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#200 召喚術士が召喚術だけではなかった件

 「『マルチバーストオーブ』」

フィアマンが唱えると、奴の頭上に青白く輝く球が大量に打ち上がった。間も無くその球1つ1つがそれぞれ10個程に分かれて拡散。全て放物線を描いて、面制圧に掛かった。

 「『プロテクション』っ!」

これをルチアが防ぐ。しかし、凄まじい球の衝突を前にして、障壁にはすぐに亀裂が走る。それに先の「カテドラル・プロテクション」で魔力を多く消費したのか、動きが鈍くなっているように見える。それでも障壁が砕け散る前に初手の攻撃を防ぎきる。

 瞬間、雅が魔剣を抜いて前へ飛び出す。 フィアマンが

「『マルチシャインバレット』っ!」

と光の弾を連射すれば、

「『マルチサテライトオーブ』。」

と球を漂わせて、これで弾を相殺した。あるいは、

「『マルチランスフォール』。」

「『ヘビーハンドウィンド』!」

降り注ぐ光の槍には手から竜巻起こして吹き飛ばした。

 だが、それでもフィアマンの猛襲は止まらず、次は光の散弾が放たれる。

「『ダミープロテクター』。」

雅はアリシアから教わったスキルを発動。魔剣から展開される盾で身を庇って奴へと突っ込む。やがて、目の前にまで来ると魔剣を振り下ろす。

ギィィィッッッン!

奴はここへ自身の剣を交えて、幾度も鍔迫り合いを繰り返す。

 「しかし、驚いたよ。まさか、影武者が悪魔なんかにやられるとはね。ほら、アスモデウスって悪魔だよ。」

「あの狂った悪魔ならわたくしたちで倒しましたわよ。その悪魔とあなたの影武者に殺されたことに何の関係がございますの?」

「悪魔ってのは人間の死肉を食らうことで、その人間の組成を解析、後に擬態できる力がある。」

「それであの悪魔はあなたと同じ姿をしていましたのね。そう言えば、他の悪魔と初めに戦った時もそうでしたわ。」

 言葉を交わしながら、打ち合う雅とフィアマン。

 「『エクスプローシブサンダー』っ!」

「『マルチロック』っ!」

そこへアリシアと俺が爆裂の雷と落岩で援護する。フィアマンは剣を方手持ちから両手持ちへと変え、雅の魔剣を振りほどいいて後ろに下がる。雷は「ライトニングロッド」で全て受け、落岩は右へ左へ全てかわす。さらに、

「はぁぁぁっっっ!」

と叫んで雷のエネルギーを重ねて雅へ飛ばす。

「『ブースト』っ!『プロテクション』っ!」

ここでルチアが加速して飛び出し、雅を障壁で守ってやる。


 その内にフィアマンは浜の砂を手で触れ、

「『スネークグレイン』。」

と小さく唱える。すると、俺たちの足元から砂の触手が現れる。

「下だ!かわせ!」

とのレスターの言葉のおかげで俺たちは何とか後ろへかわし、足に切り傷を負うのみで済む。どうやら、砂を操って攻撃してきたらしい。

 触手は高く上った後、その切っ先が再びこちらへ向く。

「「『ソードビーム』っ!」」

俺とレスターは飛ぶ斬撃を放ち、合わせて触手3つを裂く。ルナも、

「『シューティングスマッシュ』!」

と飛ぶ拳で触手1つを吹き飛ばした。だが、すぐに元通りとなり再び襲いかかる。

 「『アクアドーム』」

そこで、レスターは自身を中心に俺たちを厚い水の半球で包みこむ。触手とは言え、それは所詮、砂。水分は砂粒の隅から隅にまで入り込み、すぐに泥となって落ちていった。ともに水の半球が消え、見るとたった今、フィアマンがルチアへ殴りかかろうとするのを雅が魔剣で防いだ頃であった。

 金ピカに魔力節約の「マジッククリエイション」を教わってからと言うもの、戦闘時は常時発動の「マジックセンス」。だから、魔剣に触れてもフィアマンの拳に傷1つない理由はすぐに分かった。「マジックフィルム」、あるいは単に魔力を纏う古代魔術師の類いか。ともかく、拳だけに纏う魔力が集中しかなりの高密度である。

 と、突如、その魔力が不穏な動きを見せる。

 纏った魔力は魔剣と拳の接地面、その点へ一瞬で圧縮される。

「雅!今すぐそいつから離れろ!」

俺は叫ぶが、既に圧縮された魔力が放出される寸前であった。

「もう遅い...。」

「きゃぁっ!くっ...!」

フィアマンがニヤリと笑った瞬間、魔力が放出。魔剣は弾かれ、続くもう片方の拳が彼女の腹を殴って吹っ飛ばす。

 そして、次にルチアへと殴りかかった。

「『クリスタルハンマー』っ!」

彼女はメイスを振って抵抗するが、現れた魔力の鎚は簡単に砕け散る。

「『サイコキネシス』。」

さらに、その体は念力で浮き上がり身動きの取れない状態にされた。

 すぐに俺たちは飛び出し、俺、雅、レスターの順で斬撃を繰り出す、奴の華麗な剣捌きですべて受け流し、続くルナの「パワードスマッシュ」も同じく「パワードスマッシュ」をぶつけ、力でねじ伏せた。しかし、その内にレスターが「サイコキネシス」の効果範囲から無理矢理引き離して救出は達成する。


 「『サモン』、キメラ。」

一方、あちらはここに来ての真価、召喚術を行使した。砂上に数十展開した紅蓮の魔法陣。そのそれぞれから獅子の顔、山羊の胴、そして毒蛇の尾、つまりは伝説通りの複合生物が現れる。同時に、奴らの首が白く輝き、かと思えばそこに首輪が填まっていた。「隷従の首輪」である。

 奴らはグゥウォォォッッッ!!!と一斉に咆哮し、一斉にその殺意に充ちた目を向けた。

 「やはり...か。」

それを見て呟くレスター。え、やはり...?何でやはり?俺は小首を傾げたい気分だが、周りを見ても同じような人はない。この世界での知識というものが他と比べて圧倒的に欠如している俺には召喚術士と言うからには召喚術を極めた四天王であると思っていた。だから、俺は剣も魔法も使える奴を見て「やはり」ではなく「まさか」と感じたのである。

 「四天王って言われるぐらいだ。剣も魔法をその道を極めたものには及ばずとも、月並み以上には扱えてもおかしくはない。戦場で高等召喚術士らしき男が剣と魔法のみで敵軍大将、及びその近衛兵を1人で打ち破ったと聞いたが、あれは恐らくあいつだったのだろう...。」

そんな俺に答えてやるようにレスターが言う。

「ふむ、おそらくそれは私だろう。だが、あれは謂わば実験とのようなものでな...。剣と魔法のみで敵うのか、敵わぬとしてもどこまで追い詰められるのか私の実力を計りたかったのだよ。倒したと言っても、大苦戦であったのは間違いない。」

これに奴は淡々と返した。敵を目の前にして密かに自分の実力を計るのに使うとは一見、傲慢なことである。しかし、その実力はその傲慢をも成果に変えたのだ。

 「加えて、キメラみたいな上級獣まで簡単に召喚できるぐらい極められたあの召喚術だ。固有スキルを使えば死者であろうと生前のようにしてこれを扱う。これは俺と雅ちゃんがいて、やっとギリギリ勝てるか勝てないかの瀬戸際の勝負になるかもしれんぞ。」

と言うレスター。同感である。あんな全教科偏差値60以上、一教科だけ偏差値70以上的な、「高等召喚術士という世評ですが召喚術だけではありません」とでも言いたげな強者に俺たち全員でかかっても敵わないなんてことがあっても別に驚きはない。

 これで何人目かは忘れてしまったが、はたまた俺たちはとんでもないのを相手にしたようである。いや、そもそも敵勢はとんでもない奴らの巣窟なのかもしれない。

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