#201 フィアマン戦で横矢掛りが行われた件
フィアマンの合図とともに襲いかかる十数のキマイラ。
「マルチファイア!」
俺はその内1体に炎の散弾を放つも怯むことすらなく、牙を剥く。俺は早めに飛びすさって第一撃をかわし、続く第二撃は剣を口にあてがい、至近距離からの「フロントキック」で吹っ飛ばす。そこへ「マジッククリエイション」で巨大な剣を突き刺し、心臓を潰してやった。
向こうではレスターが奴らを次々斬り、その横でルチアは「プロテクト」で弾いて、ルナが殴る蹴る。アリシアも魔法を撃ちまくって奴らを沈めていた。
その一方、あちらの雅はキマイラとフィアマンの挟み撃ちに合っていった。加勢に参じたいが、次に来るキマイラがそれを許さなかった。
「くっ...!」
俺は歯軋りをして、後ろへ。
「俺が行く!」
そこでレスターが叫んだ。彼は剣を両手で持ち変え、切っ先を外に向ける。
「『スクリュー』っ!」
と叫んで地面を蹴ると、彼自身が回転刃となって周りのキマイラを引き剥がす。やがて、その体は砂を巻き上げながら浮き上がり、宙に刹那停止する。その内に剣を雅を襲うキマイラに投げ飛ばした。回転を孕んだ剣は瞬時に奴を真っ二つ、切っ先は勢いよく砂に突き刺さった。
「『ブースト』っ!」
さらに今度はレスター、剣を交えるフィアマンへと突っ込み、その手を奴の頭へ、
「『フォースストライク』っ!」
その手が触れた瞬間、奴はざっと20mぐらい吹っ飛んだ。
そこへほぼ同時に雅とレスターが両側から剣を振り上げる。
「(入った!)」
俺は確信し、目の前のキマイラへ剣を振る。が、その剣が奴の腹を裂く前に俺が押し倒されてしまった。腕に爪が突き刺さり、かなり痛い。かと言って、まず確実に重力という面で勝っているそいつを俺1人で振りほどけるというわけでもない。
「『マルチファイアボム』っ!」
奴に噛みちぎられる前に抜け出せたのはアリシアの助けがあったからであった。炸裂した十数の爆発は一瞬だけ奴を怯ませて。俺はその隙に、
「『フロントキック』っ!」
その腹を蹴り飛ばし、完全に引き剥がす。
そして、奴の頭へ飛び乗り、
「『ハードスマッシュ』っ!『ハードスマッシュ』っ!『ハードスマッシュ』っ!『ハードスマッシュ』っ!『ハードスマッシュ』っ...」
唱えて、獅子の頭を殴って殴って殴り尽くす。その画は某巨人系漫画で何でもできる巨人がいつの時代も自由を求めた巨人を脚で押さえて、腕で何度も殴ったアレと似ている。キマイラは暴れまわって俺を振りほどこうとするが、鬣を掴んで何とか持ちこたえる。
何度も返り血を浴び、その度に奴の動きは徐々に鈍くなる。横から来たキマイラには、
「『マジッククリエイション』!マルチナイフ!」
と唱えて刃を飛ばし、退ける。
その内にキマイラはついに失神する。それを見て、俺はキマイラから下り、沖を狙って、
「『ハードキック』っ!」
思いっきり腹を蹴る。すると、その体は吹っ飛び、先の海へと沈んでいった。
ふと見ると、まだ雅、レスターとフィアマンとの戦闘は続いていた。しかも、ピンピンしている。
「(まさか、さっきのは入ってなかったのかっ...!?)」
と思いつつ、後ろに気配を感じて、振り向き際に
「『シューティングスマッシュ』っ!」
唱えて、そいつを吹っ飛ばす。
それからしばらくして俺たちはキマイラを一掃。だが、その間、新たにファイアバードが召喚されて振り出しに後戻りである。
そして、雅も再びフィアマンと召喚獣の挟み撃ちである。だが、レスターもフィアマンを挟み撃ちにしていた。2人は飛び交い、剣を打ち、ファイアバードを斬る。
と、突如、ギルドの方から矢の雨が降り注ぐ。矢は次々、ファイアバードに突き刺さり、奴らを内側から消し飛ばす。
「っ...!?」
フィアマンは惑い、その内に雅、レスターは残るフィイアバードを斬りながら突っ込み、それぞれ剣を振りあげる。
まず、レスターの横凪ぎ。対して、フィアマンは剣を縦に振り下ろす。レスターは上半を左に傾け、
「らぁっ...!!!」
「ぐぅっ...!?」
剣の柄の下端で奴の手の甲を強く叩く。その一瞬、剣を握る力が少し弱まる。そこへ、雅が剣を入れ奴の剣を弾き飛ばす。
そして、2人は剣を両脇へやり、鋏のごとくフィアマンの腰を狙う。そこで、奴は掌の上から赤い宝石を取り出す。
「また、魔石っ...!?」
「フッ...。『クラッシュ』。」
間もなく石は砕かれ、そこに黒い霧が生まれる。構わず2人は斬ったが、その剣筋が奴を捉えることはなかった。
魔石。詠唱や粉砕をトリガーにその効果を発動する魔法の石である。先程、確実に入ったはずの斬撃をかわせたのもその1つの力であった。
そして、黒の霧は俺たちの後ろへ収束し、そこに再びフィアマンが現れる。
ここで今度は掌に緑の宝石を落とし、
「『クラッシュ』っ!」
と、これを砕く。すると、砕いた拳は魔力の包まれ、ルチアを狙う。
「『エクスプローシブサンダー』っ!」
アリシアは唱えて爆裂の雷を撃つ。奴はこれを拳で払い落とすと、
「『クリスタルハンマー』っ!」
「効きませんよ、そんなもの。」
言いつつルチアのメイスを弾き飛ばす。上から雅とレスターが剣で狙うがこれも見事に捌き、2人を吹き飛ばす。
「まずは神官を殺し、治癒の手段を消すとしましょう。」
フィアマンはそう言い拳を引き絞る。同時に「サモンズ」で中級召喚獣ウルフを召喚し、俺たち全員をマークした。
何の邪魔も入らなくなった拳が一直線にルチアの頭を狙う。咄嗟の「プロテクト」も一瞬で砕かれ、彼女は絶対絶命。しかし、ここでルナが身を投げ出し間に入る。
「『ディスポーズ』っ!」
と唱えて拳を止めた。だが、ルナの体は徐々に押されていく。掌も所々皮が剥がれて血が溢れ出した。
ここへ再び一本の矢が飛んでくる。鏃は魔力を纏った方の腕に突き刺さり、その部分から腐食を広げていく。
「『フリップキック』。」
奴がこれに気を取られた隙に、ルナは回転蹴りで奴の足を狙う。フィアマンはこれを飛びすさって距離を取った。同じ頃、俺たちはウルフを全て倒し終え、皆が奴と睨み合い、あちらにとっては四面楚歌の構図で再び激突する。
それでも、フィアマンは俺たちの攻撃をかわして捌き続け、を抜き未だ止まらぬ腐食の侵食を考える余裕も見せていた。
その末、奴は腕を斬り落とすことで腐食の進行を絶つこととした。火事の時、燃え広がりを抑えるため周りの建物を問答無用で打ち壊した火消しのごとし策である。思い切った様子だったが、後悔もあるようで
「これで奴の治癒魔術も確定か...。ちっ、あんなの二度と食らいたくなかったのだが...。」
と何やら御託を並べていた。
そこへ今度は火矢の雨が降り注ぐ。
「またかっ...!?」
それを見るなりフィアマンは怒りを露にし、
「『ヒュージサイクロン』っ!」
と大きく叫ぶ。すると、そこに巨大な竜巻が現れ風はまず火を吹き消し、続いて矢を遥か上空へ放り出した。
「アリシア、あの矢をあいつに全部お見舞いしてやれるな?」
その矢を見つつ、俺は問う。
「私を誰だと思ってんっのよっ!『サイコキネシス』っ!」
答えてアリシアが唱えると、念力は全ての矢に働く。その鏃は全て一瞬の内にフィアマンを狙い、
「私は天才魔術師アリシア様よっ!」
とアリシアが杖を振り下ろすとともに一斉に奴へ撃ち出された。
「『レリックストック』...。」
その時、俺たちは確かに聞いた。グリモワール初代領主ディーノの固有魔術「レリックストック」の名を。
フィアマンの頭上に巨大な盾が現れ矢を全て弾き返してしまう。
「ナイスガード。」
奴はニヤリと笑って声のした上の方へ目配せする。
見るとそこにはマントを被った何者かがいて、その奥に赤い目の輝きを俺は見た。そいつは矢の飛んできた方へ消えていく。
何者かの横矢掛り(と言ってもエミールだという確信はあるが)があり、おそらく最後の魔王軍幹部ディーノも居合わせる。
そんな中、俺たちは片腕を捨てた四天王フィアマンとの戦いを続けるのである。




