#22 やはり人間になっても不幸だった件
悠人は激怒した。必ず、奇異重症の神を除かねばならぬと決意した。悠人には神代がわからぬ。悠人は不幸な人間である。糞を踏み、不遇と遊んで(比喩的な意味で)暮らしてきた。けれども、果報に対しては人一倍に敏感であった。
しかし、そんな幸せが訪れることはあるわけが無く、現に俺はペルセウスの丸投げに合い、町の案内板(知らない言葉の筈なのに何故か読めた)だけを頼りに、ギルド酒場を目指して、あちらこちらに走り回っているのである。
ベチョッ!案内板を見ていると、首の後ろ。鰻重の辺りにヌッチョリとした物が落ちてきた。
「ん?」
俺はふと上を見る。すると、カー!といかにも無関心そうに電柱の上のカラスが鳴いた。言うに及ばず、今、鰻重に当たっているのは、あのカラスの糞。
「不幸だ...。」
てか、今さっきまで、あいつになってたの?
「不幸だぁぁぁぁぁ!」
やがて、俺は蜂に終われる。ブーン!ブーン!ブーン!と奴等の羽音が大合奏を繰り広げる。耳を押さえながら、俺は全力で走り続けた。
そして、何とか俺はギルドなる建物に辿り着くことが出来た。それがあったのは町のほぼド真ん中。何でカラスの時に確認しなかったのかと後悔しながらも、俺は数々の不幸により、手は軽く腫れ、頭には鈍痛が走り、足には擦り傷がびっしり。
「不幸だ...。」
俺はそう悲観しながら、ギルドのドアを開けた。
まず見えてきたのは、沢山の机に座る、片手にジョッキの荒くれ者。中には、コップは両手で持ち、ジュースを啜っている中学生ぐらいの背丈をした子供たちもいる。とは言っても、思っていたよりは明るい雰囲気が漂っている。俺はそんなありきたり過ぎる情景に目を奪われていた。
「いらっしゃいませ!お食事なら空いている席にご自由にお座りくださーい!お仕事関連であれば奥のカウンターにてお申付けくださーい!」
沢山のジョッキを持った、ウェイトレス服の女性がそう言った。急いで、去っていく彼女に、俺は一応、
「ありがとうございます。」
とお礼を言い、早速、ギルド登録が出来ると言う奥のカウンターにまで行ってみた。途中で、いかにも荒くれ者の男に絡まれたが。
「本日はどういったご用件でしょうか?」
ブロンドの混じった茶髪。前はロングヘアで、後ろはゴム紐で1つに纏めている。いわゆる、ポニーテール。顎は三角型で顔は適度な大きさ。さらに、服装は大胆な襟ぐりの広い上着に...って!俺の頬が火照るのを感じた。
「どうかしましたか?」
その人は首を傾げる。それだけで、胸がお揺れになられた。そう、彼女は見るからに巨乳持ちで、さらにこんな大胆な服を着ているのだ。こ、攻撃力半端ないっ!目が、目がぁっー!
「いいえ!何でもありません!」
俺は慌ててそう言った。
「で、本日はどのようなご用件でいらしたのですか?」
その人は聞いてきた。
「ギルド登録をしようかと...。」
俺は答えた。
「では、登録手数料として10コルド頂戴できますか?」
彼女はさらに聞く。
登録手数料!?タダじゃないの?てか、「コルド」って何っ?お金の単位かな?俺は慌ててポケットを漁り始めた。確か、この中にお金が...!
「あった!」
って、前の世界の通貨がこの世界で通用するわけないじゃん!俺のバカッ!と、思ったのだがポケットから出てきたのは、「10」と真ん中に掘られた見知らぬ銀色の硬貨であった。とりあえずあっちの硬貨では無いので俺は出してみた。
「こ、これでいいんですかね?」
念のため聞いておく。すると、彼女は笑顔で言った。
「はい!10コルド丁度お預かり致します!では、そちらの水晶にお触れくださーい!」
俺はその指示通り横にあった半透明の水晶に触れた。と、その瞬間、水晶は青白い光を放った。それから、下の金色の箱から薄茶色いカードが出て来た。そこには、名前や俺のレベル、ステータスなどが印刷されていた。
新嶋悠人-Lv.1(残り25経験値)
RANK《F》
《ステータス》
体力/130
生命力/130
魔力/60
筋力/100
知力/140
素早さ/90
器用さ/100
幸運/1
状態異常/なし
「人間になっても結局、幸運指数は1かよ。不幸だ...。」
その瞬間、俺は確信した。いや、もっと前からそんな確信があったのかもしれない。まあ、どっちにしろ同じなのだが、自らのふ不幸に抗うなど不可能なのだと確信したのだ。
「拝見させて頂いても宜しいですか?」
さっきの人にそう言われ、俺は抜け人状態のまま、彼女に見せた。その驚きようと言ったらもう、言葉で表せない程であった。
つまり、あれですか?俺は主人公の友人ポジですか?幸運以外は平均的らしいが、幸運1はそんな物でカバー出来る程、この世界甘くないんだよな。あっ、なるほど。俺が不幸なのは主人公の友人ポジになる運命だったからだな。
俺はメタい方の理解方法を選んだ。
「て言うか、主人公補整なるものがあっても良いんじゃ?」
同時に俺の口からそんな疑問が漏れていた。




