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#19 俺が魔王城まで空を飛んでいった件

 「快適、快適!」

羽を横に広げ、時々、僅かに羽ばたいて空を飛んで、楽しんでいた。同時に、数々の町を見下ろしていた。高みの見物で。

 まず、俺が転生した町。新米の集う町プロスペレ。中央には水路が走り、中世ヨーロッパのような建物が立ち並んでいる。RPGゲームで言う所の序盤の町。魔王の城から一番離れている町だ。

 続いて、見えてきたのは杖を持った人々、魔法使いがうじゃうじゃ溢れる町グリモア。図書館が多く立ち並び、杖のマークの看板が掛かる店が所々に点在している。いわゆる、「魔導都市」。そう言えば、「学園都市」ってのが舞台のアニメシリーズがあったな。上○さんやどっかの最強さんが出てくるシリーズ。俺、あのシリーズ好きだったんだよな。俺は、空を飛びながら、とてつもなくどうでも良いことを思い出していた。

 さて、次にやって来たのは、第三次産業で栄えていそうな美しい町アドリア。水の都と言っても良い。巨大な湖に囲まれた島にある町。中央には、水に囲まれた広大な教会。大理石製の家々が立ち並んでいる。見ると、白や黒の修道服を着たシスターたちがそれぞれで布教活動らしき事を行っている。そのシスターたちの間での歪み合いもちょくちょく見える。ここは、あれか?様々な宗教が混ざり合って成り立っている町なのか?「ヨーロッパの火薬庫」と呼ばれた頃のバルカン半島的な?

 そして、俺はその町の家の屋根の上で羽休めをした。美しい大理石の中には化石らしき物がちょくちょく顔が出している。俺は、

「ふぁ~...。」

と欠伸をするが、周りにはカー!としか聞こえないだろうが。

 それからしばらくして、俺はまた飛び上がる。

「さぁ、次はどの町かな~?」

そうやって首を傾げながら。

 続いては、巨大な木々が覆う町ユグドラシル。それらの木々の枝分かれの上にツリーハウスが乗っかっている。そこは、町と言うよりは、先住民族が暮らしていそうな、森の少女的な人々が住んでいそうな雑木林そのもの。俺はその町を見下ろしながら、さらに遠くへさらに遠くへ飛んでいった。

 出発から約3日間。俺は鳥の姿で、烏の姿でとある城に辿り着いた。そこは、常に黒雲が渦巻き、激しい雷雨が見舞われる城。石で出来た壁に、紫色の瓦で出来たように見える屋根。ゴロゴロゴロ!と、雷が鳴り響く中、今の俺のようなカラスたちが飛び交っている。

 邪悪な雰囲気が立ち込めるその城。その城が誰の城であるかは、火を見るより明らかであった。

 「魔王城か!」

俺は言う。どうやら、障壁のような物があったらしいが、カラスは入ることが出来るようだ。魔力の使用の権限が無いようで、スキルは全く使えなかったが。

 そして、その中から聞こえてきた会話に、思わず目を丸くする。と、同時に恐怖を覚えた。

 「プロスペレを叩いて、新米が出ぬようにするぞ。」

野太く、それでいて力強い声が聞こえた。その後、

「畏まりました、魔王様。只今、手下を手配して参ります。」

丁寧な言葉遣いをする、それでいて暗い声も聞こえる。どうやら、野太い声の主は魔王で、暗い声の主はその側近のようだ。

 「いや、そんな面倒なことはする必要はあらぬ。十二の幹部の内1人と、そいつの率いる小隊だけで十分だ。」

「ですが、新米の者共も集まれば圧倒的な力を見せ付けるかもしれません。塵も積もれば山となる。侮ってしまいますと、返り討ちに合う可能性は低からずあります。」

「ええっい!うらさいっ!お前は私の言う通りにすればよいのだ!次、同じことを言ったら分かっているな!?」

「もうしわけございませんでした。死んでも支障の小さいジャイアントゴブリンとその小隊をてはいいたします。」

「分かれば良いのだ!分かれば!お前に私の命令を拒否したり、口出ししたりする権利は無いからな?」

「承知いたしました。」

 そんな会話を最後まで聞く前に、反射的に俺は飛び立っていた。空を飛べば行きと同じ3日。馬車などを使ったとして、地形を考えれば、あの町に着くのはそれ以降。俺は、あの町について出来るだけ、早く人間に進化し、皆にこのことを伝えねばならない。

 言わずもがな、その理由はあの町を、俺が転生したあの町を守るためである。RPGゲームのテンプレの1つ、「始めの町に魔王軍が攻め込む」と言うイベントから、あの町の人々を救い出すためである。

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