#196 俺の魔剣が奴の最強防護を貫いた件
扉を開けると、当たり前だがプロテギウスが待ち構えていた。俺たちは覚悟を決めた表情で奴を睨み付ける。
「なるほど...。結果的に仲間を傷つけてしまった自らの愚行に責任を感じ、落とし前をつけに来たか...。少しは騎士道を心得ているようだ。」
と言うプロテギウス。
「騎士道なんて大したモンじゃない。こうしてお前の前に現れたのは人として当然のこと...人道だ。」
レスターがこれに返す。
「それに、俺には魔王を倒す使命があるしな...。そのためにはまずお前を倒す必要がある。」
と俺もこれに続けるように言う。
「まぁ、それはどちらでも良い。私は主より貴様らの抹殺という命を授かった。故、私は貴様らを必ず倒す!されど、貴様らの義理堅き心に免じて皆苦しめずに殺してやろう。」
と褒めて宣戦布告のプロテギウス。だが、それは少し違う。
「まぁ...」
と言い掛けるレスター。そこから先は何となくわかる。
「まぁ、殺せたらの話だけどな!俺は1人で幹部1人倒してんだ!そう簡単にやられると思うなよ!」
俺は予想したその先とさらに完全オリジナルの言葉を付け加え、「ブースト」で飛び出した。
「悠人、こんにゃろっ!それは俺の台詞だ!」
これにすぐレスターも反応、彼も「ブースト」で飛び出した。
「私は断じて貴様らを侮ってはおらん。いかなる相手でも全力でってのが私のモットーだ!」
と奴は言いながら俺たちが飛び込むのに合わせて大剣を振る。
「『マジッククリエイション』っ!マルチランスっ!」
俺はすぐさま槍を交差させて一瞬の隙を生む。その内にレスターが奴の鎧に掌で触れ、
「『マッハストライク』っっつ!」
と叫ぶ。掌へ流れ出た魔力は全て前方へと押し出す力となり、奴の重い体を礼拝堂奥まで吹っ飛ばした。そのとばっちりを受けてそこにあった女神像が崩れ落ちる。
「おいおい、大丈夫かよ、レスター!罰当たんぞっ!」
俺は言うが、彼には聞く気など毛頭ない。開き直って、
「いや、気にするな...。必要な犠牲だ。」
とカッコつけてしまっている。これでは何を言っても無駄である。
「俺、知らねぇからなっ!」
とだけ言って、俺は奴の方へ飛び出していく。そこへ奴の方から爆風、ともに像は風に乗って飛び込んでくる。
「クソがっ...!」
俺は言って、まずはブレーキを。からの、
「『シューティングスマッシュ』っっっ!」
拳は飛んで女神像をさらに砕く。これで罰が当たるときはレスターとともに、という訳だ。
「滅裁大牙っ!」
と、そこへ白の刃。俺は「ブースト」でかわすが、そこを奴はそこを追ってくる。これを見て、すぐにレスターが
「変幻大山崩しっっっ!」
と黄金の刃を放つ。2つの刃は再び相殺され、隙が生まれる。その内に俺は「ブースト」で今度は奴の方へ。
「『マジッククリエイション』っ!マルチナイフっ!」
俺は突進に合わせて多く刃を生成、しばらく体の横を漂わせてからの一斉射出。
「爆重滅波っ!」
そこで奴は言い、こちらへ手を翳す。瞬間、先程に同じ爆風が吹き荒れた。これに捕まり刃は全て跳ね返す。俺は逆風に手で身を庇って踏ん張る。
その後ろから飛び上がるレスター。そこから奴に向けて、
「『ブースト』っっっ!」
と唱えて突進からの一閃。だが、ギィィィッッッン!とやはり弾かれる。そこへ大剣の一振り。
「くっ...!『マジックフィルム』っ...!」
と咄嗟に体を高濃度の魔力で包み、斬撃を防ぐ。だが、衝撃は貫通、骨は砕けて向こうへ吹っ飛ぶ。しかも、それと一緒にこちらへ大剣が飛んでくる。
「『ハイジャンプ』っ!」
俺は飛び上がってそこから切っ先を前に出して「ブースト」。竜騎士リザルドの見せたあの妙技の模倣である。
ギュゥゥゥゥゥッッッン!隕石のような落ちる斬撃、されど決して曲がらず軌道は直線。すると、キィィィィィッッッン!奴の鎧から今ままで聞かなかった軽い金属の音がした。
「貴様っ... !」
見ると、奴の鎧に初めて傷が言ったのが目に見える。
「っしゃっ!」
弾かれ怯みながら俺は一瞬歓喜、そこを狙って奴は手を翳す。「マジックセンス」を使わずともその手へ力が収束しているのが感じられる。何事かと思えば何と後ろから大剣が迫ってきている。俺は奴の足元へ手を翳し、
「『マルチウィンド』っ!」
と風球の連射で飛び上がり、さらに一瞬だけ足を取る。
「『フリップキック』っ!」
そこへレスター、すかさず足への回転蹴り。今度はしっかりと奴の足を取り顔を地面に付けてやる。さらに、魔剣をしまって飛び上がり、回転しながら迫る大剣の柄を掴んで逆向きの力で回転を弱め、残る力は上へ逃す。
「らぁぁぁぁぁっっっっっ!」
そこから重力と魔力を借りての突き落とし。ゴギィィィッッッ!と奴の顔を地に押し付けてやる。
「ぐっ...!爆重滅波っ!」
顔は床に沈んで、しかし両手で力を流して下に爆風を発射。彼を乗せたまま天井へ持っていく。
「クソがっ...!『フロントキック』っ!」
レスターは剣を蹴飛ばしこれをかわす。
奴は一度天井に刹那貼り付いたあと、地面に落ちて体勢を立て直す。奴の鎧が超強固であるが故の荒業である。奴は立ち上がると剣を掴み、レスターへ斬りかかる。彼は後ろ飛びでかわすが、奴が同時に床を抉る攻撃。
「ならば!『ロッキーエッジ』っ!」
レスターは咄嗟に唱えて、空中で後転して掌を地面へ。すると、その手の前から抉れる床へ岩の刃が連なってぶつかる。しかし、岩の刃だけは止まらず奴へ一直線に進んでいく。
「剣聖の壁盾。」
そこでプロテギウスは地面に剣を突き刺し、これを媒介とする巨大な盾を形成。これでレスターの「ロッキーエッジ」を防いで、さらに剣を投げて反撃。
「マジかよ...!」
レスターは歯軋りして、これを何とかかわしてこちらに戻ってきた。
「「『ブースト』っ!」」
続いて、俺たちは同時に魔剣片手に前へ。戻ってくる剣を再び「ブースト」でかわして、右から俺が
「『マルチロック』っ!」
と石を飛ばし、左からレスターが
「『マルチレイ』っ!」
と数十の光線を撃つ。これを見るなりプロギウスは俺のへ
「爆重滅波っ!」
と爆風を、レスターのは剣で受けて光線を防ぐ。
だが、怯まずに両脇から交互に、
「『ブースト』っ!」
「『ブースト』っ!」
通過際に勢いある一閃をして見せた。だが、もちろん両者鎧に傷を与えることはできなかった。じゃぁ、さっき鎧に跡を残せたのって何だったんだ?なんて思って考えてみても、突きだったからなのか、そこの魔力が少なかったからなのか、それは偶然だったのか必然だったのか、全く確証を得られないのである。
と、地面に亀裂。アリシア、ルチアにもやって見せていた爆破系の攻撃である。レスターはすぐに横へかわすが、俺は考えていたせいで少し反応が送れる。
「一か八か...!『ファミリア』っ!」
俺はすぐさま後ろへ飛び、同時にピラニアとなる。ダメージはたくさん入るが、死んではいない。俺はピラニアの言語で
「『オートマチックヘルス』っ!」
と唱えて自動回復。体力の減少と増加が競り合う中、俺は地面をクルクル回って進み、その先で解除した。
俺は立ち上がって剣を抜き、切っ先を奴の方へ。そのまま、スタートダッシュの地面を蹴る動作に入り勢いよく地面を蹴った。さらに、そこからの「ブースト」。奴は剣を振るのだが、その前に俺がその内側へ入っていた。
「(もう、懐にっ...!?)」
兜から丸くなった奴の両目が見える。俺はそのままの勢いで奴のすぐ後ろを通過。そして、飛びかかったレスターに大剣を合わせた隙に俺が再び「ブースト」からの突きで奴の右足膝裏を突き刺した。すると、奴は膝を付く。
「これは偶然じゃなかったってことでいいのかな...?明らか突きの時だけ食らってるし。」
それを見ながら俺は言う。偶然か必然かは賭けであったが、膝裏を狙ったのは"必然"であったなら確実に有効打となるからであった。騎士は体を鎧で覆って刀剣を防ぐが、あくまで戦場で動き回るというのを前提としている以上、鎧で覆えない部分がいくつかある。その内、4つは膝裏2つと肘裏2つ、つまり関節の内側に当たる部分である。ここを鎧で覆うと関節を曲げることができないため、革など柔らかいものでないとそこを覆えないのである。最強防護を貫けるのだから、革程度それごと魔剣でその内側を切り裂けたのだ。
「上出来だ!『フォースジャイロストライク』っ!」
そこでレスターは言い、奴の首を掴み、そう唱える。すると、奴の体は勢いよく右回転。だが、レスターは少し待って手を離したために、意図も簡単に奴の首は折れてしまった様子である。奴の回転しながら凄まじい速度で向こうの壁に激突し、首はただなされるがままに揺れ動いた。俺はその様に、
「ヤ、ヤベェ...。」
と白目を剥いていた。




