははありませんか!そう、彼は匠の手により幸を得たのです!あぁっ!3.141592653589...!俺はテンパり過ぎて、何故か心の中で「劇的!ビフォー○フター」のあのフレーズを言い、円周率の暗唱を初めていた。

 そのテンパりのせいで内容がほとんど入ってこないが、取り合えず俺は彼女の言う通りにした。

「これで、スキルを登録は終わりです。左側に表示されているのがスキル名、そして、右側が必要なポイントです。現在、登録されている中で、習得できるのは、3Pの『スマッシュ』か5Pの『フロントキック』ですが、どちらにしますか?」

巨乳の美女は運動音痴だと誰かは言った。でも、ギャップ、つまり意外性と言う物も必要なのではないか?俺はそう思う。穏便そうに見えて、実は格闘術に優れているみたいな?俺は、そんな前の世界では無さそうなギャップに新鮮さを感じながら、「スマッシュ」の欄を指で横へスライドした。

 すると、俺の全身を今まで味わったことのない感覚が走っていった。頭の中に新しい情報が追加されるような、いや頭の中へ直接、新しい情報が飛び込んでくるの方が近いか?とにかく、そんな不思議な感覚が体中に走り、遺伝子までもを組み替えらたようなそんな感覚を覚えたのだ。

 そして、俺は「スマッシュ」を習得していた。ポイントは5Pから2Pに変わっていた。3Pの「スマッシュ」を確実に覚えたと言って良いだろう。

「ありがどうございます!」

俺はそうお礼をして、ギルドの扉を開け、急いで町の門に向かった。


 それから、約10分程歩いた。そこには人集りが出来ていて、辺りはどよめきに包まれていた。俺は、

「すみません!すみません!すみません!」

と言いながら、人集りを掻き分け掻き分け進んで行った。

 その先で見た光景に俺は言葉を失う。驚きのあまり、体は強張って動かない。まさかと思って目を擦ってからもう一度見てみる。しかし、その光景が変化することは無い。やはり、見間違いは無いようだ。

 何とそこにいたのは、巨体の怪物を率いたケンタウロス。ギリシャ神話に登場するあの野蛮なお方。人の顔と馬の体を併せ持つ、半人半馬のケンタウロスだったのである。

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