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#194 奴の鎧が反則級に固かった件

 死体の脇で鎧番人プロテギウスは未だ沈黙したままである。俺たちは気づかれぬよう、扉をもう少しあと少し、と何でもないみたいなノリでゆっくり開ける。

 できた隙間に俺は手だけを入れ、

「『ペルスペクト』。」

と透視魔術の発動。扉を通して俺は奴の姿を補足し、

「『マジックセンス』。『マジッククリエイション』、マルチナイフ。」

と例の技で刃を十数生成。それら刃の先を全て奴に向け、俺は一斉射出。

 魔力で推進力を得た刃は残像の尾を引き、奴に第一、第二、第三と次々激突していく。だが、奴の鎧はそのいずれも通すことはない。それどころか、ゴギギギギギィィィ...!との音のあと、その手の大剣で一刀両断、さらに翻った手を元に戻すとともにこちらに投げ飛ばしてくると言う始末である。

 「扉を閉めろ!」

剣が回転を孕んでこちらに来るのを見、レスターは言う。

「はいっ...!」

と俺は即答、即閉門。剣が壁を貫かないかと心配になったが、ジジジジジジジジジジィッ...!と音が響いただけで、杞憂に終わる。

「この扉には閉門することで作動する防護結界が施されている。誰かが手動で開けない限り、内から外へも、外から内へもこの扉は無敵の壁として攻撃を阻むのだ。それは、物理か魔法かに一切の依存をしない。」

との説明もあり、さらに安心。

 「作戦はどうします?」

そんな俺は今回、戦力として最優秀になりそうなレスターに問う。

「敵は単数、こちらは複数。作戦はなしだ、悠人。行き当たりばったりの策と連携で奴を倒す!作戦を練るよりも攻撃の頭数を増やす方が確実に奴を追い詰められるはずだ。」

だが、最優秀ながら策は脳筋の精神である。だが、裏を返せばそれは大胆不敵、何も策を思い付かない状態で無駄に時間を費やすよりはましであろう。ほら、あれだ。テストで分からない所はまず飛ばすあの技。この技で分かる所は余さず答えられるし、後々、突然頭に入り込んでくることだって十分あり得る。

 「それでいきましょう。」

故、俺はその策に乗るのである。だが、ここでレスターは怪訝な顔をして、

「なぁ...。そろそろ、その話し方を止めないか。俺はゾーナの弟であってゾーナではないし、敬語を使う必要などないであろう?何、お前のことが嫌いだからと言ってタメ語を使ってきたと兄に告げ口することはない。そもそも、俺は敬語というのは嫌いでな...。お前がリア充してることも相まって、殺してしまうかもしれん。」

と言う。全くの謎理論全くの場違いだが、この男ならやりかねない。そう思うと恐ろしくて、俺は

「あぁ、分かったよ。これからはこの話し方で行く。」

と答えて、レスターをとりあえず鎮めることとした。


 そして、扉を開けた俺たちは戦闘態勢へ移行。続く、プロデギウスの横凪ぎを俺たちがかわすと、いよいよ激戦は始動した。

 まずはレスター。彼は一気に飛び出し、プロテギウスが剣を振りかぶるともに、ブレーキを掛けながら両手で魔剣を持って振りかぶる。

「危なっ...。」

そこへ意外に早く大剣が狙ってきて俺は声を漏らすが、彼は体を反って何とすんなりかわす。そこから、滑り込みで股下に入り、すぐ振り返って横に凪ぐ。だが、鎧に弾かれる。

 今度は雅、続いて俺と飛び出し、奴の横凪ぎを

「「『ブースト』っ!」」

と左右に大きくかわし、振り返って再び、

「「『ブースト』っ!」」

ここで後ろのレスターも飛び込んで来て、あちらからはアリシアが、

「『マルチファイアバレット』っ!」

と炎の連射。だが、そのいずれも奴の鎧を破ることはなく怯んだ所へ奴の回転斬り。

「「「『ハンドウィンド』っ!」」

俺たち3人はそれぞれ奴に向けて風を放ち、その反作用で緊急回避。

 すると、続いて奴はアリシアたちへの遠距離攻撃に出た。剣を地面に叩きつけると、見えない刃が地面を抉りながら彼女らを狙う。

「『プロテクト』っ!」

とルチアは唱えてこれを防ぎ、アリシアの「テレポート」でルナがこちらに来た。奴は地面に突き刺さったままの剣を引っこ抜き、剣で狙うがもう遅い。ルナは既に奴の懐に飛び込んでいて、

「新技だよぉ、『パワードエクストルード』っ!」

と鎧に平手で触れてスキルを発動する。と、奴はあちらへ押し出され、アリシアが、

「『ストマ・タルタロス』っ!」

と唱えて現れた巨大な黒の穴に一直線。だが、奴は地面に剣を突き刺しブレーキをかけ、そこに落ちることなどはなかった。

「そう上手くはいかないのね...!」

とアリシアも言う。

 それと同時に黒の穴も消え、奴は今度は己、と立ち上がるともにて足で地面を叩く。すると、同心円上に複雑に亀裂が走り、その隙間から黄金の光が見えたかと思うと爆発した。

「「『ダミープロテクター』っ!」」

と咄嗟にアリシア、ルチアが盾を展開。爆風で少し吹っ飛ぶが、爆炎が通ることはなかった。

 次に俺たち魔剱持ち3人の攻撃。奴はアリシアらに向けて剣を振り上げ、俺は

「『マジッククリエイション』!マルチナイフボム!」

と唱えて、奴の足元に爆発性の短剣を落とす。ドドドドドォォォッッッン!そこには爆炎の壁ができ、奴は思わず後退り。

「かかりましたわね!発動、『バインドトラップ』っ!」

そこへ雅があらかじめ仕掛けておいた拘束の罠を発動し、レスターへと繋ぐ。彼は飛び上がると、

「今、我が魔剣の絶技を放つ!皆の者ぅ、最大の防御力をぉぉぉぉぉっっっうっ!」

と言って剣を振り上げる。

 「レスター...!あいつ、ここでアレを打つ気か...!」

「下がってくださいな!『シャインウォール』っ!」

俺が言えば、雅が光の壁を形成。あちらもルチアが

「『プロテクト』!」

と唱えて、障壁が形成された。

 「バロルっ!加え、変幻大山崩しドライヴァルトザファールっ!」

そして、レスターの魔剣カラドボルグの必殺技は放たれる。暗紫の刃が奴の鎧へぶつかるとともに、魔力が暴発。 ギュガァァァッッッン!との爆音とともに辺りは暗紫に包まれ、その暗紫は光の壁と障壁を避けて広がり、やがて消え失せる。地面を見れば爆破の跡、あちらこちらに欠片が飛び散り、未だ土煙が上がっている。

 だが、その中に巨大な影が1つ。間もなく、影は大剣を振って煙は払われる。そこに現れたのは無論、プロテギウスである。鎧を見るが、ヒビが入った様子はない。

ルグっ!今度はこっちだ、変幻大山崩しドライヴァルトザファールっ!」

とレスターが今度は黄金の刃を飛ばすも何と弾かれ、鎧も未だ無傷である。

 「ちっ...クソが...。」

とレスターは鬼の形相で舌打ち、地面に降り立つ。俺は

「何て固さだよ...あいつ。」

と俺は驚き呆れ、アリシアに至っては

「あの反則的な固さ、オリハルコンでもあり得ないわよ!あの一撃を二度も跳ね返すなんて、おかしすぎよ!」

と驚きのあまり、怒りの念すら見えている。

 「汝らの疑問に答えよう。」

突如、俺たちの頭に直接、言葉が響く。プロテギウスの声である。奴はそのまま、言葉通り俺たちの疑問に答えるように、こう続ける。

「そもそも、私は七珠衛皇セプト・ウォールと呼ばれる7人の精鋭の内の1人である。そして、七珠衛皇セプト・ウォールはそれぞれ鎧に埋め込まれた魔石の力を使うことができる。例えば、紅炎珠ブラストルビー持つ炎の番人エルプティオスなら炎の盾、氷零石フロストマリン持つ氷の番人グラキエスであれば氷柱の雨という風に...。そして、鎧の番人である私にはこの世のいかなるものも寄せ付けぬ神守結晶バルダーストーンが与えられた。まぁ、軽く丈夫というわけでアダマンタイトを使っているがな。」

と。

 この世界に来て色々勉強してきたから分かるのだが、「オリハルコン」はこの世で最も固い重金属で、「アダマンタイト」は十二分に固い軽金属である。だが、神守結晶バルダーストーンのお陰でその硬質性は大きく跳ね上げられた。

 「ちっきしょ...。だとしたら、ホントに反則じゃねぇか...。」

その事実に俺がそうぼやくのも必然のことであった。

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