#193 鎧番人の姿がかなりイカつい件
「『テレポート』。」
ギルドを出ると早速、アリシアは唱えて俺たたちをリヴィエラ東部へと転移する。見渡す限りの血痕、皆奴を恐れて死体も全て野放しである。
「これは酷いわね...。冒険者じゃなくとも殺されてる。確か、鎧番人プロテギウスだったかしら?ソイツ、とんだ無差別殺人者よ。」
とアリシアが言うと、レスターを首を横に振って、
「いや、無差別殺人者というよりは殺人系扇動者だろう。おそらく、奴にとって殺しは目的ではなく手段に過ぎぬ。俺ら冒険者はお人好しだから、殺戮の限りを尽くせばまんまと自分の前に現れるだろう、と言うな。」
と言う。
「どちらにしても最低な行為よ。魔王軍幹部してるだけあるわね。」
「えぇ。随分と見くびられたものですわ...!」
これを聞くもアリシアは態度を変えず、雅はさらなる怒りを覚えた。その気持ちは俺、ルナ、ルチアも全く同じ、
「他人が数人死んだところで俺はそこまで気負わん。特に、魔物を狩って生計をたてる冒険者であればな...。だが、一番腹立たしいのは、俺たち冒険者の人道が魔王軍の外道風情に侮蔑されているってことだ...。」
と冷酷なことを言うレスターでさえ、結局は行く先が同じなのである。
と、突如地に転がる死体全ての下に魔法陣。陣から死体へは魔力が流れ、彼らはまるで操られるかのように起き上がり、瞬く間に俺たちを包囲した。
「これは...まさか"死霊術"!?」
とアリシアは驚き、レスターは呆れのため息とともに、
「悪趣味な奴め...。」
と術者を咎める。"死霊術"ってのはあれか...死体を操って戦わせたりするって言う...。そう思うと、俺もレスターの意見に同じである。"死霊術"とはそれ自体が明らか死者への冒涜であり、死体を遺棄するという点ではやむを得ず攻撃した者も冒涜に巻き込む術なのだ。
「『マルチファイア』っ!」
「『エンゼルレイン』っ!」
「『マルチサンダー』っ!」
「『ソードビーム』っ!」
「『パワードスマッシュ』っ!」
「『デリートアンデッド』っ!」
と俺たちはそれぞれに唱えて、燃やし、蹴散らし、撃ち抜き、切り裂き、殴り、浄化する。"死霊術"で操られた死体はあくまでも脱け殻であり、それ自体非常に弱いのである。これをいかに補うかは術者の選択や技量次第なのだか、今回のは何も施していなかったらしい。
こうしてある程度を倒すと、今度は移動しながらの攻撃へと移行する。俺たちは斬撃や打撃、魔法攻撃で彼らを倒しながら進んで海岸へやって来た。
だが、その先に新たな死体は見当たらないのである。
「クソ...行き詰まったか...。」
と俺が悔しそうな表情を見せると、レスターが俺の肩に手を置き、
「俺に任せろ。」
と言う。何だ、と思って見るとレスターは地面に手を置き、
「『ログビジョン』。」
と詠唱。すると、彼の手元から白い波紋のようなものが広がり、何者かの足跡が光で可視化された。先には人間大の足跡と大きな足跡と2種類があり、前者の主が後者の主に追われているように見える。
どうやら、この「ログビジョン」が彼の固有スキルで半日前までに新たにできた足跡などの痕跡を可視化するらしい。効果範囲は彼を中心とした一定領域内であり、しばらくその効果は持続し、切れると追うのに再詠唱を要する。足跡であれば地面への接触、血痕であれば血の経口、魔術であれば何かしら物体への付与といったように追う痕跡によって発動のトリガーがことなるらしい。
そんな「ログビジョン」のお陰で俺たちはその主を追うことができ、近くの岩場へ行き着いた。そこには洞窟があり、2種の足跡はその奥へと続いていた。
そこを跡を追いながら進むこと数分。その先に両開きの扉が見え、そこへ足跡は続いている。
「アクア・アナクレトス礼拝堂か...。なるほど、ここであればしばらくは新たな被害を出さずに済む。考えたな...。」
これを見て1人合点のいったレスター。
「どう言うことですか?」
「この礼拝堂は太古から船旅に出る人々の祈りの場であると共に、邪悪なものを一時的に封じ込めることのできる結界でもあったのだ。おそらく、この中に奴が閉じ込められているのだろう。」
俺が丁重に問うとそう答えるレスター。
そこで、少し中を見てみれば彼の言が正しいことはすぐに理解した。そこには1つの死体と血まみれの大剣を持った鎧でガッチリ固めた何者かの姿がある。だが、奴は剣を地面に突いて動かないでいる。
「あれがプロデギウスってことでいいのかしら?」
と見ながらアリシアが言うと、これに雅は
「えぇ、おそらくは...。鎧番人とおっしゃるくらいですから。」
と答えを返す。だが、俺はこれに耳を貸すでもなく、まして賛同する訳でもなく、ただ奴のその姿に驚きを隠せないでいた。
奴の鎧は全体的にゴツゴツとゴツい感じで、肩や膝、腕側面など所々に突起が見えている。兜には上部に曲がりくねる突起の大きいのと小さいの、下部に牙みたいな大きなのが一対ずつ施され、その姿は一種の悪魔のようである。これにその手の大剣も後押しし、その鎧番人プロテギウスとやらは今までにないイカつさを感じさせていた。




