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#197 今度は魔剣二つの合体技をお見舞いした件

 壁に背中を貼り付けたまま、沈黙するプロテギウス。その手の大剣、魔具である守護者の大剣グレートガードソードは未だ地に突き刺さったままである。

 やったか?とか思っていると、レスターが

「その魔剣、『竜文の突剣』、『ドラゴノイドレイピア』とも呼ばれるからには、それで『突き刺す』という行為自体に何らかの特別な力を生じさせるのかもしれんな。」

と言う。なるほど、 そんな二つ名があったのか...。と、思う俺である。何せまだ謎多く感じる魔剣のことだから驚きはない。

「てか、あれはやったってことで良いのか?」

教えてくれた彼へ俺は聞く。

「ありゃ、確実に首が折れた。生きてたとして長くはない。放っておいても死ぬのは時間の問題だろう。」

「じゃぁ、俺たちも雅の回復を手伝うか...。」

魔王軍幹部にしては殺られ方があっさり過ぎるとは思ったものの、彼の言は信じるに値するし、それに早く雅の無事も確認したい。


 「ギウスよ、何を未だ黙っている?」

空気中に響き渡るような男の声。プロギウスに語りかけているようである。当然、俺たちの動きが止まる。

 「そう言えば、プロギウスはフィアマンって奴が召喚した英霊の一角だったな...。」

「そのプロテギウスに語りかけるってことは、まぁ...。」

「あぁ、恐らくこの声の主は奴の召喚者だ。」

それを聞いて言葉を交わす俺とレスター。

 「命ずる。直ちに甦り、まずはそこの2人を討ち滅ぼせ。」

「「ド、ドS!」」

続く、フィアマンらしきその男の声。俺たちは声を揃えて後ろを向く。だが、「宿命」におけるソレのように主の命には逆らえないらしい。

「承っ...た。」

これに奴は言って立ち上がる。だが、なされるがままの首に痛みが走ったがすぐ倒れる。立ち上がって倒れ、立ち上がって倒れる。それでも、彼に諦められる余地はない。

 だが、流石にそれが5度目ともなるとフィアマンも手を差し伸べる。彼の

「仕方があるまい。回復魔術を賜ろう。」

と言う言葉。これにプロギウスは

「かたじけ...ない...。」

と言い、しばらくして立ち上がった。その瞬間、大剣の投擲。俺たちは、

「『ブースト』っ!」

とそれぞれ左右へかわし、再び奴を見据える。投げられた大剣はすぐに奴の手元へ戻り第二ラウンドが始まった。


 まずは俺が「ブースト」で飛び出す。遅れて、レスターも続く。

 奴は俺が前に来ると剣を振る構えに。俺はそれを見るなり、早い目に横へいき、

「『マジッククリエイション』っ!マルチシールド!」

と螺旋階段状に盾を並べ俺はそこを登って奴の後ろを取る。振りかぶった剣は盾のみを粉砕した。だが、そのままの勢いで剣は回転して投げられる。しかも、狙いは正確。俺はすぐに「ハイジャンプ」でかわせたが少し遅れていればその餌食となっていたであろう。見ると、レスターも距離を詰められなかったようである。

 後ろに降り立った俺はただ奴の最強防護を剥ぐ方法だけを考える。最強防護を貫く突き攻撃だが貫くだけで、剥ぐことはできない。剥ぐには力が足りな過ぎる。突くだけでは足りない。どうにかして、魔剣からその力を引き出さなければならない。

 と、そこでベルゼバブと戦った時のあの心が支配されるような感覚を思い出す。あの時は偶然発動したが、もしかすれば自分で自分の心をあの感覚で支配して黒泥を喰らったあの力で、同じように最強防護も喰らえるかもしれない。

 危険だとは分かってはいたが、今はそれしかない。

 剥ぐと言ったが、実際は剥ぐのではない。ただ、喰らうだけ。喰らうにはあの力が必要だ。欲しろ、俺!あの力を!喰らえ、喰らえ、喰らえ、喰らえ、喰らえぇぇぇっっっ!

 心の叫びともに、自ら心を貪欲で支配し、

第二制御セカンダリ、解除...。」

と制御を2つ一度に解除。瞬間、心をさらなる貪欲が上書きする。俺のわざと抱いたそれなど比べものにもならない。

暴食ノ剣グラトン

無意識の内の言葉。ともに魔剣から腕を伝って上る邪悪な力。魔力ももう残り少ない。だが、いやだからこそ...。だからこその短期決戦に臨むのである。

 「『ブースト』っ!」

唱えて俺は奴の背中へ飛び込む。奴は片足を上げて地割れ攻撃のモーション。

「『ハイジャンブ』っ!」

と俺は飛び上がり、慣性を使って奴の上を通り過ぎ、前に降り立つ。奴に向けた背中をシャトルランのターンのように身を翻し、再び地面を蹴る。そこへ合わされる大剣の一振り。

「待てっ!」

とレスターは言うが、

「待ってられっかぁぁぁぁぁっっっ!『バーサクプロテイン』っっっ!」

俺は叫んでそれを拒む。だが、まともに食らっては殺される。故に、俺は狂人の肉体強化、もはや肉体改造のスキルを発動した。

 まず、右腕で剣を受けてその動きを止める。その腕を鮮血が伝い、少し遅れて強い痛みも走る。

「くっ...!はぁっ!」

だが、俺は歯を食い縛り強靭な脚力で飛び上がり、剣の下端を持ったまま放物線を描いて降り立ち。奴の腕はぐねって剣は地面に突き刺さり、俺はそのまま奴の背中を魔剣で斬った。次に、

「『マジックセンス』っ!」

と見てみれば斬った箇所だけ防護の膜が剥がれている。 賭けに勝ったのは俺たちであった。

 さらに第二撃を繰り出す俺であったが、三度目の正直。奴は地面に突き刺さる剣を手から離して、掌をこちらへ。

爆重滅波クラッシュガストっ!」

と俺は吹き飛ばす。飛ばされるも怯まず、俺は

「『ミドルスロー』っ!」

剣を回転を孕ませ飛ばしさらに膜を剥ぐ。俺が「ドラッグ」を唱えたところで、レスターは

「『スプリングプリズン』っ!」

と俺をしなる檻で包み込む。俺はそこをモ◯ストみたいに何度壁や床、天井を跳ね返り、やがて、うつ伏せになって床に収まる。そこで檻は消え、俺は再び「ブースト」で飛び出した。

 斬っては反撃をかわし、かわしては斬り、地割れの攻撃が来れば一度後ろへ、再び前へ。一方、レスターは奴の大剣と何度も鍔迫り合いを見せていた。ギィッン!だとか、ゴギギギ...!だとか、またキィィィッッッン!だとか。 連なる攻防の音を聞きながら、ここを制したのは俺たちの方であった。

 それは上る邪悪な力が右腕を完全に毒さらてしまった頃。ついに、背中の最強防護にカラドボルグのあの絶技を通す大穴があく。続く、爆重滅波クラッシュガストの吹っ飛ばしで俺は魔剣を離し、

「『アシッドボム』っ!『アシッドボム』っ!『アシッドボム』っ!『アシッドボム』っ!『アシッドボム』っ!」

と酸の爆発で奴の背中を狙い撃ち。思った通り、酸液は穴のところのみに付着した。

「レスタッーーーーー!緑の部分だぁぁぁっっっっ!」

俺は最後にそう言って背中を勢いよぬ壁にぶつけて倒れる。


 レスターをこれを聞くや否や、前へ飛び出した。そこへ奴は

滅裁大牙ジャッジメントスタブっ!」

と白の刃を合わせてくる。レスターのブレーキをかけると共に剣をバロルへ反転、後ろへ引き絞り力をためる。迫り来る白の刃。レスターは限界まで引き寄せて暗紫の刃はぶつける。ギュゴォォォッッッン!という轟音とともに残った力の全てが暴発。白の光を巻き込み爆発を起こし、これを煙幕にして怯んだ所へ一撃。しかし、既に目の前に剣があって防がれる。

「くっ...。」

爆重滅波クラッシュガストっ!」

しかも、怯んだ隙に爆風を打ち込まれレスターも向こうの壁へ打ち付けられる。

 だが、レスターは壁に両足をつけて勢いを消し、再び飛び出す。

 「滅裁大牙ジャッジメントスタブっ!」

迫る白の刃を体を翻してかわし、次への構えの内に一気に距離を詰める。だが、距離を詰めきる前に再び来る。

ルグ変幻大山崩しドライヴァルトザファールっっっ!」

これを 彼は黄金の刃で振りはらい、その隙に奴へ振り下ろしたが。だが、ゴギィィィィィッッッン!やはり、奴は剣で防いでいた。間も無く続いての滅裁大牙ジャッジメントスタブ。彼は一度剣を離して横にかわし、「ドラッグ」で剣を再びその手へ。

 ギィッン!ゴギィッ!ガゴォォォッッッゥン!重なる魔剣と大剣、迸る火花。攻防凄まじく剣筋が何度も衝突する。両者同じく卓逸の剣捌き。魔術も至近距離で2人の間を交い、ただ違うのはレスターは"温存"のため絶技を出し惜しみ、プロテギウスは"洗練"のため絶技を出し惜しむという惜しみへのアプローチである。

 これを制するのはやはりレスター。大剣が上に払われ、奴が振り下ろした頃には既に彼は股下から後ろへ回っている。

「(抜いてやったぞ...!)」

そう心で言いつつ、奴の背中を見る。そこには確かに緑の跡が一部分だけにあった。レスターはバロルへ戻し切っ先を少し背中に当てて狙いを定める。剣に力を貯めて変幻大山崩しドライヴァルトザファールの準備へ。

 だが、ここで構えに入って隙を見せたレスター嘲笑うかのような滅裁大牙ジャッジメントスタブ、その横凪ぎ。

「(嘘だろ...!?クソ...。ま、間に合わん...!)」

これを横目に身構え、絶望する彼。その刃渡りはとても逃げ切れるものではなく、しかも上手いことその場での回避も不可能なような剣筋である。かと言って、魔法で防ぐ暇もなかった。

 だが、そこで俺が水を差しに入った。

 「ドラゴンスレイド!」

某ツンツン蜜柑のブロードみたいな姿勢から繰り出されるのは竜殺しの愚槍アスカロンの投擲。空間を裂く一条の光が剣の先に激突し、何と大剣を奴の手から引き剥がしたのである。

「でかした!」

とらしくもなく称えるレスター。空間を

「な、な、ぬぁぁぁにぃぃぃっっっ!」

とらしくもなく叫ぶプロギウス。が、すぐに奴は冷静になって空間意識外からの奇襲と知る。実は奴、抜け目なく警戒をしていたがそれでも捉えられぬ唐突な奇襲であった。


 これぞまさに某ツンツン蜜柑、ただ違うのはあっちが速度と跳躍力を操ったもので、 こっちが完全に「スニーク」に依存したものであるという出現のアプローチであった。

 落ちた大剣、取れないその柄。プロギウスは引き寄せを使わんとするが、

「そっから手に持っての攻撃じゃもう...追い付けやしねぇよ。」

とこれまた某ツンツン蜜柑と同陣営、天才セッターが鉄壁を相手にしたときみたいなことを言い捨て、緑の部分へ、

変幻大山崩しドライヴァルトザファールっっっ!」

暗紫の刃はまず鎧を貫き霊の根源を続く爆発で破壊。レスターはその余波でこちらへと飛び込んできた。

 間も無く奴は地面に倒れ伏し、足先から光の粒となって消えていう。にも、かかわらず奴は大剣片手にもう片方で猛ダッシュ、からの俺への飛びかかり。こ、こいつ...!と歯を食い縛る瞬間、奴は完全に消滅する。消える間際まで主の命を執行せんとするという騎士の執念であった。


 そして、俺たちは今度こそ礼拝堂の扉を開ける。すると、そこにはラッキーな、いや、その先にアンラッキーもあるやうな、そんな空間が広がっていた。

 なんと、雅とルナのたった今、服を着る最中である。体液がどうのこうの言ってたが、裸でやることだったのか...。とか考えていると、しれっとこの場を離れようとするレスターが見える。覚悟を決めた俺自身逃げるつもりはないし、同罪の彼を逃がすつもりもない。

 「『フロストリストレイン』っ!」

俺は唱えて氷の足枷で奴の両足を取る。その不意打ちに成す術なくレスターはずっこけ、

「こ、こんにゃろぉ...。」

とこちらを睨み付ける。俺はニヤリと不適な笑みで返して、

「1人だけ良い思いしてただで買えるなんて許さねぇよ。」

レスターは歯噛みした。

 彼も仕方なく立ち上がったところで雅の一言。

「覚悟は...できていますわね...。」

俺とレスターはともに生唾をゴクリと飲む。続いて、

「おい、防いだりとかするなよ。」

「できるかよ..。」

と小声で言葉を交わし互いに見据える。

 そして、雅の右足に魔力が収束する。その足先は青白い輝きを呈し、彼女の本気を示していた。

「『メテオキック』っ!」

瞬間、俺の横にその尾を引くその輝き。俺がまずそれを食らって左回転、これに同じくレスターも続く。2人は礼拝堂へ蹴り戻されて中の地面に背中を打ち付け、ギィィィ...バタン!間もなく、扉が閉ざされた。

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